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ツール・ド・北海道2017を振り返る~31回目を迎えた伝統の国際ステージレース(後編)~

最終第3ステージは函館山頂上決戦の77km、たった4kmの登りでこの3日間のすべての総合優勝争いが決まるクイーンステージだ。各チームのエース同士がここで最後の力を振り絞ってぶつかり合うことになるが、函館山を登り始める前には各チームのアシスト同士による位置取り争いが行われる。その日勝負に出るエースを少しでも後ろで温存させながら、有利な集団の前方で登りの入り口に連れていくのが彼らの役割となる。エースの力だけでなく、いかにアシスト陣の選手層が厚いかどうか、それも紙一重の勝負となるロードレースで勝つために重要なファクターとなる。

ここでは今大会で活躍した若手選手たち、初参戦のチーム、大会関係者のインタビューなどを交えツール・ド・北海道のインサイドストーリー(後編)としてお伝えしたい。

鹿屋体育大学はU26チーム総合優勝と冨尾大地の山岳賞逆転に向けてスタート準備をする

格上のUCIプロコンチネンタルチーム、NIPPOヴィーニファンティーニはチーム総合優勝と逆転で個人総合優勝を狙う

総合リーダージャージを守りたい岡本隼を擁する愛三工業レーシングチーム。スタート前には緊張感が高まる

今大会出場選手のなかでトップクライマーと評が高かったマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)は逆転で総合優勝を狙う

各チームの思惑が交錯する中、最終ステージがスタート

最終ステージでは政治家として衆議院議長、自由民主党幹事長、北海道開発庁長官などを歴任された綿貫民輔氏が、大会主催者の公益財団法人北海道協会の会長として90歳となった今年もスターターと表彰式プレゼンターを務めた。各賞のリーダージャージを着た岡本隼(愛三工業レーシングチーム)、鈴木龍(ブリヂストンアンカー)、草場啓吾(日本大学)ら3名を先頭に、集団は最終決戦の地、函館山を目指してスタート。

日仏混成のUCIコンチネンタルチーム、インタープロサイクリングアカデミーのチームカーのなかから見たレース

最終ステージでは、日仏混成チームとしてクラブチームからスタートし、11年目を迎えたインタープロサイクリングアカデミーのチームカーに同乗させてもらい、チームカーのなかから最終ステージの模様を追った。今年からUCIアジアコンチネンタル登録を行い、フランスやアフリカ、アジアなどのUCIレースに参戦しているが、日仏の若手選手の育成とフランスと日本の自転車文化交流を目指すユニークなビジョンを持ったチームである。ゴールまでの車内で日本在住のフランス人チームマネージャー、ステファン・フォレストさんから興味深いお話を聞いた。

クラブチームからスタートし、11年目の今はUCIコンチネンタルチームとして国内外のUCIプロロードレースを走る。チームマネージャーのステファン・フォレストさんは「2024年パリオリンピック開催も決まり、日本とフランスの架け橋になりたい」と抱負を語る

チームカーはオフィシャルスポンサーのスバル・レヴォーグ。運転席に貼られたコースマップや出場選手リスト。大会コミッセール(審判)から無線で逐一入るレース状況に即対応できるよう準備されている

今季よりUCIコンチネンタルチームに昇格したインタープロサイクリングアカデミーは、ツール・ド・北海道初出場。この3日間ですべての逃げに入った中田拓也、那須ブラーゼンから移籍した水野恭平、フランスのプロレースを走るフロリアン・ウドリら実力のある選手たちが連日活躍を見せた

