adidas/LOS ANGELES TRAINER(アディダス/ロサンジェルス トレーナー )1980|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年02月04日
“クッションのカスタマイズ”のパイオニア的存在!
激動の時代に注目を集めたトレーニングシューズ
2017年9月、フランスのスポーツ相、ローラ・フラセル氏は、北朝鮮情勢が改善されない限り、2018年2月に隣国の大韓民国・平昌で開催される冬季五輪に選手団を派遣しない可能性のあることを示唆した。このニュースを聞いて驚いた人も多いかもしれないが、現在40代以上の読者なら、オリンピックに政治や思想がもち込まれ、ボイコットが珍しくなかった時代を知っているだろう。
1980年のモスクワ大会は、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議したアメリカがボイコットを表明。これに追随して日本、西ドイツ、韓国の西側諸国や中国、イラン、パキスタンといったソ連の軍事脅威にさらされる可能性のある国もボイコットを決定。この結果、金メダルの獲得が有力と言われていた柔道の山下泰裕や男子マラソンの瀬古利彦は、この決定に涙をのんだ。これとは反対に、1984年のロサンゼルス五輪では、アメリカのグレナダ侵攻に抗議するという名目(実際には前回大会の仕返しという意味合いが大きい)でソ連、東ドイツ、ポーランドをはじめとした東側諸国が同大会をボイコット。この結果、地元アメリカが大声援の後押しもあって、メダルラッシュとなった。
そんな激動の’80年代初頭から中期に注目を集めたスポーツシューズが存在する。それが、アディダスのロサンジェルス トレーナーである。アディダスはオリンピック開催年をモデル名に冠したSL 72、SL 76、SL 80といった、軽量性を追求したトレーニングシューズをリリースしてきた。しかしロサンジェルス トレーナーは、1980年モスクワ大会の次の開催都市名であるロサンゼルスを冠したトレーニングシューズであり、レース向けに超軽量のロサンジェルス コンペもラインナップされた。
スティックの組み合わせで衝撃吸収性の調節が可能に
この2つのシューズのもっとも大きな特徴は、ショックアブソービングロッドと呼ばれるスティックをミッドソールのヒール部分に採用したこと。これによってランナーは、シューズのクッション性を体重や競技レベルに応じて、自分好みにカスタマイズすることができた。ブルーのスティックが一番硬く、レッド、ホワイトの順に柔らかくなっていく仕組みで、この組み合わせで衝撃吸収性能を調整したのである。
当時としては斬新なテクノロジーを採用したロサンジェルス トレーナーであったが、若干重いこともあって、シリアスランナーからは高い評価を受けにくかった。しかしながら、視覚的にインパクトのあるデザインは一部のスニーカーフリークから注目を集め、現在まで根強い人気をキープしてきた。とくにオリジナルの展開が終わった2000年代初頭に、イタリアやイギリスのストリートシーンで突如人気となり、L・A・トレーナーの名称で数々のバリエーションがリリースされたことは、スニーカーの歴史にしっかりと刻まれている。
またミッドソールのヒール部分にショックアブソービングロッドを配するなど、アッパーの一部のディテールやアウトソールパターンを除くとそっくりなデザインのケグラー スーパー(Kegler Super)と呼ばれるモデルも登場。ケグラーとはアメリカ英語でボーリングをする人のことだが、このシューズもボーリング場よりもストリートでポピュラーとなったモデルだった。
column
1980年にデビューしたロサンジェルス トレーナーのオリジナルはネイビー×シルバーのカラーだったが、現在までに数々のカラーバリエーションが登場している。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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