
モンスターボールが似合う、新種ポケモン?「ザゼンソウ、キミにきめた!」│ヤマノハナ手帖 #45

成清 陽
- 2025年04月15日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
岐阜の山間部にもやっと、ソメイヨシノが咲きました。なのになのに、突然の豪雨&雷が襲来。無事に春が到来したと思ったら、即散るという具合です。しかし、ついに!芽吹きの淡い色合いに包まれる、春山シーズンが始まります。もちろん、本連載も春色に。今回ご登場いただくのは、湿地を抱く春山で見られる、早春の代表選手。“ハルノヤマノハナ手帖”(長い!)、開幕します!!
春らしい……お姿ではなく。
春の花と聞いてイメージするのは、桜でしょうか、タンポポでしょうか。やっぱり春といえば七草しかり、明るく爽やか、淡いカラーがテッパンですね。さてさて、本連載も春全開でいきたいところですが……。今回の主人公・ザゼンソウさんは、暗くて、ジメっとしたところで「春~」(※低音ヴォイス)。名前が「座禅」だけに、パステルカラーとは縁遠いようで。
Data
ザゼンソウ(サトイモ科)
一般的な花期:3月~4月
主な生育場所:山地の暗く湿った林床
ジミな花の、ジミな工夫
花色で分類する植物図鑑では、だいたい巻末の「茶色・緑色」に分類されがちな、ザゼンソウ。暗い林が生育地なので、群生地ですら発見に時間がかかります。さらに、スゴイのは、お花(ミズバショウ同様に、紫色の苞の内部にある、ブツブツのついた“亀の子だわし”)のこだわり。雌花が開花したのちに雄花が出てきて花粉を出し、自分の花粉で受粉しない超工夫をしているんです。目立たないけど、ここだけヤル気満々!
隠れボディービルダーな一面も
花がついた亀の子だわしは、専門的には「肉穂花序」(にくすいかじょ)と呼ばれますが……「肉肉しいのは、花だけじゃないYo」!! 花をくるんでいる苞(正確には仏炎苞)は、ミズバショウに比べると、極厚仕様。「雪の重みには負けないゾ!」という、固すぎる決意表明が聞こえてきます。まるで、ストイックなボディービルダー!? そこまでしなくても、大丈夫な気がするんだけど⋯。
連想するなら、モンスター
さて、ジワジワくるキャラクターの、カワイイポイントもご紹介。基本的に花が先に咲くザゼンソウですが、葉が伸びてくると、羽ばたくような形状に。これ、ポケモンでいえば「モクロー」に通じるような(伝わるかな)?そして、同アニメ的に言うならば、必殺技は「発熱」ですね。春真っ先に咲き、花粉を運ぶハエを温めますので!!でも、どうやって戦うんだろう……。
進化?フォルムチェンジ?
カワイイとか言っておいてなんですが、こちらがザゼンソウの成れの果て。そう、花だけでなく苞の色素もほとんど抜けてしまい、良く言えば仙人的、悪く言えばザンネンなお姿になってしまいます。ポケモンを引きずるなら、これはメガ進化というより、「ネガフォルム」へのフォルムチェンジ。見た目から、あのザゼンソウだとは思えません~!!
親芋いかがですかー?
「ポケモンの話ばっかじゃん!」という読者のツッコミ、ごもっとも。ということで少々反省を込めまして、貴重な写真を大公開。流れの強い小川の中にうっかり生えてしまった、ザゼンソウの「根っこ」です。で、なかなか見られない親芋(?)を見ると、やっぱり芽生える「食えるのかなー?」というギモン。有毒ですが、アイヌでは食用としていたのだとか。ただし、決して一般的ではないので、“食べるなキケン”指定にて、お願いしま~す♪
さてさて、今回ご紹介してきた、ザゼンソウ。いかがでしたでしょうか? ジミっ子だけに、つい「擁護モード」で語ってしまいました(笑)。じつは亜高山帯だけでなく、標高400mほどの地点でも見ることができる、この植物。マニアならずとも一度は見たいのが、「雪を溶かして出てくるザゼンソウ」です。まだ私もお目にかかっていませんが、健気な必殺技を、今年こそ見たい!ぜひぜひ、群生地に「春~(※低音ヴォイス)」を見つけに行きましょう。
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
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