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タデイ・ポガチャルが歴史的大勝 ダブルツールへ大きく前進|ジロ・デ・イタリア

ロードレース2024年シーズン最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが5月26日に3週間に及ぶ全日程を終了。最高栄誉の個人総合時間賞にはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が輝き、自身初となる大会制覇を果たした。第2ステージでマリア・ローザに袖を通してからは、ライバルに付け入る隙を与えず、逆にステージ6勝を挙げる無敵の強さ。終わってみれば、2位に総合タイム差9分56秒もの大差での圧勝だった。

© LaPresse

荒天を切り裂き山岳を突き進む

この大会の第15ステージまでの戦いぶりについては、以下の記事を参照されたい。

初のジロを戦うポガチャル、ダブルツールへ視界は良好か|ジロ・デ・イタリア

マリア・ローザ堅守のポガチャル 力強い攻めも慎重かつ冷静に第1週を終える|ジロ・デ・イタリア

ポガチャルが圧倒! ジロ・デ・イタリア2024、第10~15ステージのハイライト

第1週終了時には、ライバルに総合タイム差2分以上のアドバンテージがあることから、先に控えるツール・ド・フランスまでも見据えて力をセーブしつつ残りステージを進めることを示唆していたポガチャル。しかし、ふたを開けてみれば、自身ならびにチームとしてレースをうまくコントロールしながらも攻撃的姿勢は崩さなかった。

第3週の初日、第16ステージは当初登坂予定だったステルヴィオを回避。強い雨もあり、コースが短縮された中でのレースでは、UAEのアシスト陣が作るペースにゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)らが苦しむなか、十二分なお膳立てを受けたポガチャルが最終盤にペースアップ。懸命に食らいついていたダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ、コロンビア)、ベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンディアル、オーストラリア)を振り切ると残り700m、最後まで逃げ残っていたジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ、イタリア)をパス。

© LaPresse

ウイニングセレブレーションでは、ここまでの勝利数を指折り数えてステージ5勝目をアピール。レース後には健闘した20歳のペリツァーリにマリア・ローザカラーのアイウェアとマリアローザをプレゼントするシーンも。悪天候もなんのその、このステージを終えた時点での2位との総合タイム差は7分18秒とした。

© LaPresse

続く第17ステージでは、レース距離159kmに5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた獲得標高4000m超のハードコースを快走。最後まで逃げ続けたゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト、ドイツ)は容認したものの、最終盤での総合上位陣の争いはしっかり押さえる。トーマスを押し上げたいイネオス・グレナディアーズがペースアップを試みるも、ポガチャルは残り2kmでみずからスピードを上げてライバルを振り切る。歓喜のシュタインハウザーから1分24秒差のステージ2位とまとめ、この日も総合争いのライバルからタイムを奪うことに成功した。

© LaPresse

驚異のステージ6勝、最後の上りではファンサービスも

圧倒的勝利を締めるには、やはりその力を誇示することが一番だ。

今大会最後の山岳ステージとなった第20ステージ。前々日はスプリントで終え、前日は大逃げが容認されたレースは、この日再びの頂上決戦。

© LaPresse

2回上る1級山岳モンテ・グラッパの最後、再度のチャレンジに出たペリツァーリが逃げから独走に持ち込んだ一方で、メイン集団ではリーダーチームのUAEチームエミレーツが着々とコントロール。とりわけラファウ・マイカ(ポーランド)の牽引はアタック級の力強さで、個人総合3位を守りたいトーマスが徐々に引き離されるほど。同2位のキープを図るマルティネスらは耐えてきたが、フィニッシュまで36kmを残したタイミングでのポガチャルのアタックには誰も対応できなかった。

© LaPresse

こうなるとレースの流れは完全に“王者”のもの。ペリツァーリもパスしたポガチャルは、フィニッシュまでの長く、美しいウイニングライドへ。モンテ・グラッパを上りながら観客の声に応える“サービス”までしてみせ、その後のダウンヒルも問題なくクリア。あとはもう、フィニッシュへマリア・ローザによる勝利の行進だ。

© LaPresse

このステージだけで2位以下に2分7秒の差をつけ、総合タイム差としては2番手のマルティネスに9分56秒という驚異的な大差に。最後の1ステージは首都ローマでのパレード走行とスプリント決戦が暗黙の了解だったこともあり、第20ステージ終了段階でのポガチャルのジロ制覇が確定的となった。

© LaPresse

ツールでは“ビッグ4”そろい踏み、ジロ以上の激しい戦いへ

最終・第21ステージでは、全身バラ色に身を包みパレード走行に臨んだポガチャル。チームメートもピンクのアイウェアと、肩にマリア・ローザカラーを施したスペシャルジャージを着用し、ポガチャルの、そしてチームの勝利を誇示した。

ポイント賞のマリア・チクラミーノを2年連続で獲得したジョナサン・ミラン(リドル・トレック、イタリア)、ヤングライダー賞のマリア・ビアンカとなったアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)とも健闘を称え合いながら、ジロ2024の終幕を祝った。

終わってみれば、前述の総合タイムでの大差に加え、ステージ6勝。驚きのジロ出場宣言から数カ月、例年よりもレース出場数を絞り、グランツールにフォーカスするスケジューリングでまずは1つ目のタイトルを手にした。

© LaPresse

その走りは往年の名ライダー、ベルナール・イノー氏にしても評価の高いものだったという。1982年と1985年にジロとツールの「ダブルツール」を果たしているイノー氏の目には、勝利に貪欲なポガチャルの走りは自身の現役当時に重なるものがあると映ったよう。「彼は生まれながらのレーサーだ」と述べ、今季の調整方法から見てもダブルツールは可能だとしている。

© LaPresse

次なる目標は、3年ぶりのツール制覇。それは、ジロとのグランツール2冠「ダブルツール」達成を意味する。

4月に開催されたイツリア・バスクカントリーでの落車負傷で戦線を離脱しているヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)がトレーニングを再開し、ツールに向け本格的に調整を開始。同レースで負傷していたレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)とプリモシュ・ログリッチ(ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)は、ツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで直接対決が見込まれる。

これら状況を喜び、ツールでの対戦を待ちわびているポガチャル。自身は数日間休息をとったのちに、ツールに向けて再始動。高地トレーニングでフィジカル面を整えていくという。

ツール本番ではこの“ビッグ4”がそろい、ジロを超える激しい戦いとなる。いま一番勢いのあるポガチャルがそのまま突き進むのか、はたまたツール一本に絞って調整を進めている他の3人のうちの誰かが上を行くのか。いや、新たな刺客も…。ジロが終わってもなお、ロードレースシーンには尽きない楽しみが待っているのである。

© LaPresse

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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