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【いつか泊まりたい山小屋#45 鉢伏山・鉢伏山荘 冬期】北アルプスの絶景に会える穴場の山で冬に味わう非日常

「あの山小屋に泊まってみたい」。そんな憧れが、山へ向かうきっかけになることもあるはず。本連載では、立地や食事、山小屋の主人やスタッフの人柄など、その山小屋ならではの魅力にスポットを当てながら、ランドネ編集部おすすめの山小屋をご紹介。45軒目は、2022-23シーズンより冬期営業がスタートした山小屋、鉢伏山荘をピックアップ。

地元民にも愛される絶景スポット鉢伏山で唯一の山小屋

▲鉢伏山荘は、夏期のみ営業している青い屋根の本館、休憩所を兼ねる管理事務所、そして冬期に宿泊棟として使用されているコンクリート造りの2階建ての小屋からなる。(写真◎大垣柚月)

八ヶ岳中信高原国定公園内にあり、美ケ原の南西、霧ケ峰の北西に位置する鉢伏山は、八ケ岳はもちろん、北アルプスやふもとの松本平を眺める絶好の山として知られている。牛伏寺や扉温泉などの登山口から日帰りで登れるという気軽さがあり、地元民にもファンが多い。鉢伏山荘は、そんな鉢伏山に建っている唯一の山小屋だ。

鉢伏山荘の特徴のひとつは、山小屋の目の前まで林道が通っていること。夏期は車で上がることもできるため、道の駅のような機能を果たす側面もある。一方、冬期は歩いて登る以外に方法がなく、これまでは山小屋もクローズしていた。そんななか、ふもとの長野県松本市在住で鉢伏山の冬をこよなく愛する奥山愛さんが「冬期も営業したほうがいい」と現オーナーに提案したことで、2022-23シーズンから冬期営業が始まったという。

▲休憩所兼管理事務所内は食堂にもなっていて、日中は日帰り客もカフェとして利用可能。挽きたてのハンドドリップコーヒーをはじめ、温かいドリンクをいただける。カウンターに立つ笑顔がすてきな女性が、管理人の奥山愛さんだ。
▲山小屋には珍しい、コンクリート打ちっぱなしというモダンな客室。定員は7名。大きな窓が設えられていて、天気が良い日は室内からでも外の景色を楽しめる。(写真◎大垣柚月)
▲冬期の宿泊棟。1階にトイレが、2階に客室がある。トイレは、夏は水洗式だが冬は水が通っておらず携帯トイレを使う必要あり。屋根の上に、山小屋の電力の一部を賄うソーラー発電機を搭載。
▲夏期のみ営業する鉢伏山荘本館。建物は建築家の齋藤裕氏に設計されたもので、大きな青い屋根の上に越屋根が載ったユニークな造りに。(写真◎大垣柚月)

ふもとの街とのつながりを感じられるグルメやグッズ

▲夕食のメインはカレーライスで、カラアゲなどのおかずが付く。写真は松本メーヤウのタイ風グリーンカレー。お米には松本市中山のこしひかりを使用。(写真◎鉢伏山荘)
▲朝食はリゾット、スープ、サラダ、パン。スプーンは、奥山さんが不要になったスプーンや薪用の細枝を使ってアップサイクルしたもの。箸や箸置きも、薪用の細枝で自作したそう。(写真◎鉢伏山荘)

冬期の管理人を務める奥山さんは、北アルプス南部の山小屋で長く働いてきた経験をもつ。ともにこの山小屋を支えている女性スタッフの杉山さんも山小屋勤務の経験者だ。鉢伏山荘の冬期営業にはそんなふたりの経験が存分に活かされていて、限られた環境でも旅心を満たしてくれるサービスが提供されている。

たとえば夕食のスパイスカレーは、松本市に実店舗を構える人気店のレトルト商品から選ぶことができる。ご当地感があるうえ、選ぶ楽しさがあるのは食いしん坊にとってうれしいところだ。朝食の食材に地元産のものが使用されていたり、地元作家が制作した山小屋オリジナルグッズが販売されていたりするなど、山小屋のサービスを通じてふもとの街とのつながりを感じることができる。

▲夕食のカレーは、「がねいしゃ」「DOON食堂 印度山」「松本メーヤウ」「こーさんのうち」と松本市内の店舗の5種類のスパイスカレーから好きな1種類を選べる。スパイスカレーが苦手な人のために甘口なカレーもラインナップ。
▲鉢伏山荘のオリジナルグッズは、雪山道具に飾りたくなる雪の結晶がモチーフ。木のバッヂは安曇野市の木工作家、真鍮のバッチとペンダントは池田町を拠点とする彫金作家mauveが手がけたもの。
▲休憩所内の売店にはふもとの地酒が勢ぞろい。松本市内にある湧水「女鳥羽の泉」で仕込まれた善哉酒造の日本酒は、鉢伏山仕様のラベルにカスタマイズしたそう。

山小屋から目指すおすすめルート【鉢伏山荘~鉢伏山 片道約20分】

▲広々とした鉢伏山山頂。ベンチもあり、周囲を取り囲む絶景をゆっくり堪能できる。遮るものがないので、とくに風の強い日は防寒対策をしっかり用意して行こう。(写真◎大垣柚月)

天候に恵まれれば、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、そして富士山を拝める鉢伏山。鉢伏山荘から山頂へは20分ほどでたどり着けるので、日の入り、日の出と何度も足を運ぶことができる。山頂周辺はなだらかなので、写真撮影やスケッチなどをしながらのんびり過ごすもよし。

体力に自信がある人は、鉢伏山荘から南へ延びる尾根を歩き、諏訪湖と富士山の眺めがすばらしい高ボッチ山を目指してもいいだろう。体力や天候を考慮しながら、歩き方を選んでみて。

▲鉢伏山荘周辺からは、北アルプスや松本平を見下ろせる。鉢伏山の山頂では、これらに加えて富士山の勇姿も。(写真◎鉢伏山荘)

街に近い場所にありながら、雪化粧したアルプスに囲まれた非日常を味わえる鉢伏山荘。とにかく山のうえでゆっくりしたい人におすすめだ。そして一泊すればきっと、冬期の鉢伏山荘を切り盛りする奥山さんの温かい人柄に触れて「また来年も来たい」と思うはず。

鉢伏山荘 冬期
http://park10.wakwak.com/~hachibusesanso/index.html
・標高:1,840m
・営業期間:12月23~27日、1月~3月の金土日
※金曜は4名~受け入れ可能。
※貸切利用は7~10名まで可能。
※夏期営業は5月中旬~11月上旬。
・宿泊料金(税込):1泊2食12,000円
・メールアドレス: hachibuse.touki@gmail.com
※電話連絡が可能なのは営業日のみ。080-9837-0554

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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