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富士山の歴史と魅力を辿る旅へ!富士宮市民向けのトレッキングツアーに編集部員が参加しました

「山頂を目指すだけではない、新しい富士山の楽しみ方を提案したい」

近年、インバウンドの影響もありオーバーツーリズムが問題視されている富士山。今回、山頂を目指す富士登山では見つけられないような「世界遺産としての富士山の魅力」を、富士宮市民の方に感じてほしいという思いから、車移動とライトトレッキングの2つを掛け合わせた富士山トレッキングツアーを開催。今回は富士登山が初めての編集部みかみも参加し、富士山の新たな魅力を探ることに。

参加対象は、富士宮市在住で、富士山の自然や歴史に興味関心のある親子や年配者。昨年行なったトレッキングツアーが好評だったこともあり、今年も幅広い年代の方からの応募が殺到。当日はモチベーションの高い市民の方がたくさん集まった。

今年のツアー内容は、富士山ネイチャーツアーズの代表を務める岩崎仁さんの解説を交えた、大宮・村山口登山道の史跡と宝永山をめぐるプラン。世界文化遺産の構成資産 富士山本宮浅間大社に保管されている絹本着色富士曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくふじまんだらず)に沿って移動し、一般的な富士登山では触れ合うことのできない歴史と文化を存分に体験することができた。ここでは、ボリューム満点な富士山トレッキングツアーのようすを紹介!

安全登山を願う富士山本宮浅間大社

まず初めに集合したのは、全国に1,300社ある浅間神社の総本宮「富士山本宮浅間大社」。富士山の噴火を鎮めるために建てられた神社で、浅間大神(あさまのおおかみ)が祀られている。

現在の浅間大社は、関ヶ原の戦いに勝利して天下を手に入れた礼として、徳川家康により建てられた。本殿は浅間造りと言われる2階建ての建築様式で、他ではあまりみることのできない造りになっているそう。立派な鳥居に施された丹塗りがなんとも美しく、細かな装飾まで視覚的に楽しむことができるのがうれしい。

1日の始まりに安全登山を願う。昔の人たちも富士山に登る前に浅間大社でお参りをしてから出発していた

ガラスのように透きとおる湧玉池

国の特別天然記念物に指定されており、平成の名水百選の1つにも選ばれている湧玉池。富士山に降った雨や雪解け水が溶岩の間を通り、長い時間をかけてふもとにたどり着くことで、1日に約20万トンもの水を湧出している。

真冬でも水が湧き出ていることがあり、1年を通して富士山の恵みを感じることができるのが特徴。ここまで濁りのない純水をみることができるのは、世界遺産ならではと言えるだろう。

ひんやりと冷たい湧き水は、暑さで火照った体を冷ましてくれる
ツアー参加者全員で、誰が一番長く水に手を入れていることができるか勝負!

修験道の中心となった村山浅間神社

次に向かったのは、富士山修験道の中心となった村山浅間神社。富士山の噴火が収まると、神様や仏様の力を求めて人々は山で修行をするように。そのように修験の文化が発展していくことで修験道が成立し、拠点となった村山浅間神社には多くの修験者が立ち寄っていたようだ。

境内には「水ごり場」と呼ばれる、富士登山をする前に修験者が湧き水で体を清めていた場所や、「護摩壇」といった、願いを記した木を燃やして祈りをささげる場所など、修験者が使っていた施設が今でも残されている。他にも、村山浅間神社の御神木とされている大スギがそびえたっており、あまりの迫力に参加者も驚いていた。

かつては富士山頂に祀られていた仏像が納められている大日堂。現在はボランティアガイドが常駐している土日祝であれば、中に入ることも可能だそう。

本殿から少し離れた場所にある、富士山最古の登山道である「村山口登山道」の登山口。一度は廃道となったこともあるが、整備や調査を進めることで2004年に復活を遂げた。一般的な登山ルートと比べるとややマイナーではあるが、歴史に思いを馳せながら山歩きをしたい方におすすめ。村山浅間神社から富士山6合目までを繋ぐ、コースタイム7時間ほどの登山道だ。

中宮八幡堂を目指して苔の森へ

馬返し(修験者が馬を降りて歩いたとされる地点)と呼ばれる中宮八幡堂を目指して、往復1時間ほどのトレッキングへ。そこはまるで八ヶ岳を連想させる神秘的な苔の森で、人があまり通らないのか、生き生きとした苔が一面に広がっていた。

ゆっくりと森を歩きながら、「なぜ富士山には1本も川がないと思いますか?」と参加者に問いかける岩崎さん。

「富士山は砂礫の山なので、雨が降っても地面に浸透してしまうんですよ。なので川や池が1つもありません。となると、森にとって水源がないのは致命傷なのではないか?と思うかもしれませんが、実は苔から水を吸収することができるのです。つまり、大地の水を支えているのは苔と表土。苔があるおかげで富士山には森が存在している……ということになります。」

溶岩の表面はゴツゴツしていてしっかりと固まるため、苔が生えやすいそう

目的地の中宮八幡宮。奥地にあり、なかなか気軽に来れる場所ではないため、興味深々で写真を撮る参加者の姿も。この先には、登山を禁じられていた女性が富士山を拝んでいたとされる女人堂跡もある。

富士山を学びに宝永火口トレッキング

ツアー最後の工程となる、富士宮口5合目から6合目地点まで登り、宝永火口を周遊するコース。だんだんと体に疲労が溜まりつつも、岩崎さんの巧みなペース配分と富士山の解説によって、会話を楽しみながらゆっくりと登っていく。途中、隊列の後ろからは「野ウサギがいた!」という声も。

樹林帯は半袖1枚でちょうどいいくらいの気温で、標高の高い山だからこそ見られる自然の姿を目に焼き付けながら、心地よい山歩きを楽しむことができた。

富士山にはハイマツが生息していないため、森林限界を過ぎると低木化したカラマツが見られる

樹林帯を抜けると富士山らしい山肌が

樹林帯を抜けた6合目付近では、あいにくの天気で霧が立ち込めてしまったものの、富士山を感じられる独特の山肌を見ることができた。火山荒原を歩いていると、辺りには砂礫地帯でみられる多年草「ミヤマオトコヨモギ」の群生も。ここ周辺の広い環境を独占しているようだ。

宝永山のほうへ歩みを進めていくと、寝転がるように自生するカラマツの姿が。本来カラマツは直立に育つのだが、偏西風の西風の影響を受けたことにより上に伸びることを諦め、東側に枝を伸ばしてこの姿になったそう。この現状は旗状樹型と呼ばれており、成長の早いカラマツだからこそ成長点を変えて順応できているとのこと。

一定方向で風が吹き続ける富士山だからこそ、見ることのできる自然の姿と言えるだろう。

主に夏(7~8月)の富士山でみることのできるムラサキモメンズル

最終目的地である宝永火口に到着。生憎の悪天候により、残念ながら宝永火口を望むことはできず、富士山特有ともいえる溶岩が敷き詰められた登山道を下っていくことに。多少滑りやすい道ではあったが、そのような状況下でも参加者同士で今日の旅をたのしそうに振り返る姿が見られた。

天候に恵まれると、迫力のある宝永火口が目前に広がる

富士登山に対して、ハードルの高さを感じている登山者にもおすすめな今回のルート。ツアーを通じて、修験の文化や歴史だけでなく、山歩きをしながら富士山の成り立ちや植生を学び、世界遺産としての富士山が持っている魅力を発見することができたはず!

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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