新型iPad Proを3日間使って分かった、その新たな立ち位置
flick! 編集部
- 2018年11月05日
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iPadは、8年の歴史を経て新しいステップへ
わずかな日数ではあるが、みなさんより先にiPad Proをお預かりして、その実際の使用感を体験することができた。
たった3日でも、このiPad Proは本当に歴代最高のiPadであると感じられたし、同時に2010年からのiPadの8年間の歴史の中で、もっとも大きく変貌をと遂げたiPadだと思う。
NYからお届けした発表会会場からの最初のレポート(https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-475292/)で述べた通り、アップルは大きく変わろうとしている。
そして、製品群もこれから大きく変わって行くように思う。よくいえば独創的、悪く言えば独善的だった製品は、独創的なまま、ユーザーのニーズにキャッチアップした魅力を盛り込んできている。
モバイルデバイス界の盟主だからこそ、次のステップに進もうとしているのだ。
まず、昨年iPhoneは2007年に登場して以来の大変貌を遂げ昨年秋にiPhone Xとなった。そして、9月にはApple Watchが登場以来変更のなかったケースサイズを変更し、今回はiPad Proが新しい世代へと飛躍した。
そう、次々とアップル製品は次のステップに移ろうとしているのだ。
iPadとしての魅力。ポストパソコンとしての性能
まず、そのボディ形状の変更が、その進化の方向性を表している。
従来から、iPadは一貫して手に馴染む柔らかいエッジ部分をそのアイデンティティとしてきた。それが一気に角張ったスクエアな形状へと大きく変貌したのだ。
こうやって置いてみると、いかに薄くフラットになったかよくお分かりいただけると思う。
柔らかなアールを持つカタチから直線的なカタチへの変貌によるパソコン的なエッジ感の獲得は、従来のiPadの『理想的なタッチパネルデバイス』という立ち位置から一歩踏み出して、『理想的なパーソナルコンピュータ』であろうとする決意の表れだと思うのだ。
ホームボタンがなくなったことで、より『どちら向きに持ってもいいデバイス』にもなった。ただし、危惧されれていた、デスクに平置きした状態ではface IDは機能しないのではないかという問題は解決していない。少し覗き込んでやるか、iPadを起してやる必要がある。
今回のモデルの薄さは本当に驚くほどだ。 今回のiPad Proの5.9mmという数値は、iPhone XSやXS Maxの7.7mmよりはるかに薄い、極限の薄さなのだ(そして、この薄さでもUSB-Cポートを採用可能であることを示している)。
ちなみに重量は12.9インチが631g、11インチが468gと十分に軽い。ディスプレイに写るコンテンツは寸法比率を考え合わせると、全アップル製品の中で最も美しく感じるように思う。
雑誌、小説、コミックス、写真、映画……などを楽しむ上でも素晴らしいクオリティと使い勝手のデバイスだ。もはや印刷物やリビングのテレビなどをはるかに越える品質のコンテンツを楽しむことができる。それを手軽に持って歩けるのだからたまらない。
もちろん、iPadならではのさまざまなアプリの充実ぶりも、iPadを選ぶ大きな理由になる。絵を描いたり、音楽を演奏したり、学習をしたり、ゲームをしたりといったiPadならではのコンテンツの利便性を考えると、もはやこれらクリエイティブ、エデュケーション方面でタブレットを考えるならiPad一択といってもいい状態だ。
これらの用途でのアプリの充実度合いは、もはやAndroidの比ではなく、むしろライバルはSurfaceかもしれない。iPhoneやMacを使っているなら、やはりiPadが選択肢の筆頭に上がってくるだろう。
『絵や文字を書く』という感覚的な部分においても、今回のiPad Proは大きな進化を遂げている。
まずは、第2世代となったApple Pencilだ。
新しいApple Pencilはマグネットで本体横に付き、その状態で充電できるようになった。これが非常に便利だ。前のタイプは充電が面倒、キャップをなくす……などの欠点があったが、Apple Pencilの扱いに関する欠点はほぼなくなった。
もうちょっと感覚的な話をしよう。
まず、感触としてはApple Pencilは少し太く、柔らかく、軽くなった感じがする。しかし、実は数字上、長さが1cm短くなっただけで。重さも太さも変わらない。
おそらく、表面が柔らかい梨子地処理になったことで、持ち心地が変わったのではないかと思われる。
同行したイラストレーターのMAKOさんは、「従来のiPad Proでは、ガラスっぽい硬質な書き心地がイヤだったので、表面がザラザラしたフィルムを貼って、紙の感覚に近づけていた」というが、「新しいiPad Proは表面がサラサラして、そんなフィルムは不要。貼ると色が少し暗く見えるので、貼らない方がいい」と言っている。書き心地は大きく改善されているそうだ。
しかし、実はApple Pencilのメカニズムも、ガラス表面の平滑度も変わらない。人の感性とは不思議なものだ。Apple Pencilの持ち心地だけでこれほど変わるものなのだろうか? もちろん、持ち心地も理由のひとつだと思うが、よく観察するともうひとつ変化が見られる。
旧iPad Proと並べて、同じ力でApple Pencilを画面に押し当ててみると、新型の方が画面が深く沈んでいるのだ。
