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パリ五輪、若手育成、自転車競技界をどう導くのか?|日本代表コーチ・ギジガー特別インタビュー Vol.3

自転車トラック競技日本ナショナルチームの中距離ヘッドコーチに就任したダニエル・ギジガー氏のスペシャルインタビューを全3回にわたってお届け。
3回目となる今回は日本自転車競技界の未来についてお伺いした。

才能をもった若手選手を世界へとつなぐためには

日本には今、トラック短距離・中距離共に若く良い才能を持った選手たちがいる。彼らの強化、彼らに続く選手たちはどう育成するべきなのだろうか。
現在ワールド・ツアー・レベルにいる選手は新城幸也選手ひとり。
彼のレベルに達するには? また国内のレース界はどう変わっていくべきか?

若手育成における日本の課題は何でしょうか?

国内に多く存在する競技連盟が、協力し合うことが重要だと思う。それぞれのレース主催者がイベントのスケジュールを調整することも効果的だろう。それにより各大会のレベルは上がるし、例えばジュニアキャンプには有望な選手がみんな出席できるようになる。

我々は一致団結する必要があるのだ。競技人口がそれほど多くない日本においても高校生・学生・エリートが一堂に会することで、ハイレベルな競技会を開催することができるだろう。
それがまず我々が達成しなくてはならないゴールだ。

そして大きなロードレースの開催。これが難しいのは知っている。TOJでさえクリテリウムの連続だ。我々に必要なのはステージレース。伊豆の自然があればツール形式のステージレースができるだろう。しかしまず必要なのは見解の統一。皆が同じゴールに向かって進む認識を持つことだ。

当時の写真を若手選手に見せる市川氏とギジガー氏

そしてかつてマサ(市川雅敏)が1週間ニューカレドニアで行われたステージレースを走り、さらに欧州へと渡ったように段階を踏んで適応しなければならない。
若く未成熟な選手を一人で欧州に旅立たせるのは酷だ。彼らは数カ月もしないうちに落胆し、日本が恋しくなってしまうだろう。

まずは2~3カ月の遠征から始めて、徐々に適応していく方法を勧めたい。日本と欧州の違いを知る人から学び、翌年は少し長く滞在し、さらに適応を進める。
その中で、何が必要か? 何が重要なことなのか? を学んでいってほしい。

日本には私が予想したより多くの才能豊かな選手たちがいる。(欧州スタイルの)街の自転車クラブは多く存在しないけど、高体連というシステムがある。

私は日本には素晴らしいポテンシャルがある選手がいると信じている。
そしてこれほど多くの自転車愛好家がいるなんて素晴らしいことではないか!

パリ五輪後も日本で指揮を執る可能性はありますか?
もしくは地元スイスのビエンヌにもどって子どもたちをコーチすることを希望されますか?

御存知のとおり私はもうこの年だ。2021年の五輪後、私はスイスの連盟を離れリタイア生活に入った。
しかし、その直後ブノアから「クレイグがチームを離れ、中距離のコーチがいない。日本に来てもらえないか?」と連絡を受けた。

「私にはもう30歳の若者と同じ体力は無いよ」と答えたが、それでも彼は「体力じゃない。もしサイクリングへの情熱の火がまだ燃えているなら来てほしい」と食い下がった。
私は最終的に来日を決めた。そして今、チームパーシュートで男女共、パリ五輪に導くことにやりがいを感じている。

目下のところ私のゴールは2024パリ五輪だ。

今年9月には私の妻が来日する。彼女が日本での生活になじみ、私もここでの生活が気に入り、もっといたいと感じたら……。もしくは私が“日本でまだやるべきことがある”と情熱の火が消えなかったら……。 ジュニアにマディソンやその他の種目の走り方を教えることもできるだろう。

今日本のジュニアのトラックレースはタイム系のレースが多い。しかし、トラックは本来バンチレース(競争種目)がメインだ。いやトラック含め全てのサイクリング種目はバンチレースがメインだ。集団の中を自由に泳ぎ回り、スプリントできる。それが選手のあるべき姿だ。しかし、その強化は今のところ充分でない。もしそれらに着手できたなら。そしてレースカレンダーを整理しロードとトラックが相互に強化できたら。もっと選手は強くなるだろう。

まだその話をするには早過ぎるが、行方を見守ろう!

そして最後に言いたいこと。それはトラック中距離選手はロードを走れなければならない。五輪チャンピオンのイタリアチームを見てごらん。フィリッポ・ガンナ、ジョナタン・ミランなどトラックで活躍する選手は、一流のワールドツアーライダーでもあるだろう。短距離選手はトラックの上で作られる。でも中距離ライダーには、良いロードレースが必要なのだ。我々は国内でシミュレーションをすることはできる。しかし、もっとも良い方法は欧州に渡りそこで通用するロード選手になることだ。

五輪の予選通過、そしてあなたが少しでも長く
日本で指揮をとってくれることを願っています

ありがとう! トライしてみるよ。そして、歓迎の言葉をありがとう!

3回にわたってお伝えしたギジガー氏のインタビュー。68歳とは思えないほどエネルギッシュで若々しい。日本選手の強化。そして日本レース界の未来についても明確なビジョンを持つ彼の手腕に期待したい。

 

プロフィール紹介

ダニエル・ギジガー

自転車トラック競技日本ナショナルチーム中距離ヘッドコーチ。UCIワールド・サイクリングセンターのコーチ、スイス・ナショナルチームのコーチを歴任。スイス・チームをチーム・パシュートで東京五輪に導いた。現役時代はタイムトライアルを得意にし、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・スイスで区間優勝の経験がある。

市川雅敏

1987年に日本人初の欧州プロ(現ワールド・ツアー)として、ベルギー・ヒタチでデビュー。1990年ダニエル・ギジガー率いる、フランク・トーヨーからジロ・デ・イタリアに出場。総合50位でミラノに凱旋。完走を果たした。

 

取材&執筆:中田尚志(ピークス・コーチンググループ・ジャパン)

ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。帰国後、選手を8年間で10回全日本チャンピオンに導いた。
https://peakscoachinggroup.jp/

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PROFILE

中田尚志

中田尚志

ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。

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