OSAGA/KT-26(オサガ/KT-26)1978|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年12月01日
独特なソールの意匠が比類なきクッション性を発揮!
短命に終わった悲運のブランド
1970年代から1980年代初期、アメリカではジョギングブームという言葉が頻繁に使用されるなど、走ることが一大ムーブメントとなっていた。そんな時代にナイキ、ブルックス、ニューバランス、サッカニー、エトニックといったアメリカ生まれのスポーツシューズブランドは急速に成長し、アディダス、プーマといった欧州勢、オニツカタイガーの日本勢と、激しいシェア争いを繰り広げていた。
そんな時代に、オレゴン州ユージン発祥の「オサガ」というブランド名のランニングシューズが存在していたことを知っているランナーは、いまとなっては少ないかもしれない。それは靴屋の経営者であったビル・コームスによって創業されたオサガが、他のブランドと異なり、1970年代後半から1980年初頭のごく短い期間だけ活動していたブランドだからである。
しかしながら、同社からリリースされたKT-26は、当時ランナーのバイブルとして絶大な信頼を得ていた「ランナーズワールド」誌のシューズレビューで、最高評価のファイブスター(5つ星)を獲得するなど、その機能性には定評があった。また、オレゴンのランナーの聖地といっても過言ではないユージン市のヘイワード競技場のスコアボードには、スポンサーの証としてOSAGAの文字が刻まれていたという。
優秀なテクノロジーはオサガがなくなった後も継承され続ける
そして、このシューズのもっとも大きな特徴がシューズの中央に向かって湾曲したアウトソールパターンだ。これはBio Kinetic Soleと呼ばれ、すなわち生体動力学を応用したアウトソールを装備していたということ。この形状は着地時に外側に広がることで衝撃を吸収し、元の形に戻る際に反発力を発揮するという構造であった。
このテクノロジーは、当時としては最高レベルのクッション性をランナーに提供。着地時の衝撃からランナーを守り、ランニングを起因とする故障を未然に防止することに大きく貢献していたのである。ちなみにモデル名KT-26のKTは、Kinetic Technology(動力学テクノロジー)、26はフルマラソンのマイル表記での距離を意味している。
オサガに在籍し、このテクノロジーを開発したといわれるジェリー・スタブルフィールドは、ナイキ創始者のひとりであるオレゴン大学陸上部のビル・バウワーマン監督のもとで、円盤投げの選手として活躍。資金難によってオサガというブランドは一旦消滅することになるが、彼は1980年代中期にエアロビクスシューズで一世を風靡することになるアビアを創業した人物としても知られている。
同社の代名詞となったカンチレバーソールは、オサガのKT-26に採用されていたアウトソールデザインをアレンジしたものだ。オサガがなくなった後も、このアウトソールテクノロジーの本質が継承されたことは、この機能の優秀性を物語っている。
そしてこのテクノロジーは、海を越えてオーストラリアでも愛されることとなる。オサガのKT-26は1980年代初期には生産が中止されたが、オーストラリアでダンロップ KT-26として、そのアウトソールデザインを活用したシューズが、21世紀に入って以降も販売され続けた。このモデルは、そのリーズナブルな価格設定もあって、オーストラリアの人々にとっては誰もが知る、ポピュラーなシューズとして君臨することとなったのである。
column
オサガは‘80年代初期に一旦消滅したが、その設計思想は元社員のジェリー・スタブルフィールドが創業したアビアに継承されることとなった。
「ランニングシューズの名作たち」のその他記事はコチラから。
SHARE
PROFILE
RUNNING style 編集部
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。