河川ゴミに関する啓発アプリ『FLOAT – River & ZEN & Chill』【アースデイ1】
- 2022年04月19日
INDEX
大変大きな河川/海洋ゴミの問題
筆者は50代なのだが、子供の頃、海や河川は汚かった。
空き缶やタバコをポイ捨てする人は多かったし、海や河川にテレビや冷蔵庫、自転車などが捨ててあるのもよく見る光景だった。おそらく、はるか昔の『野菜のヘタや、多少の生活ゴミは自然に捨てても生物分解される』という暮らしだった時代の名残りだったのだと思う。しかし、我々の生活が変化してプラスチックや金属などの生物分解されないゴミが増えており、自然の分解能力をはるかに越えて廃棄物が発生するようになっていた。
その後、’70〜80年代に啓蒙が進んだのか、そういう傾向は減り、街や多くの人が目にする場所のゴミは大幅に減ったと思う。しかし、それでも、大きな河川や潮の流れの集まる場所には大量のゴミが流れ着く。人目につかない場所に捨てられるゴミもあるし、大雨の時に流されるゴミ、風などに吹き飛ばされて人の手を離れるゴミもある。そして、それらのゴミは自然界に大きな影響を及ぼしている。
日本はまだしも発展途上国の大きな河川からは大量のゴミが流れ出しており、世界の河川、海を汚し続けている。前述した通り、日本も発展過程ではゴミを出していたのだし、我々の生活はそれら発展途上国で生産されるものに依存しているのだから、他人ごとではない。
特に昨今心配されているのは、流出しているゴミが破砕され、小さくなって自然の中に残っていく『マイクロプラスチック』だ。小さくなったゴミは生物の中に取り込まれ、影響を与えるようになっている。魚や小動物の体内に、多くのマイクロプラスチックが見られることも少なくない。
荒川でゴミを回収するあらかわクリーンエイド
我々は日本ではそれほどゴミが出ていないつもりでいるかもしれないが、荒川などの大規模河川の河口付近には大量のゴミが集まってくる。これらは放置していると海に流出していく。
これらのゴミを回収し、河川をきれいにするとともに河川/海洋ゴミ問題について考えようという活動をしているグループのひとつが、『あらかわクリーンエイド・フォーラム』だ。
あらかわクリーンエイド・フォーラム
https://cleanaid.jp/
あらかわクリーンエイド・フォーラムは、実際に荒川でゴミひろいの活動をすると同時に、さまざまな啓発活動をしている団体だ。
上の写真のように、荒川の河口近くの河川敷には大量のゴミがあり、拾うと非常にきれいになる。しかし、しばらくするとまた元のようにゴミだらけになるというのも現実だ。
黙々と、プレイしてしまう癒し系ゲーム
多くの人にゴミ問題を知ってもらうための啓蒙アプリ『FLOAT – River & ZEN & Chill』を作ったのが、デザイナーのかきぬまつとむさん。
『FLOAT – River & ZEN & Chill』
https://apps.apple.com/jp/app/float-river-zen-chill/id1581535238
かきぬまつとむさんは、以前から環境に対する問題意識を強く持ってらっしゃって、1975年に出版された『かこ さとし』さんの代表作『地球 その中をさぐろう』に登場するシーンを『土』を主題としてリメイクした『SOIL』というアプリを作った経験も持つ。
SOIL / かこさとし作 -地球 その中をさぐろう- よりhttps://apps.apple.com/jp/app/soil-%E3%81%8B%E3%81%93%E3%81%95%E3%81%A8%E3%81%97%E4%BD%9C-%E5%9C%B0%E7%90%83-%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%82%92%E3%81%95%E3%81%90%E3%82%8D%E3%81%86-%E3%82%88%E3%82%8A/id1059914569
『FLOAT – River & ZEN & Chill』は流れてくるペットボトルのゴミを、カゴでキャッチするというゲームアプリ。
ゲーム性はそれほど高くないが、ゴミを題材にしているにもかかわらず、グラフィックは美しく、操作時の波紋などの動きが気持ちよくて、黙々とプレイしてしまう。筆者もコツを掴んでからは、やめ時を失うぐらいCOMBOを続けてしまい、電話がかかってきて中断するまで117COMBOを達成してしまった。
時間にゆとりがあって、精神を集中したい時にプレイするといいかもしれない。
ゴミを回収していると、水面下をボラやマハゼ、ニホンウナギ等の水中生物が通り過ぎていき、自分がゴミを拾っているのも無駄ではなかったかな……と思わせられる。
ゲームをしても、地球はきれいにならない?
このアプリの意義は2つある。
ひとつは、啓蒙アプリとしての意義。ゲームを続けても地球はちっともキレイにならない。「ならば実際に……」と思って欲しいということだ。
もうひとつは、収益がゴミの回収に繋がるということ。広告動画を視聴すると、現実の河川において荒川クリーンエイドの人が2個のゴミを回収してくれる。
120円課金すると、4個。1220円の課金を行うと、15リットルのゴミが回収される。
また、河川/海洋ゴミについての学習もできるようになっている。まずは、多くの人が河川/海洋ゴミについて知ることが必要だ。
増え続ける海洋ゴミの問題は茫洋としていて、自分ごとにしにくい側面がある。「自分はゴミをポイ捨てしてないから関係ない」とも思いがちだ。
しかし、意図したものでなくても大雨の時に流れ出したり、風に吹き飛ばされたり、ゴミ回収の業者から流出したりと、いろいろな要因でゴミは自然界に広がっている(そういえば、わが家の近所のゴミ集積所も時々カラスに散らかされている。ああいうところかも自然界に流出しているのだろう)。
まずは『FLOAT – River & ZEN & Chill』を黙々とプレイしながら、ゴミ問題について考えてみてはいかがだろうか?
『FLOAT – River & ZEN & Chill』
https://apps.apple.com/jp/app/float-river-zen-chill/id1581535238
SOIL / かこさとし作 -地球 その中をさぐろう- よりhttps://apps.apple.com/jp/app/soil-%E3%81%8B%E3%81%93%E3%81%95%E3%81%A8%E3%81%97%E4%BD%9C-%E5%9C%B0%E7%90%83-%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%82%92%E3%81%95%E3%81%90%E3%82%8D%E3%81%86-%E3%82%88%E3%82%8A/id1059914569
(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。