なぜAppleだけが、こんなに夢見がちなのか? 2030年までに炭素中立を約束
- 2020年07月23日
企業活動でCO2を増加させない
2020年7月21日のプレスリリースで、Appleはサプライチェーンの100%カーボンニュートラルを2030年までに達成すると発表した。
Apple、2030年までに
サプライチェーンの 100%
カーボンニュートラル達成を約束
コロナ禍で世間が騒然としてても、遠くの目標を見失わないところが実にAppleらしい。
COVID-19はワクチンや治療薬ができて、多くの人が抗体を持つようになればいつかは終息するが、その間にも大命題である地球の温暖化は進んで行くのである。
Appleはすでに現時点でもグローバルな企業運営においてカーボンニュートラルを達成しているが、今回設定された新たな目標では、販売されるすべてのデバイスについても2030年(あと10年後!)までに、気候への影響をネットゼロにすることを目指すという。
この取り組みにために、Appleは支援組織を設立し、Appleのサプライヤーが環境への負荷を減らすための投資に協力している。なんとその予算規模は1億ドル規模だという。なんともスケールの大きな話だ。
大きな利益を挙げているからこそできることだが、その利益を自らの活動が地球にダメージを与えないようにするために使うなんて、そんな企業が他にあるだろうか?
希土類やアルミニウムの再生、電力プロジェクト、自然保護への投資
Appleがどんなアクションを取るのかの詳細については、上記リンクからプレスリリースをお読みいただきたい。
いくつか例を挙げると、昨年発売されたすべてのiPhone、iPad、Mac、Apple WatchにはTaptic Engineで使われた100%リサイクルの希土類元素を含め、さまざまな再生材料が使われている。MacBook Airなどのボディは再生アルミニウムで作られている。また、サプライヤーと協力して世界ではじめて炭素を含まないアルミニウムの製錬プロセスさえ実現した。この製錬プロセスでは、なんと酸素が放出されるという。
アリゾナ、オレゴン、イリノイの各州の電力プロジェクトでAppleにもたらされた再生可能エネルギーは1ギガワットを越えた。またサプライヤーが再生エネルギーに転換することを約束した電力消費は約8ギガワット分に相当するという。
また、この日、森林と自然生態系の回復と保護に向けて投資する低炭素化ソリューションにためのファンドについて発表した。Conservation International と協力して、ケニアの低質化したサバンナの復旧や、コロンビアのマングローブの生態系の保護のようなプロジェクトにも投資する。さらに、The Conservation Fund、World Wildlife Fund、Conservation Internationalと協力して、100万エーカー以上の森林管理や、中国、米国、コロンビア、ケニヤにおける自然気候ソリューションの保護·向上に取り組んでいるという。
You may say He is dreamer
あまりにも夢見がちかもしれない。企業の存在理由が利益の追求だとすれば、Appleは何をやっているのだろう? 僕らだって日々の生活でCO2を排出するし、それはあるていど仕方のないことだという諦観がある。
Appleにとっては、持続可能性を追求するということが長い目で見て、世界の、そしてAppleの利益になるという判断があるのだろう。
しかし、それを実行に移せるのは、今のCEOであるティム・クックが、創業者である故スティーブ・ジョブズの夢見がちな理想を追い続けているからなのではないだろうか?
ジョブズが世を去った後に「誰もジョブズの代わりにはなれないから、Appleは凋落する」という人は多かった。「ジョブズが生きていたら……」みたいなことを言う人も多かった。
しかし、ティム・クックとそのチームは、ジョブズにもできないカタチで、ジョブズが目指した世界を実現してきたと思う。
ヒッピー文化の影響を受け、ただひたすらに夢見がちで、理想家だったスティーブ・ジョブズの想いを、さらに現実的なプロジェクトとして実行して行くティム・クック率いるApple経営陣の力量、そして理想の高さには感服するしかない。
Apple製品を使うことで、僕らもそのムーブメントを支援するできるのだ。He is not the only one……なのである。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。