高山植物のお花畑を目指して花の百名山・苗場山へ
ランドネ 編集部
- 2024年06月20日
「だれの手にも保護されることなく、夏のわずかなあいだだけ花を咲かせる高山植物。冬を越え、やっとの思いで芽を出す姿は繊細でたくましく、美しい」その姿に心を奪われ、高山植物の靴下をデザインしている田中史織さんと花の百名山を目指し、山旅へ出かけました。
繊細なのにたくましい高山植物に出合いに
この旅のきっかけは、田中史織さんが手がける「高山植物図鑑」の靴下への思いと、お気に入りの山旅プランを小誌で紹介してもらったところから。繊細で上品なものづくりをする史織さんが山で心動かされるお花を作品に落とし込み、ランドネ読者のみなさんに届けたい。そんな想いを史織さんへ伝え、旅の準備が始まった。
今回選んだのは、花の百名山である苗場山。「高山植物が豊富だと聞き、ずっと行ってみたいと思っていた山のひとつだったんです」と話す史織さん。
台風の切れ間で、どんよりとした天気。そんななかでも、足元には高山植物がたくさん咲いている。
イワイチョウ
岩場や岩礫地には生えず、湿った環境に多い。秋にはイチョウのように鮮やかな黄色に染まる。
キンコウカ
山地から高山にかけて湿原や湿った草地に生える。 葉は幅広で硬く、花は下から上へと咲きあがる。
シモツケソウ
草地や湿地に生え、群落をつくるので目立ちやすい。花は直径4~5㎜で、縁に小さな凸凹がある。
ハクサンオミナエシ
日本海側に分布し、砂礫地や切り立った岩場で見ることが多い。コキンレイカとも呼ばれる。
ハクサンボウフウ
草地に生えることが多い。高さは30~50㎝。直立した茎が上部で分枝し、白色の花を複数つける。
山の魅力を改めて見つけた瞬間
「この花はなんだろう?」「ピンクの花はシモツケソウですね」「コゴメクサ属は、黄色いドットのような模様が花びらのなかにあってかわいいんです」。
史織さんは歩いては立ち止まり、写真を撮って、をくり返す。そのようすから、花が好きだという気持ちがあふれて伝わってくる。
水場をすぎたころ、絶対に写真を撮りたいと言っていた「お花畑」の看板の前に。白やピンク、紫、黄色などさまざまな花が、あたり一帯に咲いている。「本当にお花畑だ!」「すごい!」。全員が感動で胸がいっぱいになった。「ハクサンオミナエシがこんなに咲いているの初めて見ました!」と、史織さんもうれしそう。
標高2145mまで、どうにか大きな雨に降られず歩くことができた。山頂付近の湿原は霧に包まれていたが、それもまた神秘的な世界だった。次は苗場山頂ヒュッテに一泊して湿原をゆっくり歩きたい。そんなことを考えていると、急に雲が流れ、奥の山並みが現れてきた。ふり返ると、ここまで歩いてきた稜線が続いていた。
すれ違うご夫婦に「本当にきれいだね」と声をかけられ、「みんなを魅了している高山植物の存在を、改めて大切にしたいと思わされました。自然の力で咲き誇る高山植物。自ら足を運んで、毎年会いに行きたいですね」と話す史織さん。頭のなかに浮かんだ新たなイメージは、ていねいに美しい作品へ落とし込まれていくのだろう。
ホソバコゴメグサ
ミヤマコゴメグサの変異種で、花弁の黄色い斑点が特徴。一年草なので、毎年生える場所が変わる。
ヤマハハコ
日当たりのよい山地に生え、球状の白い小さな花が複数咲く。葉裏や茎は白い毛に覆われている。
ジョウシュウオニアザミ
谷川山系や尾瀬に分布。背が低く花は下向きで大きめ。葉には鋭いトゲが生えている。
苗場山(新潟県・長野県/三国山脈)
標高:2,145m
歩行時間:和田小屋~苗場山~和田小屋/約8時間
アドバイス
車の場合、駐車場から登山口の和田小屋までは徒歩約30分。歩行時間が長いので、山歩きに慣れるまでは山頂にある苗場山頂ヒュッテに宿泊がおすすめ。
高山植物図鑑靴下デザイナー 田中史織さん
繊細で上品な靴下を手がけるソックスデザイナー。約6年間靴下メーカーで勤務したのち、2019年に「lace flower」を立ち上げる。2021年にはセカンドライン「高山植物図鑑」をスタート。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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