アウトドア好きなわたしたちができるSDGs【#2 BRING】
ランドネ 編集部
- 2022年12月30日
SDGsを直訳すれば“持続可能な開発目標”。少し難しい言葉だけれど日々の生活や登山のなかで、環境のためにできるなにかがきっとあるはず。今回は、ポリエステルから作った繊維をさらに再生することで、リサイクルの循環を生み出すウエアブランド、BRINGが登場。アウトドア好きのスタッフに「わたしたちのSDGsのカタチ」を聞きました。
おじゃましたのはこちら
BRING EBISU
東京都渋谷区恵比寿西2-9-8 大澤ビル1F
営業時間:12:00~19:00 定休日:日~火曜、祝日休
https://bring.org/
お話を伺ったのは
右)宮武雅子さん
BRING EBISUの店長。「BRINGの『着なくなった洋服を再生しよう』というマインドに惹かれ、スタッフになりたいと思いました」。ヨガのインストラクターの資格をもち、趣味はスノボのアクティブ派。スノボの際の下着はBRINGのワンダーウエアを愛用!
左)山城美聡さん
BRING のプロダクトマーケティングを担当。もともと自然が大好きで、低山やコケのある山を中心にハイキング。昨年からはスノボ、今年はトレランにも挑戦!「今後は新たなレディースブランドや、セットアップのスーツなども展開予定です」。
服から服を作る、しかもすてきな服を。水平リサイクルが生む幸せな循環
――まずは、ブランド名のBRINGに込めた想いを教えてください。
山城 英語で「持ってくる」という意味ですが、多くの方に着なくなった服を持ってきてもらい、新たな服
に再生したい――。その思いを、シンプルに表現しました。
宮武 ブランドマークのミツバチは、服を回収する取り組みと蜜を集める
ハチの姿を重ね、作ったものです。
――なぜ、古着を集め、新たな服へ再生したいと考えたのですか?
山城 世界のファッション産業で、年間9200万トンのゴミが排出されてるといわれています。そのゴミ問題を危惧し、弊社の会長は綿からバイオエタノール(バイオ燃料)を作れないかと考えていました。
宮武 その流れのなかで、服から新たな服を作る〝水平リサイクル〞を実現すれば、ゴミ問題の解決によりつながると思いついたんです。
――服から服を作れたら、まさにずっと持続可能なサイクルですね。
宮武 そのために、まず服の回収システムを確立しました。全国に、月平均で回収ボックスが3500〜4000カ所に設けられており、自社他社問わず、ウエア類の回収を受け付けています。たとえばBRING EBISUなら、古着を持ってきてくれたら、この店で使える10%オフクーポンをお渡ししてるんですよ。
山城 回収した服はダメージが少なくリユースできるものと、リサイクルさせるもので分類。そのなかでポリエステル100%の繊維は北九州の自社工場へ、ウールなどそのほかの素材は協力企業へと分別します。自社工場では、化学的手法を用いてポリエステル繊維を分子レベルに分解し、不純物を取り除いて再生素材へと生まれ変わらせます。
宮武 そうして、脱色したポリエステル樹脂から新しい色の服へと、何度も再生できるんです。
――フリースなど、ペットボトル由来の素材で作ったアウトドアウエアはよく見るけど、それをさらに再生
させた服を見るのは初めてです。
山城 ポリエステルが、服として何度も循環するんです。
宮武 たとえば、ブランドの第一号商品であるTシャツのベーシックドライコットニーは、再生ポリエス
テル100%でできてます。
――コットンライクで、着心地よさそう!
山城 一般的に毛羽のないポリエステル繊維を、あえて毛羽を立たせることで、優しい風合いになるんです。さらに毛羽が抜けにくい特殊構造の糸で作っているので、海洋汚染の原因となるマイクロファイバーの流出も
軽減できるんですよ。
宮武 糸の断面がY字になっていて、その各溝に水分が吸い込まれる毛細血管現象が起きるから速乾性も高い。
肌離れがよく、着てて快適なんです。
――山でも使えますね!
宮武 はい。うちのお客さまは山好きの方が多い。自転車やサーフィン好きの方もいますね。
山城 速乾性の高いポリエステルが一番活きるフィールドは、山ですから。私たちスタッフも、登山やスノ
ボでフィールドテストを行ない、意見をフィードバックしています。
――でも、一般的な登山ウエアに比べてテクニカルな印象を抑えているので、街でも着やすそう。ロゴすら
入れていなくて、すごくシンプル。
宮武 そのあたりは、とても大切にしていて。山のウエアって高価なものが多いぶん、街でも着回したいと
思う方も多いと思います。
――スポーティな印象が強いウエアだと、街で着にくいですよね。
山城 はい。おそらく「これはサスティナブルだから」と押し付けられて製品を買いたくなる人は少ないと思うんです。デザインがすてきであればこそ、再生繊維を使ったBRINGの服を買い続けてくれると思うし、それが自然とサスティナブルな取り組みにつながるのだと思います。
宮武 私自身もカタい話は苦手で「この行動が環境を壊すから止めよう」みたいなことを声高にいうつもりはありません。友だちといい量り売りの店を教え合ったり、楽しみながら環境にいいことができたら、という感覚です。
山城 私は、買いものは投票だと捉えているんです。心に少し余裕があるときは、そのブランドがなにを考え、どこでどのように生産されたかまで思いを馳せています。それを知ると、買った服への思い入れも強く
なり、長く愛用できる気がしています。
――さっそくあのセーターとソックス、〝投票〞させてください。
山城・宮武 うれしい!ありがとうございます。
天然素材ならではのナチュラルな中間色
吸水速乾性が高く、UVカット機能をもつ再生ポリエステルの独自素材、ドライコットニーを使ったTシャツを数種類用意。写真はベーシックモデルの二倍の量の糸を使ったやや厚手の生地を、タマネギなど天然成分を活用した染料で後染めした、新しい古着、ドライコットニー ヘビーウェイトTシャツ(7,480円)。
トレラン好き御用達の下着など小物も充実
再生ポリエステルとメリノウール混紡のアンダーウエアは、混紡比率が違う2種類を用意。「4日間穿ける」の肩書きをもつほど臭わず、ムレにくい。
ソックスも再生ポリエステルとメリノウールの混紡。三角の小銭入れ、ポーチはガレージブランドのEYLとのコラボ商品。
水に流れるシャンプーや洗剤。使う量も意識して
洋服のアンチエイジングを掲げるクリーニング店、リブレヨコハマ。さまざまな舞台衣装のクリーニングを手がけてきた彼らが開発した洗剤や、撥水加工剤も店の一角で販売。ペットボトルなど容器を持参すれば、量り売りもしてもらえる。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。