安心して山の時間を楽しむために、これからの山で登山者ができること
ランドネ 編集部
- 2021年08月06日
山小屋など登山にまつわる仕事をしている方々が、日々コロナ感染対策を講じてくれているのとおなじように、withコロナの登山で、またもっと先を見渡した登山で、私たち登山者ができることを考えていきませんか。
これからの山で登山者ができること
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山に行く前
出発前の準備が肝要なことはコロナ以前と同様。日常の体調管理、情報収集、装備の準備、これらが安心な登山につながる。
日常からリスク回避を
飲食を伴う集まり、大人数や長時間の飲食、マスクなしでの会話などリスクが高まる場面を、日常から回避すること。また家族など濃厚接触者や、山に同行する仲間たちの体調変化にも注意を払うことも大切。
情報収集はしっかりと
現地の行政が発する情報には、感染や医療の状況などが含まれる。なかには登山者に向けたものもある。現地の状況を把握し場合によっては、行き先の変更や計画の延期の検討を。WEBやSNSによる山小屋からの発信も確認。
ワクチン接種はお早めに
ワクチンは感染予防にもっとも有用な手段であり、現在流行中の変異株の感染や重症化の予防も確認されている。接種時期は自治体や年齢に差があり、体調によって接種できない人もいるが、接種できる方はお早めに。
感染対策グッズを用意
山小屋がアナウンスする内容を確認しながら、基本的なものをプラスしよう。予備を含めたマスク数枚、手指消毒液、ゴミを持ち帰るためのジッパー付きビニール袋、体温計など。山小屋が常備しているものもあるが、各自が持参すれば山小屋の負担も減る。インナーシーツもしくは寝袋の持参も、ホームページなどで確認を。
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山歩き中や休憩のとき
山にやってきた開放感から、感染対策を忘れがち。伸び伸びするシーンと引き締めるとき、メリハリのある対策を意識しよう。
場面の切り替えに注意
場面が切り替わったときに、感染対策に対しての意識を切り替えることは、日常でも山でも大切。歩行中はマスクを外しても、人とすれ違うときには飛沫の行方に注意を払う。休憩時や昼食時は、飲食中以外はマスクをして会話を。休憩中は、ふと気が緩みがち。景色を楽しんだりリラックスするいっぽうで飛沫感染予防は入念に。
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山小屋で過ごす時間
体調確認、マスクの着用、検温、住所などの記入などこれらはチェックイン前にやること。館内では飛沫感染予防、手指消毒を心がけよう
テント場にもリスクあり
野外でも同様の感染リスクが存在する。テント場でもマスクをして会話を。食器は各自のものを使い、共同の総菜には取り箸を使おう。また、同居する者以外で日常生活が別の者同士は、テントを分けることが安全だ。
具合の悪いときには、早めに申し出る
コロナに関わらず、山での体調管理は重要。体調が悪いときには早めに山小屋に相談しよう。熱や咳などの症状のある人に向けた隔離スペースを用意しているところが多い。自分自身と周囲のために早めの相談を。
適切なタイミングで手指消毒
無数の人が触る場所=ハイタッチサーフェス(扉のノブ、窓の開閉部、電灯のスイッチ、手すりなど)に触れたあと、トイレや風呂など共同スペースを利用したあと、飲食の前のタイミングなどで手洗いや手指消毒を。
山小屋の案内に従う
チェックイン時の検温や書類の記入、食堂や休憩室、読書スペースの利用、寝具の利用、トイレや風呂の利用などに、山小屋はコロナ対策を講じたそれぞれのルールを設けている。HPや館内の案内をよく読もう。
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ごはんを食べるとき
食事シーンは、もっともリスクが高まるとき。山小屋の本来の楽しみでもあったけれど、山小屋全体の安全を守るためにも用心を。
マスクを外すときは高リスク
食事中はマスクを外すことになるが、このときにリスクが高まることを自覚するのが大切。「黙食」という言葉がある。パーテーションなど山小屋側の工夫もあるが、基本的にはなるべく静かに食べるよう心がけよう。
グループを越えての交流は控える
日常生活と同様であるが、感染予防の基本としてグループを越えての交流は控えよう。社会全体で、ローリスク者が占める割合はまだ高くない。グループを越えての交流は、クラスター発生のリスクにもつながる。
登山者一人ひとりができることはもっとあるはず
山小屋はできる限りのコロナ感染対策を講じて営業をしている。その舞台裏を想像したい。山小屋が提案するルールを守りながら、登山者一人ひとりができることはもっとあるはず。
飛沫がついたゴミを持ち帰る。次に使う人、山小屋のことを考えインナーシーツを持参する。これらはコロナに関わらず、各人が少しずつ実践するだけで、山小屋がぐっと楽になることだ。日ごろからローリスクを考えた行動=体調管理をし、山でも場面の切り替えを意識しながら、感染予防を心がける。それは、自分を守るだけでなく山小屋と山小屋に集うおなじ山の仲間たちを守ることであり、ひいては登山の社会全体を守ることにつながる。楽しく健やかな登山の環境を、登山者一人ひとりの手で作っていきたい。
ともに考え、教えてくれたのは
医師
稲垣泰斗さん
コロナ行政にも関わる救急医。トレイルランナー。ウィルダネス メディカル アソシエイツジャパン医療アドバイザー
(出典/「ランドネ 2021年9月号 No.119」)
- BRAND :
- ランドネ
- CREDIT :
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Text◎柏澄子
Illustration◎髙橋未来
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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