高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の 「ヤマノハナ手帖」#7 ハイマツ
ランドネ 編集部
- 2022年02月16日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
「『着』物を『さらに』たくさん着るほど寒い『月』だから『如月』。そんなクイズにナルホドとうなずける2月。皆さんはどうお過ごしでしょうか?震えながらも、ほっこりココロ温まる当連載をお待ちいただいていたのではないでしょうか?(待ってない!?)。新年第2回目となる今回は、高山植物界きってのジミっ子・ハイマツです。「ええ?マツって花咲くの?」「てか、高山植物のイメージ、なくない?」。はいはーい、どよめきますよね。そんな皆さんを、めくるめくハイマツワールドにご招待します!
ジミでマニアックなマツボックリ!
ハイマツ(マツ科)
一般的な花期:6月~7月
主な生育場所:高山の岩場
山に登る人ならば、高山に行けば行くほど見つかるジミなマツをご存じでしょう。
「いや、地味すぎて見ないでしょ!」って?まあまあ、落ち着いて。確かにあんまし映えないし、背が低くてパッとしないし、時折茂りすぎてジャマだし…。あれ?あれ?アレ~~~!?ダメですよお、そんな邪険に扱かっちゃ。実はハイマツ、トップ画像のようにちゃんと花が咲くんです。「花どこ?」って、見て見て、新芽の下にゼリービンズみたいなの、ちょこちょこついてるじゃん!
こちら、マツボックリのもと
「なーんだ、こんなんかい!もうええわ」と思ったアナタ、ちょっと待ちんさい(しがみつく筆者)。マツボックリをつけるハイマツには、なんと花が2種類あるんです!!さっきの黄色っぽい(咲き始めは紅色)のは雄花、こちらは雌花。つまるところ、コレが成長するとマツボックリになるってわけ。じつはこのマツボックリ、熟すまでに1年がかりなんだとか。「そんなん誰が見てたんや!もうええわ!」って…待ってぇ~(なおもかじりつく筆者)。
這ってでも!生きてます(涙)
ハイマツは遠目でもわかりやすくて、しかもほかに似た植物が高山にはないから、よっぽどの人じゃないと間違える心配ナッスィング(Vサイン)。一応名前の由来も、聞いてって。ハイマツは高い山にあるから“Highマツ”だと思ったら、オオマチガイ!高山の厳しい環境に適応して、ぐにゃぐにゃと這うから「這いマツ」。でも、吹き溜まりで雪をしっかり被れるところだったら風に削られないから、バスケットボールプレイヤーばりに身長2mくらいにおっきくなれる!!苦労たっぷりのそのジンセイ、目尻に涙が浮かんできそうってなもんじゃないですか。
葉っぱに隠されたプチ仕掛け!!
ちなみに葉っぱ、ちゃんと見たことある人はいないハズ。普通はよっぽど見ないし、写真も撮らない(笑)。で、よーく見てみると、葉っぱが5枚セット。そう、一般的なアカマツ(マツタケ出るやつ)のように、2枚セットじゃなくて五葉松の部類なんですわ。しかも!この葉っぱを丁寧に組み合わせれば、ジップロックのチャックみたいに見事1本、円柱型の葉っぱにまとまるって知ってましたた?さすがにくっつかんけど(笑)。これ、もとは1本だった葉っぱが、進化のときに5分割したからだとか、そうじゃないとか。「知らんわ」って…フテ寝しないでぇ~(ゆさゆさと読者を揺らす筆者)。
あのヤマドルもハイマツLOVE!
そんじゃここいらで、ライチョウさんに登場してもらいましょ!登山者にとってあんましパッとしないハイマツは、山の鳥たちに大人気!!絶好の隠れ場所だから、ライチョウさんたちにとっては隠れ家であり、子育ての場であり。ちなみにこの写真、ライチョウ母さんを引き立てるのは、右端から左端の背景を流れるように駆け下るハイマツ。そして左奥ピークは富士山、右奥は北岳。ハイマツと山々がなかったら、いまいちキマらない写真になっちゃうでしょ??
ハイマツファンクラブ会長がコチラ
で、で、さらにさらに。“ハイマツファンクラブ会長”(即席ネーミング)として知られているのが、カラダに★模様をまとったホシガラスさん!ハイマツの種を食べては(フンと一緒に)撒いているくらいだから、登山道脇で“ハイマツボックリバラバラ事件”を見かけたら、「犯人は、おまえだ!」(とある名探偵さんの名言)。きっと、高山でマツの油分は貴重な栄養なんでしょう。ほらね、こうして見ると、ハイマツって意外と人気モノでしょう?
そういえば花の話でしたね(汗)
きっとここまで伝えれば、あんさんもハイマツをちょこっと見直してくれたっしょ?え、なに?「花の話、あんまりしてないじゃん」って…。あ、それはあの、えーと。そうだ!これ見て!トウヤクリンドウの花が咲いてたシーンだけど、ハイマツの這う枝がすごくいいアクセントになってるでしょ?って、ダメ?ダメ??…ああ、帰らんといてぇぇぇ~~、、、
さて、涙なしには見られない(!?)舞台調でお送りしてきた、知られざるハイマツの魅力。いかがでしたか? とにかく地味っ子のハイマツではありますが、森林限界(これ以上の標高にはほかの木が生えられない。中部だと標高2,500mくらい)という指標の植物。脇役のように見えて野鳥類を養うなど、とっても重要な植物ではないかと思うんです。だからこそ、ちょっとでもいいから見てやって!特に花が咲いたら、雄花をつまはじくと花粉がぽふっと出て…とヘンな楽しみ方をバラしたところで、また来月(ダッシュで逃げる筆者)!!
それでは、また。皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員
成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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