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【鈴木文雄】五島列島・嵯峨ノ島のヒラマサキャスティング(前編)

究極のゲームフィッシングのひとつ「ジャイアントトレバリー=GT」を、長年狙い続け、多くの記録的サイズをキャッチしてきた実績を持つGTフィッシングのパイオニアのひとり鈴木文雄氏。本誌ソルトワールドで連載してきた釣行記「海道釣紀」の中で鈴木氏が五島列島に赴いた際の記録を前後編でお送りする。

待つことも釣りのうち

朝4時。ホテルの窓の外はまだ夜の街明かりが寂しく光っている。熱いシャワーを頭から浴びる。身体をブルブルと震って水滴を落とし、両手に力を入れると急に血液が巡りだした。コップ一杯の水をグイと飲みほし、大あくびをすると目が覚めた。スーパーで買ったレタスを何枚か頬張り、パンにチーズとハムを挟んでがぶり。ヨーグルトや野菜ジュースを飲んで5分ほど安静を取った。洗面を終え、ロビーで釣友の小原さんと待ち合わせて迎えの車に乗った。

秋から冬にかけての五島は季節風の北風が吹き荒れ、五寒一温となりどんどん冬に傾斜する。当然時化ると出港中止となるのだから、ある意味〝待ちの釣り〞なのである。今日も初日から3日待ってやっとボートが出せる状況になったのだから、待つことも釣りのうちなのだ。

▲ベースとなった五島列島福江島の風景。秋から冬にかけての五島は季節風の北風が吹き荒れ、五寒一温となりどんどん冬に傾斜する。

▲釣り荷はコンパクト。下は福岡-福江島間の定期便。

岐宿の朝

福江島枝宿(きしゅく)漁港の朝は早い。午前5時半、何隻かの漁船がゆっくりと港を出て行くのが見えた。気温は12度程度だが、石垣島で暮らすぼくには意外と寒く感じる。小さい頃、北海道の冬の朝で氷点下10度を経験していても、時間が経つと寒さは忘れるらしい。

少年時代の綿入りのアノラックから現代はヒートテックやフリースといった軽いインナーや熱反射保温素材のジャケットがあって、薄着でも十分な保温力があるのだ。ヒートテックアンダー+半ズボンの上から愛用のサロペットを穿いた。もともと真っ赤だったサロペットは15年の月日を経て膝の部分があせて白っぽく見えるけれど、〝釣りのつき〞みたいな安心感を覚え手放せない。

キャスティングルアーは足元の安定が重要で、GTやヒラマサフィッシングにおいてデッキシューズは最も重要なアイテムだ。自分に合ったデッキシューズをきちっと履くことが、救命胴衣と並ぶほど重要なアイテムとぼくは確信している。

恵美寿丸のデッキに釣り荷を降ろし、ラインシステムをチェックしながら、今日一番で使うスティックベイトを繋ぎロッドホルダーに収めた。朝の息吹は福江島の山々の峰が暗闇を裂いた。それでも闇は暗い霧のように地を覆う。

入り江の寺小島を過ぎると白い尖った建物が山腹に見えた。屋根の上の十字架は、広がる小さな十字架群よりひと際天に近いようにも思われた。カトリック水の浦教会の陰影は穏やかな朝の海に映ったが、船の引き波の中に消えた。

艶やかな舞姫の島

鶴首の様に西に延びる岐宿岬の白灯は、闇を照らすほどではない。恵美寿丸は岬を回り込んで、平らな魚津ヶ崎の鼻から東シナ海の外海に出た。立小島灯台の光の帯が昨日までの時化の残波頭をかすめた。

東の空は浅紫から薄紅に境目なく変わろうとしているが、天を支える岐宿城岳の山並みは、いまだ錆鼠色に沈黙している。海に浮かぶ丸い三角錐のような姫島はまだ朝靄に包まれていたが、5分もしないうちに黄金の射光が艶やかな舞姫のような希望と若さを与え、萌葱・赤墨・海老茶・山吹と刻々と変化するキリスト教会のステンドグラスのようで見とれてしまった。

