生徒が立って歩き回る枚方市の授業の素晴らしさ【GIGAスクール構想その後2】
- 2022年04月30日
並んで教壇に向かう授業と、生徒が歩き回る授業、どちらがいいか?
生徒が教壇の方に向かって並んで座っている方が、ちゃんとした授業を受けているように感じるなら、それは昭和時代の価値観だからアップデートした方がいい。
ひとり1台のiPadを導入した枚方市では、iPadの利活用が進むにつれて、生徒が立って歩いて積極的に他の生徒と意見を交換する姿が見られるようになったという。
たしかに、整然と生徒が並んで教壇に向かって授業を受けている様子は安心する。しかし、これでは、先生の話を聞いているだけの受け身の授業。
自分自身で主体的に課題に向き合い、取り組むとなると、資料を集めたり、実験したり、他の人と討論したり……と、立ち歩くことになる。こうした授業を導き出し、支援する先生にとっても、覚悟と技量が問われることになる。
子どもたちが、自分だけでなく他人の意見も認められるようになった
今回お話をうかがったのは、左から、大阪府枚方市の小倉小学校の永山教頭、茅根先生、教育委員会のICT推進グループ指導主事の倉田さん。
枚方市は、京都と大阪を繋ぐ淀川のほとりにある人口約40万人の地方都市。45校の小学校、19校の中学校で、合わせて約3万1000人の生徒を抱える。
ICT教育への取り組みは比較的遅く、令和元年度にようやく未来学集研究事業において実験校で1人1台のタブレット端末の導入が始まったったぐらい。しかし、そこから、枚方市ならではのICT教育モデルの策定がはじまり、ICTを効果的に活用した実践例『HI-PER』の構築、ポータルサイトの設置、情報教育推進ワーキングチームによるICT教育の推進……などが積極的に進められた。
枚方市教育委員会ICTポータルサイト「GiGAスク!ひらかた」
https://sites.google.com/hirakata.osakamanabi.jp/giga-school-hirakata/
枚方市版 ICT教育モデル
https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000034/34480/ictmodel.pdf
実践事例アーカイブ「HI-PER(Hirakara Ict Practical Example Record)」
https://sites.google.com/hirakata.osakamanabi.jp/hi-per-sample/hi-per
最初のうちは先生もどうやって関わっていいのか悩んでいたが、iPadを導入してしばらくしてそれが杞憂であるということが分かった。最初の課題さえ与えれば、子供たちが見る間に創造性を発揮するようになってきた。
お互いに意見を交換するために、授業中に立ち歩くことが増え、子供たちの間に自然な繋がりが増えてきた。自分だけでなく、他人の意見を認めるということができるようになってきたのだという。
GarageBand、Clips、Keynote、さまざまなアプリを活用
コロナ禍で鍵盤ハーモニカやリコーダーの演奏ができなくなっていた(息を吹きかけるため)が、GarageBandで演奏することができた。
観察日記も、写真を撮ってレポートすることができるようになったため、より細かく観察することができるようになった。スタンプなどを使って、感情を表現したユニークな観察日記を作れるようになった。
どうやったら授業に使えるかと、最初は心配していた先生方も、授業でのiPadの活用の仕方にすぐに慣れた。楽しくて、簡単にできて、授業に使えそうなさまざまなアイデアを共有するようになった。YouTubeを見て育って子供たちは、小学校1年生でも動画編集ができる。先生方もグリーンバックでの撮影の仕方を学びあったりした。
子どもが変わったことによって、先生方も変わり、先生方が変わったことによってこどもたちも変わっていった。
枚方市のiPad活用はまだまだ進化していそうだ。
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。