【いつか泊まりたい山小屋#43 北アルプス・三俣山荘】山への新しい視点を与えてくれる北ア最奥の情報発信地
ランドネ 編集部
- 2023年12月14日
「あの山小屋に泊まってみたい」。そんな憧れが、山へ向かうきっかけになることもあるはず。本連載では、立地や食事、山小屋の主人やスタッフの人柄など、その山小屋ならではの魅力にスポットを当てながら、ランドネ編集部おすすめの山小屋をご紹介。43軒目は、北アルプス黒部源流域に建つ山小屋のひとつ、三俣山荘をピックアップ。
先代から続く名物は香り高いサイフォンコーヒー
北アルプス槍ケ岳の北西に延びる西鎌尾根の先には、北アルプスの最深部である黒部源流域がある。この黒部源流域の開拓の拠点として1945年に伊藤正一さんが権利を買った山小屋が、三俣蓮華岳と鷲羽岳の鞍部に建つ三俣山荘(旧 三俣蓮華小屋)だ。現在は正一さんの長男である伊藤圭さんと妻の敦子さんが、この山小屋の経営を担っている。
先代から続く三俣山荘の名物は、湧き水を92度の高温に熱して抽出するサイフォンコーヒーだ。香り高く、豆の風味が際立つその一杯は、昔から多くの登山者を虜にしてきた。三俣山荘ではそのほか、紅茶やカルピス、チャイなどのソフトリンクや、缶ビール、地ワイン、地酒、ウイスキーなどの酒類も注文できる。お好みのドリンクを手に、北アルプスの奥地という特別なロケーションですごす至福の時間を楽しもう。
山の環境や文化を未来へつなぐための取り組み
山小屋の在り方について真摯に向き合い、それをサービスに落とし込んでいることも三俣山荘の大きな特徴だ。たとえば自然環境へのインパクトを最小限にするために、天ぷら油を活用したバイオディーゼル燃料やソーラーパネルを導入。これにより二酸化炭素を排出せず、山小屋の発電を賄っているという。そのほか好気性菌の活性化で汚水処理を行なうバイオトイレの導入、ニホンジカによる高山植物の食害を見据えたジビエ料理の提供など、周囲を取り巻く環境に対し山小屋としてできることを積極的に行なってきた。
三俣山荘の活動は山小屋内のサービスに留まらない。「一般社団法人ネオアルプス」を立ち上げて登山者がトレイル整備に参加できる仕組みを作ったり、“山と人と街”をつなぐことを目的に長野県大町市の商店街にブックカフェ「三俣山荘図書室」をオープンしたり、クラウドファンディングを行いかつて正一さんが切り拓いた登山道「伊藤新道」を70年ぶりに復活させたりと、広範囲で多岐にわたるプロジェクトをいくつも手がけているのだ。
山の環境や文化を未来へつなぐための三俣山荘のこれらの取り組みに賛同する登山者は多く、山小屋と宿泊者という関係性を超えたコミュニティが三俣山荘を中心に生まれつつある。
山小屋から目指すおすすめルート【三俣山荘~三俣蓮華岳 片道約40分】
三俣山荘の山小屋名の由来でもある三俣蓮華岳は、標高2,841mあり、山小屋から1時間以内にアクセスできる絶景ポイントだ。山頂からは三俣山荘を見下ろすことができ、鷲羽岳、水晶岳、雲ノ平、黒部五郎岳、双六岳など黒部源流域の山々を一望。さらには北アルプスの主峰である槍ケ岳を遠くに拝めるなど、見飽きることのない景色が360度広がる。
初夏、南東斜面のカール地形に咲き誇る高山植物も見どころのひとつ。シーズン中の天気の良い日を狙って、山頂からの絶景や高山植物を見に足を運んでみては。
北アルプスの最奥地、黒部源流域に佇む三俣山荘。この山小屋に一泊し山小屋が提供するサービスや発信する情報に触れることで、山や山小屋に対する解像度が上がり、登山をより深く楽しめるようになるはずだ。
三俣山荘
https://mitsumatasanso.com/
・標高:2,550m
・営業期間:7月上旬~10月中旬
・宿泊料金(税込):1泊2食12,000円~、素泊まり8,000円~、お弁当1,400円
※ガイド添乗員割、連泊割、グループ割、ユース割あり
※2024年度の宿泊料金は変更予定
・電話番号:050-8882-5833(7:00~16:00 ※三俣山荘予約受付期間のみ)
※山小屋閉鎖期間の問い合わせはメール(info@kumonodaira.net)にて対応
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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