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映画『キングダム』撮影現場に見る、佐藤組のiPad超活用術

GW大作を向こうに回して大ヒット中の『キングダム』

映画『キングダム』は、もうご覧になっただろうか?

その壮大なスケールから『実写映画化は不可能』と言われた原泰久氏のベストセラー漫画を実写映画化した『キングダム』はゴールデンウィーク直前に公開され、アベンジャース・エンドゲーム、名探偵コナンを向こうに回して大ヒットを続けている。

原作漫画『キングダム』は紀元前3世紀の古代中国、春秋戦国期を舞台にする物語。後に秦の始皇帝になる少年時代の『秦王政』と、戦災孤児『信』の出会い、そこから戦国武将として成り上がり、中国を統一していく様を描く壮大なドラマで、現在54巻までが発行され、累計3800万部超が売れている大ヒット作だ。

映画は、このうち5巻までのストーリー、信と政の出会いと、王宮奪還までを描く。

メガホンを取ったのは、『GANTZ』『図書館戦争』『アイアムヒーロー』『いぬやしき』『BLEACH 死神代行篇』などで知られる佐藤信介監督。

原作ファンには「漫画のイメージが壊れたら……」と不安がる人も多いようだが、本作にそんな心配は無用だと思う。中国ロケまでもを敢行し、壮大な原作のイメージを巧みにリアルな映像として再現していることに感嘆させられる。

配役も素晴らしい。強大な武将『王騎』(おうき)を大沢たかお、原始的な仮面の下に美貌が隠されている山の民の王『楊端和』(ようたんわ)を長澤まさみ、原住民のようなフクロウのかぶり物の中にかわいい女の子が入っている天才軍師『河了貂』(かりょうてん)を橋本環奈……意外に思う部分もあるのだが、この配役が見事にマッチしているのだ。個人的には忠実な将軍『昌文君』(しょうぶんくん)を高嶋政宏、実直な武将『壁』(へき)を満島真之介という配役にも感心した。原作のイメージを上手くふくらませて映像化していると思う。

『信』の山﨑賢人、『嬴政/漂』(えいせい・ひょう)の吉沢亮に関しては、原作のイメージに比してイケメンすぎる気もするが……その熱演ぶりには引き込まれるものがあった。

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中国ロケ、日本各地でのロケ、CGの組合せ

古代中国、どこまでも広がる荒れ野、巨大な城、何万という軍勢、それを率いる『大将軍』を映像化するところにこの映画のひとつの難しさがある。

紀元前3世紀の中国といえば、清代の西太后の物語や、日本でいえば江戸時代の時代劇のように多くの資料が残っているわけではない。写真はもちろんないし、文献も少ない。それだけに、少しファンタジックな雰囲気というか、伝説の御代であるイメージもある。

そんな、『キングダム』の世界観を実写で。しかも、ハリウッドのような莫大な予算が使えるわけではない(失礼)日本映画で、という難しいチャレンジを実現できるところが今の佐藤監督の凄さだ。

壮大な中国のスケールを中国浙江省でロケをすることと、CGを組み合わせることで再現している。

実際に撮影が行われた中国浙江省の象山影視城場所とはこういう場所だが、映画の中では……成蟜(せいきょう)が謁見する城壁の下に大軍勢が居並ぶ、下の写真のような光景になるわけだ。

iPad Proのクラウド同期が大活躍

壮大なシナリオ、中国浙江省に加えて日本国内でも全国各地(静岡・千葉・熊本・宮崎・栃木)で撮影し、俳優、をはじめとした、多くのスタッフが関わり、プランニング、撮影、編集……と進んで行く大プロジェクトを指揮するために、佐藤監督が選んだのがiPad Proだ。

たとえば、台本ひとつとっても、紙の台本よりiPadを使ったほうが便利。

以前なら脚本家と監督が作って最終確認したものを紙に印刷して全スタッフに渡すというのが普通だった。

しかし、撮影の進行に合わせて、より良い演出を求めてシーンやセリフが変更されることがある。そうなると、全員にまた訂正版を配ったり、関連スタッフを集めて、修正を伝えなければならない。聞き損なったスタッフがいると、バージョンがズレてしまったりするし、話が伝わらなかった人が全体の動きからズレてしまったりする。

台本の管理にiPadとクラウドサービスを使えば、関わるスタッフのiPadに自動的に修正を反映する……ということも可能。

佐藤組では、台本などのドキュメントの共有に加え、MetaMoJiのGEMBA Noteを使って、絵コンテの共有も行なっているという。

GEMBA Noteは、クラウド経由でリアルタイムで同期するノートアプリで、手書き文字のみならず、手書き文字をテキストデータに変換したりもできる。また、写真や、動画などを埋め込むこともできる。

絵コンテなどの共有に最適だ。

また、アイデア段階の打ち合わせなどにもMetaMoJi のGEMBA Noteは便利に使える。監督の描いたメモを即座に共有できるのだ。

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台本も絵コンテもiPad Proで管理

絵コンテについても同様。

監督が、iPad上の絵コンテへの修正を指示すると、GEMBA Noteにそれが書き込まれ、スタッフが同じ絵コンテに基づいて制作活動を行うことができる。

下は山の民の城で、楊端和に信や河了貂、昌文君らが出会うシーン。絵コンテに、カメラワークや、セリフなどの指示が書き込まれている。

これにもMetaMoJi GEMBA Noteが使われている。絵も、テキストデータも、手書き文字もシェアできるGEMBA Noteのメリットがとても活きる使い方だ。

iPadはいろんな場面で役に立つ。カメラマンにアングルを提案する場合にも、iPad Proのカメラで簡単に撮影して、ニュアンスを伝えたりできる。場合によっては、簡単に編集して、カット割りのニュアンスを検討したりさえするという。

