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iPhoneの時代。その時代をフリック!で追えた楽しさ

iPhoneで旅が変わった、そして我々の生活も

この記事を持って、私、村上タクタはフリック!を去る。これが、最後の記事だ。

これに先立って、留学している娘に会うためにオーストラリアに旅行した。海外に出るのは2年半ぶりになるが、旅では、最初から最後までiPhone(もしくはスマホ)が必需品で、旅というものがすっかり様変わりしたことを痛感した。

私は高校生の頃(35年ほど前のことだ!)から旅行が好きで、ブラジル、インドを皮切りに、ヨーロッパなどを旅して回ったし、枻出版社に入ってからも、アメリカにはフロリダ、サンフランシスコ、ロス、サンディエゴ、サンアントニオ、フェニックス、テキサス、ラスベガス、シカゴ、NY……など数限りなく、フランス、スイス、ドイツ、ポーランド、香港、中国、フィリピンなども取材で旅をした。

我々は原始的だった。

スマホもインターネットもなかった時代は、宿なんて行き当たりばったりだった。せいぜい国際電話かFAXで予約するぐらい。移動時も、『ポーランド全図』のような地図を見ながら、何百キロも離れた目的地を目指したりしていた。つまり、あてずっぽうだった。日本とは連絡が取れないし、わからないことは「わからない」まま。それが、iPhone以前の旅だった。

出張の夜は原稿書きからも解き放たれてゆっくり眠れたものだ。今は時差のある日本に原稿を送らねばならない。カリフォルニアなどにいると、ちょうど疲れ果てて寝ようとしているところに、稼働し始めた日本のオフィスから連絡が来る。

そして、パソコンを持って行くようになり、電話線を介してアクセスポイントに電話をかけ、インターネットに接続するようになり、それがLANケーブルになり、ワイヤレスになった。上の写真は2004年にポーランドに出掛けた時のものだ。ホテルからネットに繋げられたかどうかは覚えていない(当時安宿は部屋にモジュラージャックの電話があるとは限らなかった)。

それでも、iPhoneの登場によって起こった変化に比べれば些細なものだったといえるだろう。

iPhoneがないと、多分海外旅行は無理

今回のオーストラリア旅行では、のっけからiPhoneが必要不可欠、なければ入国さえも難しいような状態だった。

まず、日本出発72時間前以降に国内で陰性証明を受けて、それをPDFで保持する。ワクチン証明も。それを、DPDという現地のシステムにアップロードする。ETASというビザもiPhone経由だ。

飛行機のチケットもiPhoneで予約して受け取るし、空港に着いたらiPhoneでUberを呼ぶ。もちろん、宿やiPhoneに表示されるAirbnbに向かう。地下鉄のMykiカードというスマートカードもiPhoneからチャージする。レストランのオーダーもテーブルに置いてあるQRコードを読み取って、iPhoneから行い、カード決済する。つまりは、すべてがiPhone経由なのだ。

もし、壊れたり失くしたりしたら詰むので、慎重に行くなら旅には予備のiPhoneを持って行った方がいいかもしれない。そのぐらい不可欠な存在になってしまっていた。

また、旅の感触として大きく違うは迷わないということだ。昔だと、街のとあるポイントがバスを数本乗り継いで行くような場所に行くのは、その街に相当慣れないと難しかったが、iPhoneで検索しさえすれば誰でも最短ルートで初めての場所に行くことができる。

メルボルンのビクトリアマーケットからメルボルン大学へは、96番と72番のトラムを乗り継いで行けば22:21分に着く。こんなこと昔は絶対にわからなかった。

また、今回の旅行ではワイナリーや、牧場、グランビアンズ国立公園や、グレートオーシャンロードなど郊外にも出かけた。車で1,200kmぐらい走ったのだが、レンタカーにCarPlayが付いていたので、iPhoneを接続したらまったく迷うことはなかったし、音楽も聞くことができた。iPhone登場以前だとロードマップと首っ引きだったことを考えると隔世の感がある。

目の前に立ってる建築物が何なのか、以前ならわからないままだったが、今はすぐに検索して解説を読むことができる。カンガルーの走っている場所を探すこともできるし、希少なコアラがいる森を検索することもできる。おおよそ、「分からない」「知らない」ということから我々は解放されたのだ(ちなみに、下の写真の樹上には野生のコアラがいるのだが、見つけられるだろうか?)

