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2年ぶりに富士山が開山しました!今年の夏は、標高3,776m、日本一の山へ

夏の山の代表格である富士山は、昨年山小屋を開けることができませんでした。そのあいだ、富士山の山小屋が眠っていたわけではありません。さまざまな準備をし、満を持して、この夏富士山が開山しました。

この夏、富士山が開山しました!

富士山は毎年、夏になると開山し、秋の初めに閉山する。それが当たり前のように繰り返され、私たち登山者も登っていた。それが新型コロナウイルス感染拡大により、昨年は山小屋が休業し、富士山への扉は開かれなかった。

富士山の歴史が始まって以来、登れないということがあったのだろうか。有史以来、「富士講」という形てで、山岳信仰の場として各地から人々かが集まり登ってきた。登山かがスポーツや楽しみという存在意義を持つようになっても、日本一の標高であることや、世界を見渡しても類まれな美しい山姿が多くの人たちを惹きつけた。

山岳信仰に遥拝という形式があるように、昨年登ることができなかった富士山は、まさに眺めるしかなかった。仰いで信仰を深めるがごとく、眺めて思い描く。

閉ざされた一年は富士山にとってとどんな年だったか。山梨・静岡両県とも今後の開山を見据え、コロナ対策について会議を重ねた。山小屋はそれに準じ、支度を整えた。それだけではない。

太子館は、「オンラインツアー・富士登山」を行なった。これが大変おもしろかった。山はリアルに登ってこそと誰もかが思うが、それを承知の上で、富士山を多角的に広く深く見つめる時間を提供した。富士山に何度も登った者にも、これから登りたい者にも、山に登ったことがない者にも興味深い内容だった。山は登るだけではない、眺めること、読むこと、知ることも登山の一部なのだと実感した。

さて、「withコロナ時代の新しい富士登山マナー」が発表された。昨年、各山岳地域からwithコロナのなか、山を登るときに考えたいことが示された内容と違わない。とくに留意するべき点は、富士山が日本一飛び抜けて高く、独立峰ゆえの天候の厳しさがあることだろう。だからこそ、いっそう慎重な計画と行動が望まれる。コロナに関わりなく、富士登山で気を付けるべき点としてこれまで留意してきたことを、いっそう気に留めていこう。

富士山のあたらしいマナー

□なるべく往路をともにしている人と少人数で登山
□宿泊をともなわないご来光目的の夜間登山は行わない
□登山道の渋滞時には交互登下山に協力を
□同行者以外との物品の共有、杭やロープへの接触は避ける

山梨県・静岡県が行なっている対策

上に挙げたマナーは、「withコロナ時代の新しい富士登山マナー」からの抜粋である。これは、環境省富士箱根伊豆国立公園事務所、山梨県、静岡県で構成されている「富士山における適正利用推進協議会」が取り決めたものだ。
マナーは全部で15項目ある。上記の4項目以外の概略を説明すると次の通りだ。

発熱症状があるときは登山を行なわない。最新情報を確認し余裕のある計画を立てる。感染対策グッズの準備。同行者以外とはソーシャルディスタンスを保つ。必要に応じてマスクや手ぬぐいなどで鼻と口を覆う。呼吸を荒げないよう無理なく自分のペースで登山をする。トイレや売店使用後は手指消毒。ごみや吐物は密閉袋に入れて持ち帰り。体調不良のときは速やかに下山。

詳細な解説がウェブにあるので、「富士登山オフィシャルサイト」で読んでみよう。

2軒の山小屋ご主人にインタビュー

富士山の2大ルートである吉田口と富士宮口。それぞれの山小屋ご主人に今夏の様子を伺った。

山梨・吉田ルート8合目
【太子館】井上義景さん

1年かけて寝室を個室に切り替える工事をしました。一昨年、落石に遭って山小屋が被害を受けたため、コロナに関係なく工事が必要でした。

▲スペースごとにカーテンで仕切り。内部はグループや家族で使ってもらう

個室を作った理由は、コロナ対策もありますが、それ以前から登山者により快適な空間を提供したいという考えがありました。北アルプスの山小屋には個室があるわけですから、これも時代の流れだと思っています。同時に大部屋も残してあります。

▲寝るときに頭部と襟周りに使う使い切りの不織布は、コロナ対策で採用

山梨県の基準では、2畳にひとり、もしくは1畳にひとりでパーテーションを設置、としていますが、太子館は後者です。パーテーションは可動式にして、グループの人数に対応できるようにしています。寝袋の頭部と襟周りに不織布の使い切りのシートを使ってもらいます。

飛沫感染の対策が重要ですので、大型のファンをダクトでつないで換気をするシステムを作りました。窓を開けることと併用しています。強風や雨の吹込みなど窓を開けられない天気のときでも換気ができるのは、心強いです。

山梨県とは、去年から会議を続けていますので、吉田口の山小屋では統一した見解と対策で山開きができたと思います。7合目と8合目には救護所があり、医師や看護師もいますので、彼らとの連携もあります。

スタッフの教育も大切です。掃除や接客方法、自分自身の体調管理と業務中に感染から身を守ることなど、方針を決めて指導していきます。

標高:3,100m
TEL:0555-22-1947(9:00〜17:00)
料金:10,000円〜(1泊2食付き)
2021年の営業期間:7月9日〜9月9日
https://www.mfi.or.jp/taisikan/

静岡・富士宮ルート7合目
【富士宮表口元祖七合目】山口芳正さん

石垣に囲まれた人力で作った数少ない山小屋です。私たちの山小屋名物として、「布団干し」がありました。晴れた日には布団を干す。夏の富士山といえども布団干し日和は少なく、空気の薄い標高3,010mでの布団干しはひと仕事です。現在は、寝袋を使用していますが、寝具にこだわる思いは変わっておりません。富士山は体力のいる山、寝具はとても大切です。

▲カーテンで仕切った寝室。グループの人数に合わせて可動するようになっている

また万が一ウイルスが付着したことを考慮し、不活性化を待つため、一度使ったものは5日間あけてから使用します。寝室は、個人または家族などのクグループごとに空間を利用してもらうよう、カーテンで仕切りを作りました。

山小屋の仕様・感染対策設備、宿泊者にお願いしたいことは、富士宮口登山組合としてウェブに載せています。宿泊者のスクリーニング、宿泊者、スタッフ共々の体調管理、館内でのマスク着用、手指消毒、換気などです。富士山は風が強いので換気が難しいです。窓を開ける、換気扇を使うことに加えて、補助的役割として空気洗浄機を設置しています。

▲手指消毒液は要所に設置し、こまめに使ってもらえるようにした

また食事シーンは、とくにリスクが高まりますので注意をしています。テーブルのパーテーション、スタッフがマスク、フェイスシールド、ビニール手袋を着用するほか、カレーに蓋を着けるようにしました。配膳中やテーブルに配膳後に、万が一飛沫が飛ばないようにするためです。

定員は半分にし、完全ネット予約にしていますが、現在のところ、ご予約いただいている人数は例年の1割に達しません。旅行会社のツアーがキャンセルになったことが大きいです。

標高:3,010m
TEL:090-7022-2234(6:00〜20:00)
料金:8,000円〜(1泊2食付き)
2021年の営業期間:7月10日〜9月4日
http://fujisan-ganso.jp/

(出典/「ランドネ 2021年9月号 No.119」)

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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