飛行して急行後、帆走して帰着するドローン。エバーブルーテクノロジー『Type-P』
- 2021年01月27日
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帆走する飛行艇には、海と空のふたつのロマンが詰まっている
『風力×テクノロジー』で、これまでにないエコで、高効率で、豊かな未来を想像する『エバーブルーテクノロジーズ』が、またユニークなドローンを開発した。
こんどのヨットはなんと空を飛ぶのだ。
風という無尽蔵のエネルギーをテクノロジーで味方につける
そもそも、『風力×テクノロジー』はまだ十分に活用されいない分野。
帆船は風をエネルギーとするため、地球温暖化に対して非常に有効な策となり得るはずだが、経験と勘での操船は何度が高く、非常に多くのマンパワーを必要とした。
この『帆走』を、GPSやジャイロ、通信などを活かして自動化しようというのがエバーブルーテクノロジーズの主題だ。
たとえば、巨大な貨物船やタンカーが、自動化された帆走で貨物を運べば、これまで消費されていた膨大な重油が不要になり、CO2の発生は大きく削減される。また、自動操縦された小型の帆船が沿岸部を自動航行すれば、測量や調査に非常に大きく役に立つ。
エバーブルーテクノロジーはすでに、2019年に全長1mクラスのRCヨットを開発し自動操縦実験を開始、さらに運用化に向け、2020年には2mクラスの実証機を開発、実証実験を進めている。
飛行も帆走も自動操縦するドローン
今回開発された『Type-P』は、飛行機とヨットを組み合わせた不思議なドローン。
桟橋など陸上から、手投げにて離陸した後、約10分飛行。その後、海面に着水。そして飛行時には収納してあったセールを展開し、風力だけで桟橋に着岸というテストに成功したという。
機体本体は全長1m、翼長70cmぐらいの水上機。
動力は、モーターで、垂直尾翼の上にプロペラを持つ。ここにあれば離着水の時にプロペラが水に接触して駆動力を食われることはない。フロートを兼ねた胴体の左右にデルタ翼風の翼を持つが、垂直尾翼の上に水平尾翼を持つので、エレボン的コントロールではなく、主翼にエルロン、水平尾翼にエレベータを持つオーソドックスな操作形態のようだ。
機体の素材はEPO(強度のあるスチロールの一種)で、800gぐらいの機体重量とのこと。動力については、おそらくこのぐらいのサイズの機体なら、40Wぐらいの出力のESCとモーター、3.7W×3=11.1Vの2000mAhぐらいのバッテリーで飛ぶだろう。
操縦はオープンソースUVAプラットフォームである『Ardupilot』を利用して飛び、飛行時はarduplane、帆走時はArduRoverのsailオプションを使って自動操縦でコントロールされるという。
現場に飛行して急行、ゆっくり帆走して帰ってくる
飛行時は時速100km/hぐらいは出るので、短時間に目的地に到達し、そこからゆっくりと帰ってくることが可能。
たとえば、河川やダムの堆積物調査などでも、河岸に木々が生い茂るような状況でもハンドランチで離陸し、現場到達後は調査後ゆっくり帰り、下流の回収しやすい場所で回収するというようなことが可能。
また、従来のマルチコプター型ドローンでは飛行時間が10〜20分と限られており速度も高くなかったのに対し、本機は時速100km/hを越える移動性能と、飛行用のバッテリーが尽きた後も帆走して帰着できるので、広い範囲の調査、捜索などが可能となる。
本機だけでなく、帆走という太古からあるテクニックをテクノロジーで再発明したエバーブルーテクノロジーからは、ユニークなアイデアが次々と登場している。
(エバーブルーテクノロジー主宰の野間恒毅さん)
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。