これは何も海外旅行をする時だけはない。我々の日常生活だって、大きく変わっているのだ。

2007年1月の衝撃

もはや、iPhone登場以前のことを思い出すことも難しくなっているが、ほんの15年ほど前までは我々は、電車の乗り継ぎの詳細がどうなるかわからなかったので、早めに家を出ていた。日常のすべてを写真や動画に撮ることもなかったし、それを遠方の友人たちとシェアすることだってなかった。

電車の中では多くの人が新聞や文庫本、雑誌を読んでいたし、海外の人と通話するには高額の通話料が必要だったし、テレビ電話というソリューションは何度も出て来たものの、クオリティと利用頻度がマッチせずになんども消え去っていた。

15年と少し前。2007年1月にスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表した瞬間に本当にすべてが変わってしまった。

いや、発表した瞬間にそのことに気付いていた人はほんのわずかだったと思う。今と違って、アップルの新製品発表会は(今に比べれば)一部のアップルマニアの楽しみだった。

iPhone発表のKeynoteを見た時の興奮は今でも思い出せる。

ジョブズが「今日、ワイドスクリーンiPod、革命的携帯電話、インターネットコミュニケーターという3つの革命的な新製品を発表する」と言い、それをジョブズが繰り返すテンポが段々と速くなった。そして「もう分かっただろう、この3つはひとつの製品なんだ。我々はそれをiPhoneと呼ぶ」そうジョブズが言った時の興奮! その瞬間に僕の人生は永遠に変わってしまった……そう思えるほどだったが、今にして思えば変わってしまったのは僕の人生だけでなく、世界のあらゆる人の人生、つまり世の中が変わってしまっていたわけだ。

最初のうちは「こんな大きな電話は誰も使わない」「マルチタッチスクリーンは使いづらい」「ワンセグ、防水、おサイフケータイがないから不便」と否定する人が多かったが、いつの間にか(iPhone 4、4S、5あたりで潮目が変わったのは確かだろう)すべての人がiPhone(もしくはスマホ)を使う世の中になっていた。

その後、iPhoneはどんどん進化した。

iPhoneが世界を変化させた15年間

そういえば、ジョブズは最初『ワイドスクリーンiPod、革命的携帯電話、インターネットコミュニケーター』と言ったが、あれはiPhoneの素晴らしさを全部を言い表してはいなかった。いや、むしろ、ジョブズは違うことを考えていて、我々に分かりやすいように、あの時点に存在していたデバイスでその潜在力の一部を表現してくれたのかもしれない。

我々は電話としてはあまり使わなくなり、カメラとして使うことが多くなり、カメラで撮った写真や動画を共有することが巨大な文化となった。これは15年前には想像もしなかった未来だ。

一番大きなポイントは、人に一番近いコンピュータであり、それが世界(インターネット)に繋がっているということだろう。だから、iPhoneは無限に成長することができた。

通信速度が十分に速くなった時点で(我々は4Gと言った)、我々はデータの蓄積と処理をサーバー上に置くことを『クラウド』と言うようになった。クラウド上に置くことでそれは他のデバイスや、世界中の多くの人と共有することができるようになり、爆発的に大きなベネフィットを産み出すようになった。

周囲にあるあらゆるものに、センサーや小さなコンピュータを載せ、それをインターネットに接続した。それをIoTと言った。これにより、これまでデータ化されていなかった事情がデータ化され、iPhoneで見られるようになった。Makersムーブメントが起り、ハッカソンも盛んになった。

身体に着けるセンサーからデータを取るようになり、それはウェアラブルと言われるようになった。Apple Watchはそこからの進化したデバイスだが、通知、身体の行動・健康データの取得は、人の健康面において新たな可能性を切り開いた。

iPhoneの位置情報を使ったGPSゲームも、Ingressを皮切りに、ポケモンGO、ドラクエウォーク……などに広がっていった。
モバイルバッテリーやiPhoneケース、スキャナー、キーボード、ガジェット用バッグ……などの周辺文化も発展していった。

別のところで発見されたディープラーニング(いわゆるAIや人工知能と言われるもの)はiPhoneに大きな可能性をもたらした。写真や動画の処理、自然言語解析が加速度的に進んだのはディープラーニングの成果だ。

VR/ARも新たな可能性を産むだろう。これはまだiPhoneと完全には繋がっていないし、繋がらずに新たな世界を切り開くのかもしれないが、やはりこれもiPhoneやスマホなくしては登場し得なかったものだ。

また、どこかマニアックな場所でお会いしましょう

かように、この15年。世界はiPhone(を含むスマホ)の進化とともに変化してきた。

世界のどんな辺境に行ってもスマホを手にする人に会うことができるし、辛いことだが、ウクライナとロシアの最前線のニュースもスマホで知る。この目まぐるしい進化、変化をフリック!は取材し、記事にし、みなさんにお伝えすることができたというのはこの上な僥倖だと思う。

iPhoneの登場に驚き、iPadの登場をキッカケに2010年8月に創刊したフリック!を、私は今日をもって去る。11 年あまり楽しい旅でした。みなさんご愛読ありがとう。

ご機嫌よう。またどこかマニアックな場所でお会いしましょう。

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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