しばらく走ると姫島の西にある小さな岩礁がざわついていた。

「ちょっと投げてみましょうか」

渋田船長はスロットルを緩め、岩の潮上300mのポイントでエンジンを切った。この時期珍しい南東風と潮が同調し、2.5ノットでボートは流れ出した。岩にへばり付いた小魚の群れは、きらきらと泡を弾けさせ活気づいて跳ねている。ぼくはフロントデッキに立って大きく深呼吸をした。

▲五島市奥浦町堂崎にある有形文化財のカトリック堂崎教会。1879年に木造の天主堂が建てられ、1908年には現在のレンガ造りの協会が完成。1974年に長崎県の有形文化財(建造物)の指定を受けている(五島市観光物産課HPより抜粋)。

鶴の首のように西に延びる岐宿岬にある白灯。恵美寿丸は岬を回り込んで、平らな魚津ヶ崎の鼻から東シナ海の外海に出た。下はカトリック水の浦教会。屋根の上の十字架は、広がる小さな十字架群よりひと際天に近いようにも思われた。

キャスティングルーティーン

両足で軽くステップを踏んで手をねじって振る。小さい時からの癖で、今はキャスティングのルーティーンのようなものだ。1分ぐらいの準備運動でも身体は少しほぐれた。

ロッドは3ピース8.5フィートのFISHERMAN GALOIS-MASSA853T、リールはステラSW14000XG、ラインはアバニGTSMP6号+スーパーステルス130lbショックリーダーで、スティックベイトは⊿FB-90サイドミラーをジョイントした。

一投目はフルキャストせず、高めの軌道で風に乗せた。ルアーは70ⅿ先の岩から少し離れた、沸き立つ潮の縁に落ちた。素早くリールを巻いてスプラッシュさせ、ロッド先を下方に煽ってダイビングジャークさせると、⊿FB-90 サイドミラーは海中で細かい光波を発して泳ぎ出す。これでヒラマサでもバイトしてくれると、筋書き通りなのだがそうはいかないのが釣りである。

2投目、スイングスピードを速めるとリールから無数の水滴が空中に舞った。放物線を描くラインより射光に浮かび上がった虹のほうに意識は向いた。30分ほど投げてもヒラマサの反応がないので移動した。

火山島の嵯峨ノ島へ

恵美寿丸は南下し三井楽半島を回り込むと、遠くにそそり立つ断崖の島が見えた。さらに近づくと絶壁が迫ってきた。恵美寿丸は進路を南東に変え島の側面に出た。

断崖はなだらかな斜面になり、海に至るところに集落があった。その向こうが緩い山になっている。火山島の嵯峨ノ島(さがのしま)だ。

嵯峨ノ島は福江島三井楽貝津港から約4㎞北西にある。人口200人未満で南北3.3㎞、東西1.3㎞。北側が断崖の男岳(標高151ⅿ)、南側が丘陵の女岳(130ⅿ)で、2つの火山に挟まれた窪地に集落がある。船の往来のある東側から見ると、NHKの人形劇の『ひょっこりひょうたん島』に似ている。

恵美寿丸は三井楽半島と嵯峨ノ島の間に流れる大きな水道に入った。丁度嵯峨漁港から引き縄船が出てきた。直ぐにジャンボという仕掛けを下ろして目の前を通り過ぎ、男岳の断崖のほうに流し始めた。

恵美寿丸は水道の南端近くでエンジンを切った。

「水深70ⅿです。少しずつ浅くなります」

朝の射光は強さを増し、顔を射る。〝光はまるで南国だな!?〞と思った。考えてみれば五島列島・福江島も日本の中では南国に属しているのだ。海の瑠璃色は深く透け、その向こうに嵯峨ノ島の女岳が柔らかいみどりの丘陵のように見えた。しばらくすると「この辺から浅くなります」と渋田船長のアナウンスがあった。

【この記事は2020年11月現在の情報です】
【鈴木文雄】五島列島・嵯峨ノ島のヒラマサキャスティング(後編)はこちら>>>

【鈴木文雄】五島列島・嵯峨ノ島のヒラマサキャスティング(後編)

【鈴木文雄】五島列島・嵯峨ノ島のヒラマサキャスティング(後編)

2021年11月22日

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SALT WORLD 編集部

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近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。

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