道南の大自然を行くコース設定と観光地函館山を交通規制して実現した山頂ゴール

77kmのロードレースはプロのレースとしてはかなり短い。スタートして間もなく山のほうへ入り、インタープロの水野恭平が逃げを打った。しかし、この距離のレースでは集団もペースを緩めることなく、山頂前には吸収された。車内では監督のステファンさんが「ナイストライ!」と選手を称える。
下ってからは大自然の海岸線を行き、あっという間に函館山の手前まで来てしまった。平均50km/h前後のスピードで進んでいるのだから、それも当然のことだろう。チームカーは選手たち集団の後ろについているため、集団の先頭で起きている姿は直接確認できない。それでコミッセールから入る無線情報で選手のゼッケン番号が呼ばれ、誰が逃げているかなどの情報を得られる。インタープロの中田選手は3日間連続で逃げに入り、函館山の手前で我々も追いついた。集団からドロップしているが、彼の連日の動きにチームカーの中はいいムードだった。「グッジョブ!!」とフォレスト監督が声をかけながら追い抜いていく。

連日のように函館から雄大な海岸線を行く。素晴らしいコース設定だった

大自然の中をテレビ局のヘリコプターも飛んでいて、建物が洋風ならツール・ド・フランス中継を思わせる

この3日間ですべての逃げに入った中田拓也(インタープロサイクリングアカデミー)は函館山の手前で役割を終え、あとはマイペースで山頂を目指すだけ

函館山の入り口は急坂でチームカーは大渋滞。この頃先頭集団はエースたちを前方に送り込んだ後で、最後の勝負に突入していた

落ちてくる選手たちを見ながら、集団の前方に残っている選手たちを割り出す。インタープロは総合でエースのフロリアンがトップ10に残れるかどうかに期待している。上へ行けば行くほど有名な選手、上位に絡んでくると思われた選手たちに追いつく。

総合山岳賞ジャージを守りたかった草場啓吾(日本大学)はメカトラブルの不運もあり、ライバル冨尾大地(鹿屋体育大学)から遅れをとってしまった。勝負の世界は運不運も含めて常に「勝つか負けるか」しかない、非情なものだ

ラスト1kmの看板の先を行く選手たちとチームカーの隊列。その頃先頭では、このステージと総合優勝争いが繰り広げられていた

函館山の頂上。集まった多くの観客の大歓声を受けながら選手たちがゴールする

エース同士の争いはクライマーのマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)がステージ優勝し、そのまま総合優勝を果たした。チーム総合優勝よりも個人総合優勝のために中根英登が勝負を仕掛けた優勝候補、NIPPOヴィーニファンティーニは先頭争いに4名を送り込みながらも表彰台を逃す。大門監督いわく「勝つために戦って、清々しい負け」を喫した。

レース後に今日の展開を振り返るNIPPOヴィーニファンティーニ

優勝直後のマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、長い登りが得意だが、4kmの短い登りでも強かった。「アリガトウ! キナンのチームメイトみんなのおかげ、感謝したい」と喜びを語った

岡本隼(愛三工業レーシングチーム)はゴール後も爽やかで落ち着いた表情。総合優勝は逃したが、総合ポイント賞ジャージを獲得した

昨年より新設されたU26チーム総合優勝を果たした鹿屋体育大学。連日積極的に逃げを打った冨尾大地(中央)は個人総合山岳賞を獲得し、U26チーム総合優勝の原動力となった

あらためて感じた31年の歴史がある大会の存在価値と大会関係者たちの意気込み

レース結果は既報のとおりで割愛させていただくが、あらためて大会を振り返ってみてお伝えしたいことは、ツール・ド・北海道という日本で最も長く続いているステージレースの存在価値だ。
今や8日間連続で日本最大のUCIステージレースとなったツアー・オブ・ジャパンや新しく開催が始まったツール・ド・とちぎ、北海道のなかではUCIグランフォンドのニセコクラシックなどが注目を集めるなかで、ツール・ド・北海道の大会関係者に話を聞いた。

