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バーレーン・ヴィクトリアス所属のジーノ・メーダー選手が死去。スイス第5ステージの下りで落車

UCIワールドチームのバーレーン・ヴィクトリアスに所属するライダー、ジーノ・メーダー(スイス)がツール・ド・スイス第5ステージの下りで激しく落車。迅速な蘇生措置が施されたものの、搬送先の病院で亡くなった。26歳だった。

高速ダウンヒル中にバランスを保てずコース外へと投げ出されたか

大会主催者の発表によると、事故は超級山岳アルブラ峠を下っている197km地点(フィニッシュまで残り14km地点)で発生。峠の頂上を越え、駆け下りた先がフィニッシュという状況だった。

高速で走行していたとみられる状況でクラッシュしたメーダーはコース外へと投げ出され、数メートル先の崖下へ転落。医療スタッフにより現場で蘇生措置が行われ、心肺蘇生も実施されたという。

その後、ドクターヘリでスイス・クール病院へと搬送されたが、現地時間6月16日午前11時30分に死亡が確認された。

メーダーが所属するバーレーン・ヴィクトリアスも声明を出し、「チームの輝かしい光のひとつに別れを告げた」とコメント。「ジーノは並外れたアスリートであり、強い意志の持ち主であり、私たちのチームとサイクリングコミュニティ全体の重要メンバーだった。彼が持つ才能、献身性、スポーツへの情熱は、すべての人々にインスピレーションを与えた」と続けた。

©️ Getty Images

このクラッシュではマグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアーズ、アメリカ)も一緒に崖下へ転落したが、こちらはその場で立ち上がるなど意識ははっきりとしており、病院へ搬送後に脳振とうと数カ所の負傷が認められている。

両選手のクラッシュはテレビカメラを含めて目撃情報がほとんどなく、コースを走っていた関係車両が2人の状況に初めて気が付いたとされている。現在、スイス当局を中心に事故の検証が進められている。

ツール初出場に向けて準備中だった

メーダーは1997年1月4日生まれの26歳。元自転車選手の両親のもとで育ち、シクロクロスなどオフロードから頭角を表す。ジュニア時代の2014年にはロードとトラックでもスイス代表入りし、同年のヨーロッパ選手権ジュニアのオムニアムで銀メダルを獲得。翌年には、現在EFエデュケーション・イージーポストに所属するシュテファン・ビッセガーらとともにチームパシュート(団体追抜)で世界ジュニア選手権を制している。

「若手の登竜門」とされるツール・ド・ラヴニールでは、2018年にステージ2勝を挙げ個人総合3位。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)、テイメン・アレンスマン(現イネオス・グレナディアーズ、オランダ)らと好勝負を演じ、将来を約束された。

ジロ・デ・イタリア2021第6ステージで優勝 ©️ LaPresse

2019年のチーム ディメンションデータ(当時)でプロ入り。2021年からは現チームへと移り、主力ライダーとして貴重な存在に。2021年には、ジロ・デ・イタリア第6ステージで勝利し、同年のブエルタ・ア・エスパーニャでは個人総合5位に入り、ヤングライダー賞にも輝いている。

今季は当初ジロ・デ・イタリアに出場予定だったが、開幕直前に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たため出走を取りやめ。ツール・ド・フランスに目標をシフトし、最終調整の場として地元レースであるツール・ド・スイスを走っていた。

第6ステージはパレードに、翌日からレース再開へ

メーダーの死を受け、16日実施の第6ステージは急きょ追悼パレードに変更。このステージは当初、ラ・パントをスタートし、事故のあったアルブラ峠を再度上るルートが予定されていたが、同地域で永久凍土の融解に起因する岩場の崩壊が発生したため、クールからのスタートに変更となっていた。メーダーは生前、美しい氷河を守るための活動にも注力していたことから、一層悲しみを深める事態となった。

このステージの扱いについては、メーダーの遺族や大会関係者らの話し合いにより、コース最後の20kmをパレードし、追悼することで合意。スタート予定地であったクールで選手たちが集まり1分間の黙とうを捧げた後にチームごとで移動し、パレードに臨んだ。

Photo: Tour de Suisse

現時点の個人総合リーダーであるマティアス・スケルモース(トレック・セガフレード、デンマーク)を先頭に走り出したパレードは、やがてバーレーン・ヴィクトリアスの6選手に先導役が引き渡され、2台のチームカーもプロトンの前へ。沿道からの拍手を受けながら、ゆっくりとフィニッシュラインを通過。チームカーから見守ったメーダーの母親・サンドラさんが車を降りると、同じスイス人ライダーのシュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ)や世界王者のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)らが駆け寄って直接哀悼の意を伝えた。

Photo: Tour de Suisse

家庭の事情もあり、「レース会場が家族全員がそろう唯一の場」と過去に公言していたメーダー。このステージばかりは、プロトン全体がひとつになってメーダーの家族に寄り添った。

大会主催者は日本時間の早朝に新たな声明を出し、遺族の希望を酌んで第7ステージ以降レースを継続していくと発表。同ステージは184kmのコースすべてがカバーされるものの、個人総合成績に限りフィニッシュ前18.8kmに位置する3級山岳オッテンベルクの頂上までを有効にするとした。そこからフィニッシュまでは下りと平坦で構成されるが、新たな事故を避けるための措置として個人総合成績には関係させないことを決めた。同時に、17日から始まるツール・ド・スイス ウィメンの予定どおりの実施も決定している。

なお、バーレーン・ヴィクトリアスが第6ステージをもって大会から去ることも決まっている。

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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