実は、新型iPad Proの方が表面のガラスが薄い。だからその分Apple Pencilの沈み込みが深く、それがタッチの違いに影響しているようなのだ。表面のコーティングにも変更があったので、それも原因のひとつかもしれない。
新しいiPad ProとApple Pencilの違い。ぜひ体感してみていただきたい。
ちなみに、充電の方法もペアリングの方法も変わっているので、前モデルとは互換性はなく、相互に組み合わせて使うことはできない。
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大画面の11インチ、小さくなった12.9インチ
サイズ感の違いも大きい。
11インチは画面が大きくなり、12.9インチはボディが小さくなったので、それぞれの体感的なサイズは近くなっている。単体で見ると区別がつかないほどだ。
新しいiPad Pro 12.9インチと、初期型の12.9インチを比べてみるこんな感じ。色の違いも感覚に影響するとは思うが、かなりコンパクトになったことがお分かりいただけると思う。
スクエアになった持ち心地もバッグへの収納のしやすさを向上させている。
iPad Proならではの二刀流活用術
前述のように、性能が上がり、本体がスクエアになり、スマートキーボードも刷新されて、パソコン的な使い勝手もが上がっている。
コーディングやウェブの制作など、依然としてパソコンでないとできない作業は数多く、そういった作業している人にとっては依然iPadのみで作業というわけにはいかないのは大前提だが、メールやメッセンジャー、ドキュメント類の取り扱いで仕事が関係する人にとっては、iPadのみで済む感覚はさらに増している。
私は、以前のスマートキーボードを使っているワケではないので、正確な比較はできないが、キーのしっかり感は増している気がする。もともと、スマートキーボードが好きではなかったのだが、これなら原稿を書くこともできるかもしれない。
たとえば、構想を手書きで書き、その横にテキスト原稿を打つなんていうアナログデジタルの二刀流的使い方もやってみると便利だった。複雑な原稿の時は、項目出しし、その関係性を手書きでメモったりすることが多いのだが、これならiPad内で完結する。
このデジアナ二刀流、ちょっとクセになりそうな使い心地だ。
スマートキーボードと組み合わせてパソコンライクに使うには
iPad Pro 12.9インチをスマートキーボードと組み合わせ、MacBook Pro13インチと比較するとこんな感じ。ほとんどサイズ感は変わらない。ただし、スマートキーボードも406g(実測)あるので、合計の重さは約1kgとMacBook Pro 13インチの1.37kgとさほど変わらなくなってくる。少なくとも、MacBookの920gよりは重い。
とはいえ、1台でタブレット的にもパソコン的にも使える利便性の高さはiPad Proならではのものだ。
LightningからUSB-Cへ。2度目の変革
ポートがLightningからUSB-Cになったのも、大きな変更点だ。
Lightningコネクターより、大電流が流せる、さまざまなデバイスを繋げるというのがメリット。
ディスプレイを繋いだり、キーボードを繋いだり、と利用範囲は大きく広がる。
試しに、手元にあった、PFUのREALFORCE R2を繋いでみたが、そのまま文字を打つことができた。
電源系もMacBookシリーズと共通化できる。非常時には逆にiPhoneに給電もできるという。
ただ、実際に持ち歩いてみると、USB-A-Cや、C-C、iPhone用にLightning、もちろんmicro USBも必要……と、今のところ持たなければならないケーブルは増える傾向にある。ちょっと考え直さなければならないかも。
発表会会場ではLG 5Kディスプレイと繋いで、外付けディスプレイとして使うデモをしていた。Procreateで部分を描きながら、全体像をディスプレイに投影して作業していたのだ。
しかし、LG 5Kディスプレイに繋いでみても『Thunderbolt 3接続は使えません』というメッセージが出る。TUNEWAREのALMIGHTY DOCKのHDMI接続経由でLG 4Kに繋ぐと、繋げることはできるがミラーリングのみで、別画面の出力はできなかった。
もしかしたら、今後、アプリのアップデートが提供されて実現する機能なのかもしれない。このあたりは現在調査中なので、後ほどレポートする。
USB-Cコネクターとなったことで、付属のアダプターもUSB-Cの18Wタイプとなった。iPad Pro用としては従来の12Wや10Wのタイプより大きな電力を流せるので、充電速度が早くなるはずだ。
この充電器は最新のiPhoneを高速充電することができるので、もしかしたら今後、上位モデルのiPhoneにはこれが付属するようなこともあるかも。
誰もが大満足できる、大きな飛躍
わずか3日ほど触れただけだが、持ち歩いた時のサイズ感、テキストの打ち易さ、絵の描きやすさ、複数アプリの扱いやすさ、USB-C採用による電源周り利便性、充電速度の向上、そしてすべてに通じる俊敏でスムーズな動作など、大きく進化したことが感じられる。
これまでiPadを使ってきた人なら、どんな人が買っても大満足できる領域に、新しいiPad Proは到達したといっていいだろう。
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(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2018年10月号 Vol.85』)
(村上タクタ)
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