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多彩なUSB-Cケーブル問題。当面は60W越えかどうかを意識しよう

複雑なUSB-Cコネクターを使うケーブルの規格

徐々にUSB-Cケーブルが普及しつつある。これについて、またオウルテックの川本武志さんにお話を聞いてきた。

MacBook Pro、iPad Pro、新し目のAndroidスマホ……などを使ってらっしゃる方なら、すでにお使いかと思う。しかし、このコネクターについて理解して試用するのはとても難しい。

このUSB-Cというのはコネクターの形状の規格で、このコネクターで『何を伝えるか?』という点については、実にいろいろな規格が存在するからだ。

たとえば電源については、従来のUSB 3.0/3.1/3.2の規格に加えてUSB BC 1.2で7.5W、アップル製品だとLightningに対して5V×2.4=12W流せる、さらにPD規格に準拠すると、それぞれ最大で5V×3A=15W、9V×3A=27W、15V×3A=45W、20V×3A=60W、20V×5A=100Wの充電が可能になる。

データ通信ならUSB2.0で、最大480Mbps、USB 3.0で最大5Gbps、USB3.1 Gen2で10Gbpsを通すことができ、Thunderbolt 3規格なら最大40Gbpsで通信が可能。さらにディスプレイポートとして使えて、Ethernetケーブルにも変換できるけど、それぞれにそれぞれなりの規格があって、両側の機器も対応していないといけないし、ケーブルも各規格の基準を満たしていないといけない。

たとえば、MacBook Proにしてもポートは『Thunderbolt 3』で高速通信が可能! と言ってるが付属している電源ケーブルはあくまで『USB-Cケーブル』としか表記されておらず、480Mbps(USB2.0)のデータ通信しかできない(フル規格のThunderbolt 3ケーブルは非常に高価なので、これはこれで正しい)。

60Wを超える電力を通すかどうかと、eMarkerの有無

では、僕らはどうやってケーブルを区別すればいいのか?

私自身、非常に迷うところなのだが、まず絶対区別しなければならないは60Wまでしか通さないケーブルなのか? 100Wまで通るケーブルなのか? という点。

実は現状、60Wを超える80〜100Wの電源を通す必要があるケーブルはMacBook Pro 15、16インチなど高性能マシンの電源ケーブルだけだ。だから大半の人は(今のところ)ケーブルの区別をしなくてもほとんど危険なことは起こらない。

基本的に3A(つまりは60W)を超える電力を供給するケーブルの場合はeMarkerというチップの認証が必要で、機器(パソコンやスマホ)側がたとえば、20V×4A=80Wを要求し、電源アダプターがそれを供給できる場合でもケーブルにeMarkerが装備されていないと供給されない。

60W、つまり3Aまでなら流れてしまうのだけど、これはまぁ……危険は低いという判断なのでしょう。

ちなみに、eMarkerが内蔵されていると、そのチップ分コネクターが長くなることが多い。100%そうだということもないが、USB-Cの高規格なケーブルのコネクターが長いのはそれが理由のひとつとなっている。下の写真のコネクターでいえば、上がeMarker付きの写真。

ちなみに、この上のケーブルはOwltechの電力100W、データ10Gbps(USB 3.1 Gen 2)を通す優秀なケーブルだが、ちゃんとUSB Super Speedで10Gbps通すという記号が付いているので分かりやすい。

下のケーブルの反対側はLightningなので、基本的には18Wぐらいまでしか通さないはずなので、eMarkerはなくてもいい。

60Wしか通さないケーブルにeMarkerを付ける意味があるのか? 的な議論はあるが、PD対応するのにeMarkerがあった方が信頼度が上がるから、動作としてりよ安定したものになるので、意味はある。

あとは、ディスプレイや、SSD、HDDなどに付属するケーブルで、Thunderbolt 3や、USB3.1 Gen2に準拠して高速なデータ通信を行うケーブルは、かならず買って来た時に機器に付属していたものを使うようにすれば、違ったケーブルを使って速度を低下させてしまうことはない。ケーブル自体に速度や規格は記載されていないものがほとんどだから、そうするしかない。

もっとも、データ通信についてはケーブルを間違えても危険なことはない。通信速度が低下して本来の性能を発揮できないのは残念だが……。

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USB-PDのPPSと、規格に適合しておらず危険なコネクターについて

最新情報として、USB-PDのPPSという新しい規格が登場したことも知っておきたい。

PPSはProgrammable Power Supplyの逆で、従来5V、9V、15V、20Vしか存在しなかった電圧制御をなんと20mV刻みで制御できるという規格。これにより、電圧を細かく可変させながら、電流(こちらは従来から可変できる)の変化と組み合せて、効率的な充電を可能にしようという技術。
オウルテックの新型充電器、 OWL-ACPDU4S60W(USB PD 30W Type-C× 1+USB Type-A×4の充電アダプター)にこのPPSがついているが、機器側(パソコンやスマホ)側が対応しないと、この制御は使われることはないわけで、いまのところ宝の持ち腐れだが、将来的には活用できるはずだ。

あとは、ちょっと気をつけたいのが、他の規格と変換の問題……。

上に書いたみたいに、USB-C側からLightningなどより電圧的に低い規格に変換するならいいが、最近、某有名ネット通販などで、USB-Cのメス(つまり大電圧を供給できる側)から、USB-Aやmicro USBなど(大電圧に耐えられない側)に変換するコネクターが売ってる。

あれはアウト。USBの規格としては作っちゃいけないことになっているコネクターなのでご注意を。極論、使用方法によっては燃えたりする危険がある。

いろいろややこしいUSB-Cコネクターだが、とてもおおざっぱに言えば最低限
・60W以上を通すのか? 通さなくてもいいのか?
・USB-CのメスからUSB-Aやmicroに変換しない
だけ意識していれば危険はなさそうだ。もちろん、詳しい人が通信速度の性能を引き出そうとするなら、ちゃんと機器指定のケーブルを使いたいが。

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(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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