すべての移動でマイルが貯る。『Miles(マイルズ)』シリコンバレーから日本上陸!
- 2021年10月22日
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USで2年半前に始まったMilesが日本上陸! もちろん、日本語対応
すべての移動でマイルが貯る、スマホ連動のウェブサービス『Miles』の日本でのサービス展開が始まり、発表会が行われた。
Miles——すべての移動に、マイルを
https://www.getmiles.com/jp
MilesはScrum Venturesが支援するシリコンバレーの企業で、ジガー・シャー氏が創業した企業で、日本ではソニーのマーケティング担当から、Uber日本法人社長、WeWorkのGMなどの経歴を積み、現在Scrum Studioの代表を務める高橋正巳氏が代表取締役CEOを担う会社。
ジガー・シャー氏の参加は、現在の状況を鑑みオンラインでの参加となったが、彼は南カリフォルニア大学(USC)でコンピュータサイエンスの修士号を取得し、シスコで7億5000万ドル規模の法人向けビジネスをリードした経験を持つ俊英とのこと。
ちなみに、シャー氏は、日本のドラッグストアに行った時に、さまざまなポイントカードがあるかどうか聞かれて、日本人のロイヤリティプログラムに対する意識の高さを体感して、USの次にサービス展開する国に日本を選んだという。普通はアプリの改修などが少なくて済む英語圏の国が選ばれるのに珍しいことだ。もちろん、Scrum Venturesを経由してのJR東日本や、あいおいニッセイ同和損保、日本航空などとの関係性があったことも背景としてある。
Milesは、2019年にUSでローンチし、この2年半で140万人のユーザーが登録しているとのこと。すでにユーザーが50億マイルを利用し、1100万回も特典との交換が行われている。
時期的にローンチしてすぐにCOVID-19のパンデミックと重なり、事業には大きな影響があったとのこと。Milesのデータによると、航空機の利用は75%減少し、自動車、ライドシェア、公共交通機関の利用は50%したという。そこで、ロックダウン期間中には、自宅待機している人にボーナスマイルを付与するなど、新たな取り組みも行ったそうだ。
エコな移動手段ほどマイルの交換比率がお得
Milesは、iPhone、Androidで動作するアプリを介したサービスで、航空機、鉄道、自動車、船、自転車、徒歩……などの移動に対して、マイルを付与してくれる。徒歩や自転車など、環境に優しい移動手段の方が、より大きなマイルを付与されるというのが特徴だ。
ちなみに、その比率は以下のようになっている。
たとえば、東京-大阪を飛行機で移動するとする。500kmだとして、312.5マイルだから、Miles的には31マイルもらえるはず。
車で同じマイルを貯めようとすと、50kmほど走ればいいことになる。徒歩なら5km歩けばいい。自転車なら10km。なんとなく大変さの感覚値的には、合ってる気がする。エコな移動を推進する比率にもなってると思う。
ガッツリ1日頑張って、50km歩いたとしたら、310マイル。200km自転車で走ったら620マイル。500km車で走ったら、310マイル。SFまで飛行機で飛んだら500マイル。こちらも稼げる限界値は同じぐらいの気がする。良くできている。
無料だが、位置情報提供が気にならない人向き
さて、実際にアカウントを作ると、全位置情報の権限を常時要求される。Milesとしては、個人情報の取扱いには細心の注意を払うと言っているが、このあたりに心理的抵抗がある人は無理なアプリかもしれない。位置情報ゲームより上なのは、アプリを立ち上げていない時の位置情報も要求することだろう。筆者的には、もうこれだけ位置情報ゲームでバレバレなので、あとは運営がしっかり管理してくれることを祈るしかない……と思っている。
設定さえしてしまえば、あとはMilesが常時位置情報を管理し、どんな移動手段で移動しているのかを判別して保存して行ってくれる。
常時位置情報を録られるが、つまりは何もしなくてもマイルが貯っているということでもある。今、登録しておけば、1カ月後、2カ月後にアプリを開けばドッチャリ貯ってるかもしれないということでもある。
どんな特典と交換するのがお得?
