アップルの最新TV CFに感じる、1984ジョブズに通じるDNA
FUNQ
- 2019年04月02日
『オープン』なインターネットが、僕らを監視する
古くからのネットユーザーは、『オープン』がインターネットの重要なテーマだったことをご記憶だろう。
『オープン』『シェア』『フリー』というラブ&ピースなキーワードが、世界にインターネット、そしてスマートフォンが普及していく際に重要だったことは確かだと思う。
しかし、それが加速度的に進化した結果、我々の個人的な情報もいつのまにか『オープン』になっており、その個人情報を巨大なIT企業が収集し、それを元に広告ビジネスを行い、大きな収益を得るようになった。
我々メディアのビジネスもその一端にいるので、自戒も込めての発言になってしまうが、情報過多な現代の広告ビジネスはいかに目指すターゲット顧客を絞ってメッセージを伝えるかがポイントになっており、その最強の蛇口を持っているのが、GoogleやFacebookといった巨大ネット企業、SNS企業ということになる。
GAFAではなく、GAFとアップルというアップルの主張
そこに敢然と反旗を翻しているのが、アップルということになる。
以前、アップルの個人情報の扱いについて記事を書いたが、そこにも書いたように最近のアップルは、『個人情報をどう扱うか?』を、他社との最大の違いとして、メッセージを発信し続けている。
あなたの個人情報は誰のもの? GAFとアップル。考え方の違い
https://www.ei-publishing.co.jp/articles/detail/flick-481445/
それは、アップルが善良だからか、ビジネス展開として有利だからそうしているのかは、判断するのは難しいが、もはやアップル製品で閉じた使い方をしない限り、あなたの行動データのすべては広告ビジネスに使われ、GAF企業の富を産み出す元となっているというのは確かなことだ。
SNSに書いた文面も、ネットショップで買った商品の履歴も、日々歩いたルートも、入ったコンビニも、そこで何を買ったかも、Gメールに何を書いたかも、どんな旅程を組んだかも、広告ビジネス上のデータ資産として活用されている。これは、あなたの資産ではないのだろうか?
GAFAの争いは日本から見ると遠い世界の話に思えることもあって、日本ではまだそれほどの関心事にはなっていないが、いずれ大きな論点になるだろう。
1984のCF以来脈々と続く、アップルの反骨心
そんな中、アップルがプライバシー問題についてTVCFをスタートした。
本国版と違って、日本語の看板の写真が入っているのと(シュレッダーされる写真も一見日本語に見えるが、これは中国語)、キーメッセージが日本語になっているのが違い。しかし、これ、ちょっとわかりにくいメッセージで、ともすると前提の知識がない人が見ると、アップルが閉鎖的なのか?と受け取ってしまうかもしれない。
アップルが伝えたいのは「あなたのプライバシーは、あなたのものですよ」ということだ。
アップル製品を使っていてもFacebookやGメールを使っていれば、広告ビジネスから逃れることは難しいが、少なくとも位置情報や、Apple Payを使っての購買情報、IMEによる入力情報、写真、Apple Watchから得られる運動量や心拍などの活動情報などは、あなたの手元から出て行くことはない。iPhoneのセキュリティチップによって暗号化されて守られる。
「プライバシーがビジネスで使われることが、実際に、どのぐらいの不利益なのだ?」と言ってしまえばそれまでだが、iPhoneを使っていれば、セキュアな部分を持つことができる。
「誰かに、利用されているの、イヤでしょ?」という反骨心に満ちたメッセージは、古くは1984年のスーパーボールで流されたMacintoshの最初のTV CF『1984』に通底している。主人公が投げたハンマーは、ビッグブルーを打ち倒し、多くの人を束縛から救う。
35年が経った今でも、アップルはハンマーを投げ続けているというわけだ。投げる相手は変わったかもしれないが。
つまりアップルの反体制的な主張は、何も今始まったワケでない。もしかしたら、ヒッピー文化にルーツを持つジョブズが創業したアップルという会社に、脈々と伝わるDNAなのかもしれない。
(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年4月号 Vol.90』)
(村上タクタ)
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