new balance/M990(ニューバランス/M990)1982|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2020年01月24日
その後のランニングシューズのスペックを変えた傑作
このシューズの登場がブランドの底力を見せつけた
ここ数シーズン、ニューバランスが日本のカジュアルシーンで大ヒットを記録している。その理由は、シンプルかつベーシックなデザインがあらゆるファッションスタイル、コーディネートにマッチするからといわれている。しかし、もうひとつ忘れてはならないのは、同社のスポーツシューズが他ブランドを寄せ付けない高いパフォーマンス性能に裏付けられた快適性をキープしていることである。
これはニューバランスが1906年にアーチサポートや矯正靴のメーカーとしてスタートしたことと無関係ではない。1972年にジム・デービス氏によって買収されると、同社は本格的にランニングカテゴリーへ参入するようになったが、このブランドがランニングシューズにおいて存在感を示すようになった最初のトピックスは、320などに採用されたカカト部から甲をホールドしてつま先をフリーにするインステップレーシングであり、その次が1982年のM990である。
M990はニューバランスが当時の技術の粋を結集した高機能ランニングシューズで、その性能に加えてアメリカでは100ドル、日本では3万円、すなわち一般的なランニングシューズの約3倍というそのプライスでも話題となった。1980年代の半ばに渋谷の「バックドロップ」というアメリカ直輸入のアイテムが取り揃えられた洋品店に行くたびに、その重厚感のあるシルエットを眺めつつ、友人と「欲しいなぁ」と囁きあっていたのも懐かしい思い出。自分はもっぱらそのデザインとカラーリングに惚れ込んだが、友人のほうはオートバイをいじるのが好きで、当時のトップライダーであるケニー・ロバーツや平忠彦が、M990を履いていたということが、どうしても手に入れたい理由であったらしい。
「900番台シリーズ」はランナーとスニーカーフリークの両方に愛される存在に
機能性のほうに目を移すと、「M.C.D.(踵部安定板)」による安定性とクッション性の両立に成功しており、このテクノロジーは他ブランドの開発担当者に大きな衝撃を与えた。この当時ふたつの機能性を兼ね備えることは難しいと考えられていたのである。またヒールカウンター下部に配された合成樹脂製ヒールスタビライザーは、機能性はもちろん、デザイン上でも大きな特徴となっており、これ以降ライバルブランドも同様の意匠をプラスすることが当たり前となった。’80年代中期にはランニングシューズのかなりの割合に類似パーツが取り付けられるようになったが、これはM990の影響が大きい。
現在の基準からするとかなりベーシックな印象のM990だが、じつはランニングシューズの歴史に大きな足跡を残していたのである。その後、M995やM996といった後継モデルがリリースされ「900番台シリーズ」としてランナーとスニーカーフリークの両方に愛されることとなり、現在(2014年)は11代目となるM990 V3、すなわちM990を名乗る3度目のモデルが展開されている。他ブランドでも名前を継承するロングセラーは存在するものの、オリジナルモデルと現行モデルが似ても似つかないことも多いのに対し、ニューバランスの「900番台シリーズ」は、しっかりと開発コンセプトとデザインテイストが継承されている気がする。これは技術革新だけでなく、伝統を大切にし、現在もアメリカ国内におけるシューズ生産を継続するニューバランスらしい部分である。
column
そのモデル名と関連付けて「1000点満点で990点の機能性を確保した」とする当時の雑誌広告のビジュアル。その高いパフォーマンス性能を自ら主張していた。
「ランニングシューズの名作たち」のその他記事はコチラから。
SHARE
PROFILE
RUNNING style 編集部
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。