adidas/adidas 1(アディダス/アディダス 1)2005|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年01月30日
頭脳をもったランニングシューズ
着地時の衝撃を感知して最適なクッション性へと調節!
2004年春、オレゴン州ポートランド。この地にヨーロッパ、アジアをはじめとした世界各国から、スポーツギアを担当分野とする数多くのジャーナリストが集結。筆者もその一人であった。ポートランドというと、近郊のビーバートンにヘッドクォーターを構えていることから、ナイキに関連したイベントと思われるかもしれないが、その目的はアディダスが発表する、いまだかつてないコンセプトのランニングシューズのプレスプレビューに参加するためだった。アディダスのアメリカオフィスも、ポートランドのダウンタウンからウィラメット川を挟んだ反対側にあり、こちらで同イベントは開催された。
このとき発表されたシューズのテクノロジーは、外部への情報流出を防止するために2001年より3年間、少数のスタッフのみでドイツ本社でなく、アメリカ支社で開発された。事前の情報は一切なく、否応なしに期待は高まったが、発表されたシューズは、自分を含めたジャーナリストの想像をはるかに超越するものだった。
そのプロダクトの名はアディダス 1(ワン)。マイクロプロセッサーを搭載することで着地時の衝撃を感知し、モーターとワイヤーを組み合わせることでランナーそれぞれに最適なクッション性を提供するという、革新的な機能性を追求したシューズであった。
着地時の衝撃は体重や着地タイプ、さらには右と左でも異なるのだが、このシューズは左右別々でピッタリなクッション性にアジャストしてくれる。すなわち、頭脳をもったランニングシューズであり、シューズ自らが考え、作動するのだ。
それまでは、さまざまなタイプのランナーに最適なクッション性を考慮したプロダクトがいくつもラインナップされていて、ショップを訪れて自分のレベルやタイプに合った1足を選ぶ、というのがシューズ購入に際しての一般的な消費行動だったが、アディダス 1はその逆で、ランナーはこのシューズを手に入れるだけで、ほかには何もする必要はなく、1足のシューズが各々の着地を感知し、考え、判断して、最適なクッション性へと調節してくれるのだ。
アディダスの斬新なコンセプトとテクノロジーはもっと評価されていい
このように、斬新なコンセプトを機能として実現することに成功したアディダス 1は、プレスプレビューからおよそ1年が経過した2005年春にようやく市場へ投入された。しかし、一般的なランニングシューズと比較してかなり重いことや、価格が日本で3万円を超える高額だったことなどにより、販売面ではアディダスの計画どおりにはいかなかった。そのため、ランニングシューズのアップデートモデル、バスケットボールシューズといったいくつかのバリエーションを展開して終了。
アディダスは、走行距離や時間を記録可能なランニングコンピュータを内蔵した1984年のマイクロペーサー、ソールユニット内の空気圧の調整で衝撃吸収性をカスタマイズできた1993年のチュブラーのように、他ブランドが思いつかないような突拍子もないアイデアをクリエイトしてきた歴史があり、このアディダス 1もその遺伝子を継承するテクノロジーであった。短期間での展開となったが、アディダスのこの試みはスポーツシューズの歴史において、もっと評価されていいと思う。
column
アディダスランニングにおける最新トピックスは、NASAの技術からインスパイアされたテクノロジーが採用された「SolarBOOST」シリーズである。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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