アウトドア好きなわたしたちができるSDGs【#9 HELLY HANSEN】
ランドネ 編集部
- 2024年04月08日
140 年以上前にノルウェーで誕生し、水辺のアクティビティで活躍するウエアやギアを作り続けてきたヘリーハンセン。近年は、海洋漂着ゴミ問題への取り組みなど環境改善へ向けたさまざまなアクションを行なっています。昨秋に大きくリニューアルした葉山のお店で、いま水辺で起きていることや未来への想いを伺いました。
ヘリーハンセン オーシャン葉山マリーナ
- 住所:神奈川県三浦郡葉山町堀内50₋2 葉山マリーナ
- 電話番号:046-876-2520
- 営業時間:10:00 ~ 19:00
- 定休日:火曜日
お話を伺ったのは
小池 亮さん
ヘリーハンセンのマーケティング担当。学生時代から登山にハマり、ゴールドウィン入社後はサーフィンなどマリンスポーツに傾倒。昨年からパックラフトも始め、南伊豆や奥多摩へくり出している
水とともに生きるからこそ、水辺に起きていることを伝えたい
――改装後の「HELLY HANSEN OCEAN HAYAMA MARINA」に初めて伺いましたが、海の眺めが最高ですね!
小池 ありがとうございます。昨年のリニューアルで、海側の壁に大きな窓を設けたんです。店舗面積も2倍近くになり、ヘリーハンセンとして国内最大級の広さとなりました。
――窓外で、ゆっくりと揺れるヨットのポールを見てるだけでも、心が安らぎます。
小池 葉山は、アドベンチャーだけでなく、リトリートもできる場所。フィールドが間近にあると「BE WITH WATER」というブランドコンセプトにも説得力も生まれます。ここはフラッグシップストアですが、フィールド型店舗でもあるんですよ。
――コンセプトを直訳すれば〝水とともに生きる〞。最近の水辺の環境で、変化を感じることはありますか?
小池 環境問題で強く感じるのは、漂着ゴミの増加ですね。石垣島を旅行した際、あんなにきれいな海なのに、水辺の一部にペットボトルのゴミが溜まっているの見たときは、ショックを受けました。
山のゴミ問題もおなじですが、結局捨てているのは人間。陸で捨てたものが海につながっていくこともある。それがどこかの美しい離島の浜辺を汚しているかも知れません。海と山を切り離すのではなく、海があるからこそ地球は循環していくのだと考えています。
――美しい海を持続させるために、ヘリーハンセンが行なっている取り組みを教えてください。
小池 一番は、海洋環境問題の解決を目指した「H2O Project」ですね。先ほど話に出てきた石垣島のゴミ問題への取り組みとしては、ビーチクリーンで回収したペットボトルを一部原料としたTシャツを、製造販売しています。
――ペットボトルのゴミがTシャツに生まれ変わっているんですね。
小池 はい。もうひとつ海のゴミ問題で取り組んでいるフィールドが、流氷で有名な知床。ここにも多くのゴミも漂着しており、その6割が漁具だといわれています。
――映像で見る、美しい知床しか知らない……。
小池 残念ながら、海岸には多くの漂着物が積み重なっています。その中の漁具のゴミを粒状の再生樹脂ペレットにし、それをもとにフリスビーも造りました。
――なぜ、フリスビー?
小池 ひとつは単純に、フリスビーとというだれでも気軽にできる遊びをきっかけに、知床の海の現状を知ってほしかったから。もうひとつは、フリスビーがペレットから加工しやすかったということもあります。当初はサングラスのフレームへのリサイクルも候補にありましたが、それだと商品化に時間がかかります。自分たちのフィールドでどんな問題があるかが見つかったら、早めに解決策を提案していこうという考えが、フリスビーという選択につながりました。
――H2O Projectの中にある、アートを介した環境問題への発信も興味深いです。
小池 クライメート チェンジ アート プロジェクトのことですね。これは、全国の海から集めた水をリトマス紙に落とし、そのさまざまな色の変化をTシャツのデザインに落とし込むという取り組みです。
――小学生の授業で使った! その色の変化で、酸性か中性かアルカリ性かを判断した紙ですね。たしかにきれいな色味でした。
小池 一見、美しい色合いのTシャツですが、そこには海洋の酸性化が進行していることをメッセージとして込めています。
――確かにSDGsへの高尚な考えも大事ですが、デザインとして美しくないとユーザーには想いが響きにくい。ヘリーハンセンのライフスタイル向けラインやキッズ向けのアイテムは、日常でつい手に取りたくなるデザインですよね。
葉山を拠点に、次世代へつなげたい水辺の楽しさ
小池 ヘリーハンセンは真剣なアクティビティ向けのウエアと、ライフスタイル向けのウエアでふれ幅が大きいブランドだと感じています。たとえば本格的な釣り向けのジャケットはモーションキャプチャーで徹底的に分析して動きやすさを追求するいっぽう、定番のボーダーTは吸汗速乾性がありつつもあえて作り込まず、非常にシンプル。
――北欧発ならではの優しい色合いと柔らかな雰囲気も魅力です。これまで〝モノ〞を介したSDGsへの取り組みを伺いましたが、ほかにも多様なアプローチで活動をされていますね。
小池 水面に浮遊するゴミを吸い取るシービンという装置を、何カ所かに設置しています。ここ葉山マリーナのほか、八景島シーパラダイスのうみファームにも設置させてもらいました。家族連れの目に留まる場所に設置することで、子どもたちが海の環境問題を考えるきっかけになってくれればいいなと。
――キッズ向けウエアのラインナップが充実している点にも、次世代への想いが感じられます。
小池 ある調査では20代以上の日本人の6人にひとりが泳げない、というデータもあります。島国なのに水辺へのハードルが高くなっている現状を、改善したい。だからこそ、子ども向けの安全なライフジャケットを開発しましたし、今後はここ葉山のお店を拠点に、子ども向けのオーシャンスクールも開催していく予定です。次世代の子たちにヨットの楽しさや、安全にフィールドで遊ぶための注意点などを伝えていけたら。
――マリンスポーツって敷居を高く感じて、少し身構えてしまう人もいるけれど、入り口はもっと気軽に楽しんでほしいですよね。
小池 本当にそう! 水辺に立ち寄るだけでもいいんです。ヘリーハンセンを通して水とふれ合うきっかけを作ってもらえたらうれしいです。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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