「プライバシー情報保護はジョブズから受け継がれたアップルの背骨」とティム・クック

アップルはますます我々のプライバシー情報を強固に護ろうとしている

iOS 13にアップデートした人は、頻繁にプライバシー情報に関してアラートが出ることにお気付きかと思う。

たとえば、それぞれのアプリに関して位置情報について『Appの使用中は許可』するのか『1度だけ許可』するのか、それとも『許可しない』のか。これまでは位置情報の使用を、設定で許可したアプリについては、ずっと無制限に使用が許可されていたが、iOS 13からは機をみてiPhone自体がユーザーに質問してくるようになった。

また、位置情報に関しても『このアプリが最近これだけ位置情報を使ってますよ! 大丈夫ですか?』と聞いてくれるようになった。アラートをみてみると「あれ? 別にこのアプリ、位置情報要らなくない?」と思うようなアプリも位置情報を取得しており、不要なものは位置情報取得をオフにするようになった。

今朝(11月7日)未明、アップルはプライバシー情報に関するページを大きく更新した。

アップルは、GAFAの他の3企業……つまり、Google、Facebook、Amazonとプライバシーに関して大きく立ち位置が違うことをアピールし続けており、今回のサイトの更新もその一環。

特に日本ではプライバシー情報を巨大企業が自由に取り扱うことに関して無頓着な人が多いが、Googleの検索や、地図、さまざまなウェブサービス、そしてFacebookの豊富なサービスを無料で使えるのは、彼らが我々の個人情報を使ってビジネスしているからだ。我々に無料でサービスを提供した上で、彼らが世界でも有数な高収益を上げることができるのは、我々の個人情報が、それだけ価値のある情報として広告的側面では売れるからだ。

我々が見たサイト、買ったもの、趣味志向は、購買者のデータとしてサイト上を追跡され、高値で販売され、その結果として、我々個人個人にターゲティングされた広告が表示されるというわけである。

アップルは、その権利を我々の元にとり戻そうという。ひとつには、それが製品を売ることをビジネスの根幹にしているアップルが、GAFAの他の3企業に対して戦えるポイントだということもあるだろう。しかし、それだけではない。

プライバシー  – Apple (日本)
https://www.apple.com/jp/privacy/

 

アップルがサイトで説明している7つのテーマ

ユニークなアニメーションとともにプライバシーについて説明してくれる上記のサイトをぜひご覧になってみて欲しい。アップルは、7つのテーマに基づいて、同社のプライバシーポリシーについて語っている。

まずは、Safariは追跡するタイプのインターネット広告から我々を護ってくれる。ウェブに表示される広告の一部はブラウザの構成や、インストールされているフォントやプラグインなどの特性に基づいて広告を表示できるように『フィンガープリント』を作成し、それを手がかりに追跡型広告を表示したりしているが、Safariはそのフィンガープリントを作成できないようにする機能を追加した。

アップルのマップは、我々がどこに行くのか誰にも……アップルにさえ……知られずに目的地までのガイドを行ってくれている。我々の現在位置や検索した場所とその間のルートは分解され、端末を持っている人しか分からないカタチでルートを検索し、我々に提示してくれる。

写真アプリは写っている人の情報を端末から出さずに顔や場所を認識することができる。

メッセージは暗号化された状態で送信されるので、仮に途中で通信を搾取しても解読することはできない。

Siriも、我々の質問と我々の身元とヒモ付けないまま情報を検索し、解答する。

ウォレットやApple Payでの購入履歴は他に企業にとっては非常に価値のある情報だが、アップルはそれを保存、販売、使用することはない。クレジットカード番号や、プリペイド番号についてもアップルが保有したり、販売店と共有したりすることはない。

最高にプライベートな情報であるヘルスケアアプリの情報については、端末内のセキュリティチップで暗号化され、Touch IDやFace IDなどで認証されない限りアクセスできない。

ハードもソフトも作っているから、完全な安全性を提供できる

これらの暗号化をアップルが適切に行える理由のひとつは、アップルがハードウェアも、ソフトウェアも作っている企業だから……ということにある。

最近のiPhoneにも、Macにもセキュリティチップがあり、Touch IDやFace IDでの生体認証(もしくはパスコードやパスワード)をなしにアクセスすることはできなくなっている。たとえば、最新のMacではSSDを取り出して他のデバイスに直接接続したりしても情報を読み出すことはできない。指紋認証を行うT2セキュリティチップが、Macのストレージに保存するすべてのデータについて暗号化してしまうのだ。

これはソフトウェアもハードウェアも作るアップルにしかできないプライバシー保護の方法論だ。

特に、ヘルスケア情報やお金にまつわる情報を扱う部分は、安全性の高い設計となっている。

新たに設けられた『Sign in with Apple』も、個人の情報を売り渡さなくてもさまざまなウェブサービスを利用したり、ものを購入したりできるようにするための方法論だ。

写真をシェアしたり、投稿したりする時にも、自分のプライバシーを適切に扱うことができる。写真をシェアする時の画面で『オプション』を選択すると、その写真に位置情報を残すか、削除するかを選択することができるようになっている。

その他にも、ハードウエアからソフトウェアまで、あらゆるシーンで個人情報を適切に扱うように工夫が施されている。APIを呼ぶ時にどの情報までは利用できて、どこから規制されるのか? などの細かい決まりは、『Safari』『写真』『位置情報サービス』『Sign in with Apple』『Face ID』の5つの白書にまとめられて提供されている(英語版のみ)。

プライバシー情報の保護は、ジョブズの思い、アップルのDNA

アップルがプライバシー情報について厳格なのは、GAFAの他の3社と戦うための方便なのだろうか? いや、そうではないようだ。

現在、ヨーロッパのGDPRをはじめ世界各国でプライバシー情報の保護を求める声が上がっている。それに対する対応なのだろうか?

いや、アップルのプライバシー情報の保護はそんなに付け焼き刃ではない。

プライバシーを保護する考えは故スティーブ・ジョブズの思いから始まっている。

「ユーザーは自分のデータがどう収集され、活用されてるかについて知る権利がある」とスティーブ・ジョブズはティム・クックに語ったという。決して、国や大きな組織に対して従順ではなく、反骨精神にあふれたスティーブ・ジョブズは、自分のプライバシー情報を、国や大企業に委ねるべきではないと主張した。

現在の香港の状勢を考えると、国家でさえもプライバシー情報を管理するべきではない。プライバシー情報は文字通り個人が所有すべき情報なのだ。

「プライバシー保護はアップルにとって背骨のような哲学」とティム・クックは語る。

アップルにとってのプライバシー保護は、最近になって考えはじめたテーマではなく、ジョブズからティム・クックへと受け継がれた根本的なDNAなのである。

(村上タクタ)

 

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村上 タクタ

flick!編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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