App Store初のマンガを描いたイラストレーターは、サンパウロ出身、映像育ち

絵の力を信じる絵師のマンガ

この夏のキャンペーンでアップルのApp Storeに『終わらない夜に』というマンガが掲載されたのをご存じだろうか?

カラーが美しい縦スクロールのマンガで、空も大地も広い独特の空気感。個性あるかわいらしいキャラクター。光と影。そして最後に訪れる高い青い空と、暖かい光。

App Storeレビュー『終わらない夜に』
https://apps.apple.com/jp/story/id1470901580

『人々の出す熱で北の動物たちが住み処を追われていることを知り、偉大な絵描きが世界を冷やすために世界を夜で塗り潰した』という物語も、短いながら考えさせられるストーリーだ。

独特の作風のマンガを描いたのは加藤オズワルドさん。

普段は映像、ゲーム関連の、絵コンテ、イメージボードなどを描くとともに、Pixivなどで活動しているイラストレーターだ。作品は、iPad ProとApple Pencilで描いているという。

描き方と独特の作風について取材した。

アプリはProcreateを使用

使用しているのは、iPad Proの第3世代、12.9インチ。使っているアプリはProcreate。Apple Pencilに対応した多くのイラストレーターが使うアプリだ。

絵の全体の構図だけは、小さな紙に手描きする。それをスキャンして取り込んだものを、iPad Proで小さく描く。小さく描くことで構図などを意識するのだそうだ。

その下書きを拡大し、別のレイヤーで全体の構図や密度を再検討。そして、納得した構図の上に色を塗っていく。描いてらっしゃるのを見て意外だったのは、あまり拡大/縮小は使われないということ。全面表示したまま細かい部分もチョコチョコと描いていく。

「拡大すると全体のバランスが見えなくなりますから」と加藤さん。

ブラジルのサンパウロ生まれ、映像育ち

加藤さんはブラジルのサンパウロ生まれ、サンパウロ育ち。

日本から送られてくる、少年ジャンプで、ドラゴンボールや、ドラえもん、聖闘士星矢、北斗の拳を読んで育った。

ブラジルには日本語で学べる高校がなかったから、日本に居を移し、単身日本の寮のある高校に通った。マンガ学科のある大学を受けたが落ち、映像学科がある大学に入った。これが新しい道を開いた。

映像撮影の基礎を学び、コマ撮り映画を撮りたいと思いゼミを探したら、とある研究室でまだ当時登場したばかりだったデジカメでコマ撮りする研究室があった。デジタル表現との出会いである。

ゲームが好きだったから、3D表現にも興味があった。時代的には、CGならアミーガでライトウェーブ、デラックスペイントという時代だったが、学校には高価なSGIのワークステーションがあり、ソフトイマージュを使うこともできた。

その頃から始まるインターネットの世界には、カットイラストや画像処理の仕事がいっぱいあった。映像の業界には、絵を描ける人が少なかったから、絵コンテを描いたり、イメージボードを描いたリという仕事も数多く依頼された。

また、ゲーム業界からの依頼もあった。絵を描くことが好きな、ブラジルから来た少年は、日本で映像やCGと出会うことで、多くのクライアントワークをこなすイラストレーターとなったのだ。

まず、水平線を一本

独特の画風について話を聞いた。

「僕は、絵を描きはじめる時に、かならず一本水平線を引くのですが、多くの人はかならずしもそうではないのですよね」と加藤さん。地平線があり、広い空と広い大地がある構図と世界観は、ブラジルで育ったからこそなのかもしれない。

大学では映像学科を専攻したというのも納得だ。オズワルドさんの絵の構図は、絵画的の基本フォーマットには添っておらず、まるで映画の一瞬を切り取ったようだ。いわゆる絵画の構図感ではない。まるで移動してきた途中の、たまたまそこにあった一瞬のようんだから、動きや空間が感じられる。

光の当り方も映画のライティングのようだ。光源があり、明確な光と影がある。トンコハウスの堤大介さんがPIXAR時代に担当していた「カラースクリプト」のように、ストーリーに基づいたその場面のライティングがある。

影に、青味や補色が入るのは印象派表現のようだが、光が当ったところや、そこに広がる光芒に暖色を使う表現が特徴的だ。これも映画的な表現だが、オズワルドさんの作品をとても印象的にしている部分でもある。

個人作品はTwitter( https://twitter.com/ozoztv )やPixiv( https://www.pixiv.net/member.php?id=550944 )でも発表しており、作品集はコミティア(イベント)で販売中。通販や電子版はやっていないのが残念だが、紙の冊子を手渡しで買うところに価値があるのかもしれない。ゲームデザインなどにも興味があるとのこと。これからの活躍が楽しみだ。

出典

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PROFILE

村上 タクタ

flick!編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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