「iPadにカメラが付いてるからこそ、こういう使い方もできるんです」と佐藤監督。即座に撮影して、同じ端末内で、動画を編集してシェアまでできる。iPadならではの使い方だ。

紙と鉛筆より、はるかに多彩なことができ、遠隔地を含めて共有できるiPad Pro。オフィスワークだけでなく、これまであまりデジタル化が進んでない『現場主義』な場所でこそ、使いこなせば大きな効果を発揮するといえる。

佐藤監督は初代iPadから愛用

佐藤信介監督は、もともとデジタル化に興味があり、初代のiPadが発売された時から、すぐに購入して活用されたという。

『キングダム』撮影時の写真を見ると、旧モデルのiPad Pro 12.9インチをお使いになっているが、現在では最新の昨秋発売された、Face IDタイプのiPad Pro 12.9インチをお使いだ。

佐藤組のiPadなどの機材導入をサポートするのが、Picture Elementの大屋哲男さん(写真左)。

佐藤監督の指示を、即座にiPadに書き込み、全体に伝達したり絵コンテの整合性を取ったりするのが田口良子さん(写真右)。田口さんは、撮影したカットの情報などを記録するスクリプターというお仕事をされていて、その流れで佐藤監督と一緒にiPadを使って絵コンテの整合性を取る仕事も受け持つようになったとのこと。田口さんはiPad Proの10.5インチを使う。

映画に関わる方はフリーランスとして関わる方が多く、場合によっては複数のプロジェクトに関わる場合もある。そういう場合、それぞれの情報の機密性を保つため、複数のiPadを使い分けることが多いという(プロジェクトで必要な数のiPadをPicture Elementが準備して配布するというような使い方をするそうだ)。

上の写真は、BLEACHの端末デザインアイデア。写真を取り込んだり、絵を描いたり、自在な表現が可能なiPadならではの表現力が活用されている。

BLEACH(2018)は久保帯人原作のコミックスを佐藤信介監督が福士蒼汰主演で実写映画化した作品。現代を舞台に悪霊が飛び回る映像を、実写とCGで見事に映像化している。

©TITE KUBO/SHUEISHA ©2018 “BLEACH” FILM PARTNERS

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編集した動画のレビューを遠隔で行いつつ、秘密情報の流出を防ぐ

また、従来の映画製作の方法論では、もうひとつ困ることがあった。それは、撮影した映像を編集したものをレビューする方法だ。

撮影現場で取ったままのものから、CGで作った映像、CGと実写映像を組合せて特殊効果を施したもの……など、映画作りではさまざまな段階の映像を、スタッフが見たり、監督が最終確認したりする必要がある。

昔は、編集された映像を、試写室に集まって観たそうだ。しかし、スタッフ全員が集まったり、忙しい監督が試写室に出向いたりする時間が惜しい。

その後、DVDに焼いて、それぞれに送るという方法も使われた。しかし、それでは共有するのに時間もかかるし、それぞれの人が見ている機材の違いによって、色設定やスケール感などが違って見えるという問題もあった。また、出演者や末端のスタッフの手元にDVDが残ってしまうと流出する危険もあった。Dropboxで映像を共有したりしたこともあったが、それにも同様の問題がある。

現在、Picture Elementが提供している『PE-RUSH!』を使うと、限られた人に対して映像を共有できる。

たとえば、その映像を編集した人、監督、その場面を演じている俳優のiPad Proに、PE-RUSH!経由で映像を配信して、確認が終わったらリモートで端末から動画データを消去するということもできる。

「PE-RUSHのおかげで、いつでも映像を確認できるようになりました。送ってもらったものを見て、修正の指示を出すというのが、どこにいても同じiPad Proのクオリティで共有しながら行えます。次のシーンの撮影現場にいても、前の場面の編集されたものの確認が可能なので、とても効率がよくなりました」と佐藤監督。

全員がそれぞれの同じiPad Proの画面で見ているので、カラーマネージメントの問題も発生しない。

「最近は映画も大スクリーンで観るだけでなく、家庭のテレビでDVDで観たり、iPadで観たりするようなこともあるかと思います。そういう小さな画面で観るとどうなるのか、撮影時からiPadで確認したりもします。先日、喫茶店でイヤフォンをして、iPadで編集中の自分の映画を、チェックのために観てて、思わず没入して泣いてしまったことがあります。周りの人は気づかなかったとは思いますが(笑)」と佐藤監督。

デジタル化の進んでない『現場』こそiPadで激変する

撮影現場の佐藤監督の写真を見ると、監督はいつもiPad Proを片手に指示を出されている。

佐藤監督にとって、iPad Proが画用紙であり、メモ帳であり、台本であり、絵コンテであり、スケジュール帳であり、スタッフと連絡を取る通信機であり、試写室なのだ。

本件については、アップルのサイトにも記事が上がっている。

ピクチャーエレメントと佐藤組のiPadを活用した映画制作ワークフローの変革
https://www.apple.com/jp/business/success-stories/

『キングダム』は、原作の世界観を見事に映像化した素晴らしい映画だった。だが、54巻で現在進行中の原作のうち、たった5巻までを映像化したに過ぎない。

このあと信や、政、河了貂は、どんな冒険をするのか? 王騎は信に何を見せるのか? 楊端和や羌瘣は、どんな戦場を駆けるのか?

原作キングダムの物語は、もっともっと広がっている。この大ヒットなら続編も期待できそうだ。佐藤監督のiPadには、すでに、続編もプロットが描かれているのだろうか? 続編の登場を楽しみに待ちたい。

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(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年6月号 Vol.92』)

(村上タクタ)

 

 

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