iPadを使った博物館のクリエイティブな『新しいミカタ』

一方的なギャラリートークでいいのか?

博物館といえば『見るもの』。『ギャラリートーク』など博物館のイベントでも、博物館のスタッフが用意した話を聞くだけ……というものが多い。

展示されているものに関して、詳しい話を聞けたなら、対象への理解も深まるというものだが、話を聞くだけでは来館者は受け身にならざるを得ない。

これは、博物館全体において問題にされていることである。

そんな中、埼玉県の大宮にある鉄道博物館で、iPadとアップル純正の動画編集アプリClips(クリップス)を使った参加型イベントが行われた。

動画を撮ることで『観察者』になる

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子供たちに手渡されたのは、2018年の3月に発売された第6世代のiPad。32GB版なら3万7800円で買える廉価な9.7インチのiPadだ。

このiPadで、Clipsアプリを立ち上げて、「自分が興味深いと思う部分を動画に撮ってください」と博物館員の方が言う。「面白いところ、カッコいいところ、気になるところを撮って、撮る時になぜそう思うのかを話して下さい」とも。

最初の課題は1号機関車。日本で最初に走った鉄道で、イギリスから輸入されたもの。1872年10月に、新橋—横浜間を結んだ車両そのもので、国の重要文化財に指定されている。

子供たちは、各所に取り付けられたプレートや、現代から見るとあまりにも武骨で頑丈そうな金具類を熱心に動画に撮っていた。

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ただ、連れられて説明を聞くだけとは、明らかに熱意が違う。熱心に各部を観察し、床下を覗き込んで、なぜそういうカタチをしているのかを学芸員の人に質問したりしていた。

『動画を撮る』という行為の主体となることで、『観察者』としての立場に目覚めているのがよくわかる。

編集することで、考えをまとめる力を

続いては屋外に出て、E1系新幹線を撮影。二階建ての車内が特徴的な車両で、普段な状態維持のために内部は非公開となっているのだが、今回は特別にイベント参加者のためにオープンされ、説明や撮影後の編集もE1系新幹線の二階席で行われた。

さすがに子供たちは、見たこともない蒸気機関車より、新幹線の方ががぜんテンションが上がる(笑)

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ここでも学芸員の方がいろいろな開設をして下さる。子供たちも動画を撮るために一生懸命聞く。ただ、話をするだけとは大きな違いだ。

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その後、E1系新幹線の中で、Clipsを使った動画の作り方のレクチャー。

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画像の長さの編集の仕方、写真の入れ方、画像への特殊効果の使い方、文字の入れ方、ステッカーなどの入れ方などを聞いて、編集作業にチャレンジした。

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今どきの子供たちはYouTube動画などもたくさん見ているので、親が思うよりはるかに飲み込みが早い。それぞれ、上手にClipsアプリを使ってオリジナルムービーを作っていた。

新しい時代のクリエイティブな博物館のミカタ

最後には、この動画を見られるQRコードが配布されたし、スマホなどで動画を受け取れる親がいる場合は、直接動画を送信されたりもした。

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今回のイベントを企画した学芸員の坪内間さんは、

「これまで、我々は説明するだけで、みなさん聞いているのかどうか分かりにくい……という状況だったのが大きく変わった気がします。これまで、鉄道博物館で双方向型のイベントをやる場合も『紙とえんぴつ』が前提でしたから。今のお子さんたちは、ご家庭でもデジタルデバイスに触れているのに、博物館だけ情報量の少ない『紙とえんぴつ』では、問題なのではないかと議論になっていました」とのこと。

子供たちが積極的に情報を取り込み、自分たちの考えで編集する。しかも、モダンなデジタル機器を使って。

iPadの活用は新しい時代の博物館での学習に、大きな効果を及ぼしてくれそうだ。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2018年12月号 Vol.86』

(村上タクタ)

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