adidas/COUNTRY(アディダス/カントリー)1972|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年01月16日
悪路を駆け巡るためのスペックを結集したランニングシューズ
クロスカントリー向けに開発され日本マーケットで愛されたモデル
山道を走るトレイルランニングは、日本でも盛り上がりを見せているが、筆者がスポーツシューズブランドに勤務していた’88年から’98年頃は、日本における競技参加者はほとんど存在していなかったのが実情であった。アメリカ本社からの「トレイルランニングというスポーツを定着させ、対応シューズをもっと販売するように!」という要求にも応えることはできなかった。’90年代初期に日本市場でヒットしたナイキACGのエアモワブなどは、トレイルランニングにも対応するシューズであったが、実際にトレランにこのモデルを使用したランナーはほとんどいなかっただろう。
野山を駆け巡るというランニングスタイルで、トレイルランニングよりも古くから知られていたのはクロスカントリーだが、厳密にはトレイルランニング、クロスカントリー、イギリスなどでとくにポピュラーなフェルランニングは似て非なるもの。しかしながら、いずれも舗装路ではなく、悪路を走るという共通点がある。
そしてクロスカントリー向けに開発されたシューズで、とくに日本マーケットで愛されたモデルが存在する。それがアディダスのカントリーだ。
レザーアッパーの採用でストリートでも人気に!
カントリーはクロスカントリー専用シューズである。大きな特徴はアッパーに天然皮革を使用している点と前後を大きく巻き上げたガムラバー製のアウトソールを使用している点。アウトソールの独特なヘリンボーンパターンは、悪路でも高いグリップ性を発揮し、アウトソールの前後を巻き上げた構造は抜群の耐久性を誇ったという。1976年の6月に発売された雑誌ポパイの創刊号にも掲載されたこともあり、カントリーは日本のファッションフリークにとって憧れの的となった。
しかしながら、当時日本代理店の正規取り扱いがなく、一部のスニーカーショップやシューズショップが少数の並行輸入品を扱うのみであった。そんなカントリーが日本でブレークしたのは’80年代中期のこと。これには2つの要因が重なったことが大きい。ひとつは’84年に製作され、日本では翌年の4月に公開された映画「ビバリーヒルズコップ」で、主演のエディ・マーフィー扮するアクセル・フォーリーがカントリーを履いていたこと。
もうひとつは’85年9月のプラザ合意以降の急激な円高により、それ以前は2万円近い価格を付けていた店も珍しくなかったのが、アメ横などでは1万円を切るプライスで販売されるようになり、それまでは高嶺の花だったのが、急に身近な存在となったことだ。
これによりカントリーは、同じアディダスのスタンスミス、K・SWISSのクラシック、トレトンのXTLやナイライトなどとともに徐々に大学生のマストアイテムとなっていった。それ以降も日本市場では高い人気をキープし、スタンスミスやスーパースターといったモデルと肩を並べる存在となったカントリーだが、アメリカやヨーロッパではそこまでの人気はなく、海外の関係者は不思議に思ったという。
なぜならカントリーのラスト(木型)はスタンスミスやスーパースターといったモデルと比較するとかなり細く、どちらかいうと日本人の足には不向きだからだ。実際、この当時フランス製のカントリーを履いている日本人で、本当の意味でピッタリと足にフィットさせている人は少なかったのである。
column
これまでに数多くのバリエーションが登場したが、2014年にミタスニーカーズの国井氏がディレクションしたモデルがとくに高い評価を得ることに成功している。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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