つやつや、ぷりぷり。天然のナメコは風味が違う!【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2015年11月27日
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登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちの山へ。さて今回のごちそうは?
ナメコを採りにおいでよ、とブナの森が呼んでいるので行ってきました!
【福島県・布沢のナメコ】
モエギタケ科
旬:10~12月
晩秋のキノコ。雪が降り積もるころまで発生する
○教えてもらった名人
齋藤政信さん
南会津郡只見町「森林の分校ふざわ」支配人。ブナの原生林「恵みの森」ガイドも務める。
問い合わせ:森林の里応援団(TEL.0241-71-9511)
つやつやで、ぷりぷりの、キノコ王子現る
天然のナメコは、風味が違う。秋深まるころになると、ナメコのかわいい幼菌が頭のなかにぽこぽこと浮んできて、私はいても立ってもいられない。
薄い日差しで肌寒い秋の日に、福島県にある「森林の分校ふざわ」の齋藤政信さんを訪ねた。ここは、かつての学校の建物が再生されていて、宿泊や自然体験のスペースとして利用できる。2階には当時のままの幅広い廊下が残されており、休み時間にはきっと子供たちで賑わったであろう雰囲気が微笑ましい。
さて、齋藤さんに案内をお願いして吉尾街道周辺へナメコを探しに向かった。この布沢地区は、高い山はないのだが水量豊富であちこちから天然の湧水が出ている。緑のダムともいわれるブナの森が広がるこの山域は、たっぷり水分を含んでいるスポンジのようなのだ。そして、ナメコ君たちは、ブナなどの広葉樹の枯れた木が大好きでそこに発生する。この時期、紅葉は終わり落葉が進んだ森のなかは、うす曇りの今日でも明るく見通しがよい。
まずは、遠くから倒木や切り株を見つけてあたりをつける。あとは、見つけた枯木に近寄り1本ずつなめるように見る。木と木と間や裏側、落ち葉に隠れた根元の辺りは見落としやすいのでしっかり点検!
今年はキノコの発生時期が例年より早かったためか、なかなか現れず、もしや今回は収穫なしかと思われたそのとき、「あったよ~」と齋藤さんの天の声。まさにブナの倒木にびっしりとついた苔の間から、「今、食べて♡」と言わんばかりのナメコが顔を出している。あまりのかわいさにまずは写真を撮って楽しんだ。ナメコの滑りがつやつやと反射し、くるんと丸まった傘がなんとも美しい姿だ。つるんとした食感が頭を占領したころ、そっと一つずつナイフで切り採った。
多いときには同じ倒木から数キロ出ることもあるナメコだが、今回はちょうど一人ぶんくらいの収穫だった。採れないかもと思うと、少しの恵みでもうれしいもの。ブナの森からおすそ分けをいただいたような気分で、ほっこりしながら帰った。
キノコを採るときに木を傷つけないようにすると、来年もまた発生する可能性が高い
1.沢沿いの倒木が狙い目。沢底を歩きながらも名人の目は周辺の倒木にフォーカス
2.ブナの倒木に現れたナメコ。虫に食われてないきれいなものを選ぶ
3.菌糸の付いた樹皮をむしらないように、石づきの上にナイフを入れてきれいに切る
煮てよし、焼いてよし、和えてよしの万能選手。小さく切らずに食感を活かした料理がいい
1.小さな泥や葉を落とし、軽く湯通しして下準備完了。湯気で曇っていておいしそう
2.秋の味覚・柿と和えてみた。ポン酢をなじませてお酒のお供に。大根おろし和えもおすすめ
3.もちろん、ナメコ汁には三つ葉と柚子を散らしてさわやかに。二日目のナメコ汁がおいしい
○渡辺佐智(わたなべさち)
登山ガイド。自然の中で体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報をウエブサイトでも発信。
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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