マイルが貯ると景品と交換できる。これが、どのぐらいの価値ある商品と、どのぐらいの頻度で交換できるのかが、このサービスが成功するかどうかのキモであると思う。ある意味、個人情報を売って、景品をもらうわけだから価値ある商品でないと意味がない。
今、一番スタンダードというか、基準になるだろうなぁ……と思うのが、ファミリーマートのコーヒー。ブレンドSだから100円だ。基本的にはこれが500マイル。ということは前述の計算からいうと、一日めいっぱい各種移動手段で移動すると、ファミマのコーヒー1杯がもらえるということになる。
少ないような気もするが、黙っていてもマイルは貯るわけだから、1週間仕事で移動しまくってからアプリを開くと、何倍も貯っているということで、これはお得。
では、コーヒー以外にどんな特典が用意されているのか見てみよう。
・クックパッド、最大2カ月無料(100マイル)
・GOFOOD 20%オフ(100マイル)
・福井県のブランド米300g(2合)(600マイル)※1000人限定
・ベースフード500円割引クーポン(100マイル)
・EKIna CAFE 緑茶(500マイル)
・ブルーミーのお花が0円送料無料(150マイル)
・Anker全商品10%オフ(250マイル)
・Garminスマートウォッチ15%オフ(450マイル)
・Amazonギフト券100円分(4500マイル)
……といった具合で、現在108の煩悩……もとい、特典が用意されている。
いまのところ手放しでお得な交換商品というのは、コーヒーか、お米(ただし、1000名限定)ぐらいで、あとは割引クーポンだったりするから、その商品をもとより買うつもりでなければ、クーポン系サイトに行けばあるんじゃないかな……と思うような割引クーポンも、実のところ多い。いわゆるCPA(新規顧客獲得単価)の範囲内で提供されている割引だと言えばそれまでだ。しかし、その中から自分にとってお得なクーポンを探すのはまた楽しい。
クーポンを貯めつつ、自分が欲しくなる商品の登場を待つのが使い方になるだろう。『○○名限定』というカタチで出てくる特典もあるので、それはかなりお得なはず。高いメリットを得ようとしたら、特典欄をよく見ておくに限る(Milesがメジャーになったら、お得な特典の登場をレポートしてくれるウェブサイトが出来てくるに違いない)。
おそらく最後の手段として、用意されているのがAmazonギフト券で、これは4500マイルで100円と、交換レートは良くないが何にでも使える、いわゆる現金化に近い交換方法だ。放置して、大量にマイルが貯ったけど欲しい商品がない……という時はこれに換えることになるのだろう。たぶん、他のクーポンとは違って、これだけはMilesが自腹を切ってAmazonから購入してるように思う。
ともあれ、サービスはスタートしたばかりだから、今後、ユーザー自信が「お得だ!」と感じる特典が出てくるかどうかがキモになるように思う。
さっそく、マイルで靴を磨いてもらった
さて、さっそく、取材として最初に提供されたクーポンを使ってみた。
渋谷のミスターミニットで靴を磨いてもらったのだ。
550円(税込)のクイック靴磨きが20%オフで440円になった。取材用の安物の靴なのにピカピカに磨いていただいて恐縮だった。そもそも550円でこんなにていねいに作業していただけるとは知らなかったこれは気分がいい。
ちなみに、取材だったので、短時間で磨いていただけるものにしたが、もっと時間をかけて磨いてもらえるサービスなら、お得にある金額も大きくなる。
たくさん歩いたら、ミスターミニットで靴を磨いて……というわけで、これも移動を促進する特典になっているところが面白い。
特典が要らないなら、寄付をするができる
Milesが今どきのサービスだな……と思うのが、自分が換えたいと思う特典がなくても寄付をするという手段が残されているということだ。あなたが提供したマイルに応じて、Milesが寄付をしてくれる。
今のところは、交換比率としてはあまりいいとは言えないかもしれないが、Milesのビジネスが軌道に乗ったら、きっとこういう活動も盛んになっていくに違いない。『歩けば歩くほど、いいことができる』って面白い。
また、『抽選』という仕組みもあり、マイルを貯めて、何らかの抽選に参加することもできる。小さい特典に換えるより、大きく得なチケットを目指して抽選に挑むというわけだ。
さらに、今後、『チャレンジ』というものも開催されるらしい。毎日5km走るのを1週間続けたら、○○がもらえる……とか、そういうイベントになるらしい。これも楽しめそうだ。
いろいろ工夫されていて面白い。
では、Milesはどうやって儲けるのか?
すべてのスタートアップを悩ませる『マネタイズはどうする?』という質問だ。
Milesのユーザーはお金は払わない。我々ユーザーは移動して、特典をもらうだけだ。となれば、Milesはどうやって利益を上げるのか? Milesが錬金術でないなら、どうやって企業として存続し成長するための利益を挙げるのか? 誰もが気になるところだ。
ひとつは、『売上げ連動モデル』これは、たとえば10%の割引クーポンを使って買い物をしたとする、その売上げに対して、特典を提供している企業が送客したMilesにお金を支払うというタイプのモデルだ。パーセンテージは低くても、運営費、サーバー代などを捻出できれば、ビジネスの規模が大きくなればなるほど、入ってくるお金は多くなる。
もうひとつはCPA(Cost Per Acquisition)モデル。顧客をひとり送客するごとにいくらかがMilesに支払われるという仕組み。アカウントを作る、会員になる……などが達成されるたびに、Milesは利益を上げるというわけだ。
また、個々の移動は個人情報と切り離され、分析用のデータとして各企業に販売したりもされる。つまり、JALの乗って羽田→博多を飛んだ人は、その後何を使ってどこに移動するのか……というデータの掘り起こしだ。それぞれの移動、支出行動の先は何と繋がっているのか? これまで得られなかったマーケティングデータが獲得できるというワケである。
当分の間はシステム開発費や、パブリシティ費用、サーバー代などの運営費、営業費用など支出は莫大だろうが、ユーザーベースが増えて、実際に特典を利用する人が増えてくると、少しずつMilesの利益は増えてくるというわけだ。
サービスをご紹介する限りは僕らも成功して欲しいと願っている。使う側としては、お得なサービスなのか、損はしないのか? 個人情報は大丈夫なのかが気になるところだが、こういうユニークなサービスが継続されてほしい。その先にどんな未来が広がっているのか? が気になるところなので、ぜひ上手く軌道に乗って欲しいものだ。
コロナ禍によって移動が制限されて分かったことだが、移動はすべての経済活動の根源である。
海外に飛行機で飛んで宿泊するし、車で箱根や熱海に出かけて飲食するし、街まで歩いて行って買い物をする。その『移動』のすべてをデータ化し、我々には特典を、企業には送客とデータ提供を……というMilesが成功するのかどうか。楽しみにしながら見守っていきたい。
(村上タクタ)
(最新刊)
flick! digital 2021年11月号 Vol.121
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。