山の日々の揺らぎを色に留めておくことができる草木染に挑戦【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】

登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちの山へ。さて今回のごちそうは?

秋になったら叶えたい「Wish List」のひとつを実現してきました!山で木の実をひろって、憧れのヤシャブシ染めに挑戦です。

【群馬県前橋市のヤシャブシ】
カバノキ科 落葉樹
木の実の時期:10月~冬
生息場所:気候の温かい場所を好み山地に多い。雪面に落ちている実は見つけやすい

○教えてもらった名人
伊藤史子さん
草木染作家。絞染のストールや型染でファブリックパネル作品などを制作。ガイドカンパニー「冒険小屋」で春から秋にワークショップを開催。

あなたの秋の色はどんな色ですか?

秋色に染めたマフラーを巻く。この素敵な響きに誘われて、今回は連載初の食べられない山のさち。赤や黄色の紅葉の華やかさもよいけれど、この時期、山を歩いていると茶色の多様さに魅かれる。蜂蜜を混ぜたようなつややかな赤胴色、カフェオレブラウン、腐敗しながら漆黒にのまれていく茶。山の色は一定ではなく、日々の小さな揺らぎを重ねながら、気づいたときには大きく変わっていく。その一瞬のいまを、色に留めておくことができるのが草木染だ。

山や野にある天然素材を用いる染色は昔から行われてきた方法で、有名なところでは“藍染”がある。いまは発色が安定した合成染料が一般的だが、あえて染め上がるまでわからない自然の染料で変化を味わいたい。タンニンが多く含まれ、抽出や媒染次第で灰色から黒、茶と繊細に美しく変わるというヤシャブシ染を行った。

真っ青に抜けた空の下、乾いた空気が深まる秋を告げたある日、赤城へ向かった。みなかみの冒険小屋の弘子さんと、その姉の草木染作家の史子さんと一緒だ。まずは3人で空を見上げながら歩く。ヤシャブシの実がついた木を探し、その下で落ちた実を拾う。茶色の落ち葉に埋もれた茶色の実は探しづらいが、その小さな実で染めることを考えてわくわくしながら集めた。

翌日、染色作業は一日かかった。色を出すためには時間が必要なのだ。ヤシャブシを煮出して抽出する間に、絞り(模様)を入れる。史子さんに教えてもらったいろいろな絞りのなかで、これだ、と思う方法があった。その名も“山道絞り”。布に図案の下絵を描いてから絞りを入れる。ヤシャブシの出し汁の中に浸し、80度を保ちながらゆっくりかき混ぜ染色、鉄で媒染した後、再度染液戻しを行う。待つ時間も含めて終わったのは夕方だった。

そうして、一日がかりで染め上げたマフラーを広げると、あたたかい枯葉色に小雪が積もったような山道が2本、初冬の山へ繋がっていた。

ウール100%のマフラーを染めました。染めるものによっても色が変わるのだとか。

20161124_01

1.ヤシャブシをアルカリ抽出中。撹拌する棒は、抽出に影響しないステンレス製。あっという間にエスプレッソのような色に
2.山道絞り完了。タコ糸とビニール紐を使い、2 本線の濃淡でグラデーションをつけたい。タコ糸は色素が入り淡く染まる予定

20161124_02

3.染め上がり脱水をかけて、広げる前のわくわくする瞬間。ビニール紐で縛ったところは染まっていないので白い
4.(上)弘子さん作。山道絞りをベースにビー玉絞りでアクセントがかわいい。(下)渡辺作。自分なりに満足のいく仕上がり!

「抽出」と「媒染」とは?
抽出:材料となる草木に含まれている色素を、煮出等の方法で抽出し染液をつくること。
媒染:金属塩などにより、染料が繊維に定着するのを助けること。発色が進み色落ちしにくくなる。繊維、抽出や媒染方法の組み合わせによって、発色が変わる。

○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
yamanosachiROGO
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html

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趣味の専門誌を届けてきた私たちが世界中の人に向けて、趣味の世界への入り口をつくりました。彩りに満ちた人生の新たな1ページが、ここから始まります。

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