ツール・ド・北海道大会長の山本隆幸氏の表彰式や大会期間中のコメントをまとめると、
「今年は7年ぶりに道南エリアでの開催となり、函館市を中心に3日間の大会を開催できました。工藤函館市長をはじめ、多くの周辺市町村のご協力があってこそこれだけの素晴らしいコースプロフィールが実現できました。とくに、普段は交通規制をしていて自転車が入れない函館山を頂上ゴールとした最終ステージは大会のクライマックスとして最高の舞台になりました。また、31年前の開催当初より大学生や北海道選抜など若い選手たちに国際大会のステージレースを経験していただく場を提供し、日本の自転車競技そのものの発展を支援していくといった意義を持つ大会でもあります。今大会では多くの学生や昨年新設のU26カテゴリーにおいて鹿屋体育大学がチーム総合優勝を果たすなど、我々主催者としては大変有意義な大会となったと思います。」
と語った。

「31年間続いてきたこれだけの大会ですから、もっと多くのテレビや新聞、自転車メディアなどに取り上げてもらいたいです」と語ったのは、北海道自転車競技連盟会長の小野盛秀氏。その情熱と心意気を知る自転車関係者は道内のみならず全国区の人望だが、筆者もあらためて小野氏が大会にかけてきた情熱の深さを感じた。
ツール・ド・北海道は、ツール・ド・フランスのようにスタート地点とゴール地点が異なるラインレースで行われる。これまでの道路事情から周回コースやサーキットなど公道でない施設を使ったレースが一般的な日本において、大自然を舞台にした魅力的なコースレイアウトを特徴としており、かなり貴重なステージレースだ。また、大会からは世界の舞台へ羽ばたいていった多くの日本人チャンピオンを輩出している。

今大会の成功を「3日間活躍した選手たち、ご協力いただいた関係者の方々、集まっていただいた観客の皆様のおかげです」と語るツール・ド・北海道大会長の山本隆幸氏(右)

「31年間続いてきたこれだけの大会ですから、より多くのテレビや新聞、自転車メディアなどに注目してもらい、もっと取り上げてもらいたい」と語る北海道自転車競技連盟会長の小野盛秀氏。その大会にかける情熱と心意気は多くの競技関係者に知られている

レース関係者と沿道の観客が触れ合い、一体となって存在するのがロードレースの魅力

ロードレースは選手、チーム関係者以外にも競技を運営する多くの関係者、そして観客が存在してこそ成り立つスケールの大きなスポーツだ。一方で、その特性ゆえ多くの費用がかかるのも現実。まだまだマイナースポーツの域を出ないサイクルロードレースを、これだけ大規模かつ長年に渡って続けることは容易ではない(野球やサッカーのように入場料収入を確保できないため、開催の経費は広告・スポンサー収入や助成金、補助金などに頼らざるを得ない。この30年間で立ち消えになった全国のレースやサイクルイベントは数多くある)。

また、ツール・ド・北海道は市民レースも第一回大会より毎年開催されており、北海道内の競技者の登竜門としての存在価値は大きい。31年の歴史のなかには、ここから育ち、北海道選抜や実業団のプロ選手へとステップアップした選手たちも数多く存在するからだ。

今年も大会に集まった多くの選手、チーム関係者、大会関係者、そしてこの素晴らしいスポーツを一目見るために沿道に足を運んでいただいた多くの観客の方々のおかげで、ほんとうに素晴らしい大会になった。そこにいる人たち一人ひとりによってステージレースというものが成り立っているのだから、現場で3日間見てきた私は、来年の32回大会もきっと素晴らしい大会になるに違いないと、今から確信している。

市民ロードレースでスタート前の選手たち。米田和美さん(左)は「フルタイムワーカーで、子育てもしながらも北海道のサイクリング発展のためにも頑張りたい」と言い、今年も優勝を重ねた

集まってくれた子供たちへファンサービスをするプロ選手たち。こうしたファンとの触れ合いがまた、今後のサイクルスポーツの発展や将来のスター選手誕生へとつながっていく

テレビ放送予定のお知らせ
ツール・ド・北海道2017
HTB(道内放送)
10月9日(月・体育の日)14:00~14:58

Text & Photo :加藤 修(Shu Kato)

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