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EVってこんなに楽しかったっけ? トラクションで曲がり込む【プジョーe-2008 GT】

コンパクトなクラスだがけっこうデカイ

先月のプジョー3008 GT HYBRID4に続いて、今回もプジョーに乗ってみた。選んだのはe-2008 GT。名前から分かる通り電動モーターのみで走るEVだ。

200番台の車名は、プジョーの代表車種ともいえる1.2Lぐらいのハッチバックに付けられるのが通例。欧州のひとりの移動で、レンタカーを頼むと205や206がよく出てきたものだ。日本車のレーシーなホットハッチとはまた違うが、うねりの多いフランスの田舎道、良く伸びる足回りで現地の人が路面を捉えながらカッ飛ばしていたのを思い出す。現行車種は208で、こちらは1.2Lガソリンターボと、電動の2種類のパワーユニットが選べる。

4ケタになった2008は同じパワーユニットのSUVタイプ。車高だけでなく、全長も全幅も、ホイールベースもひと回り大きく、車格としては1クラス上に見える。立派なのだ。

航続距離がどのぐらいかビビりながらツーリングを開始

クルーズのモードに入れておいて、運転支援が可能な状態になったらONにすれば、自動的にハンドル操作もしてくれる。CarPlayも付いていてうれしい。
どこまで走れるかとても不安だったので、77kmを走った談合坂でチャージ。結論から言えば、そんなにビビる必要はなかったが、残量は常に気になる問題。

で、お借りしたのがe-2008ということで、試乗のテーマは自動運転に加えて、EVがどのぐらい走れるのかということにもなる。実は10年前フリック!のVol.07でとあるEVを借りて試乗したのだが、その時は実質航続距離が100kmあまりしかなく、非常に苦労しながら2日がかりで富士山の周りを1周した記憶がある。

その時のリベンジの気持ちもあって、今回も試乗コースは東京発の富士山1周とした。試乗車を借りてきて、前夜に会社の近所でフル充電。メーターの表示によると320kmをそこから走るという表示。しかし、10年前のEVも表示は200km走ると出ていたのだから油断はできない。

まずは東名高速を走り、海老名ジャンクションから圏央道に入り北上。八王子から中央自動車道に入り河口湖を目指す。途中談合坂でひと休み。ここまで77kmだが、とにかく電気がなくなっては困ると、ビビッて、15分ほどの間にも追加で充電。

言うまでもないがEVは静か。高速道路もパワフルに走ってくれるが、基本的に速度が上がると空気抵抗で無駄に電力を消費してしまうので、制限速度を若干下回るぐらいの穏やかな運転を心がける。車体の剛性感もバッチリで1.2Lクラスとは思えない安心感だ。

運転支援システムの働きは基本的には3008 GT HYBRID4と同様。高速道路を走っている限りは、アクセルとブレーキとハンドル操作をクルマに委ねられるが、クルマ側の制御はそこまで。ハンドルをしっかり握っていることを要求されるので、運転自体は楽になるが、自動運転という感じではない。

今回は充電カードも一緒にお借りしたが、そのあたりの対応状況、どうやったら安く充電できるか? なども考え始めると難しそう。
エンジンはない。コンバーターや、インバーター、モーターなどが収まっている。
充電している時のメーター表示。現在292km走れる状態で、満充電まで40分。

10年前は数十km圏内に充電設備がなかったが今やこの充実ぶり。

チャージ完了! 満充電で320km走れると表示される。実態としては普通に走って270~280kmぐらい。

 

航続距離が270~280kmあれば、一般的な用には十分。家に充電器さえあれば、EVを日常の足にするのにも不自由はなさそう。

一番驚いたのはスムーズなトラクション

河口湖畔で食事をしながらフル充電。10年前にも充電に使った富士河口湖町役場で充電したが、10年前と違うのは、その周りに何十という充電スポットがあり、それがスマホで探せること。時代は変わった。こと関東近郊においては、充電場所に困るということはないだろう。しかし、充電にはそれなりに時間がかかるから「その間に食事に行こう」という話になるのは10年前と変わらない(笑)。

河口湖近辺のワインディングを走りながらハンドリングをチェック。これが実に爽快なのだ。

一番興味深いのは、ターンインからクリッピングを過ぎて、スロットルを当てていくあたり。エンジン車の場合は、ギアが何速か、エンジンの回転は何rpmかということを常に気にするわけだが、EVの場合はその問題を一切考えなくてもいいのだ。

ゆるっとペダルを踏むと、スッとトラクションがかかる。その状態からコーナーが回り込んでいたとしても、ゆっくりとアクセルを強めていけば、クッとトラクションがかかったまま、回り込み続けるのだ。これがエンジン車だとそうはいかない。低回転でパワーが足りなかったり、高回転でトルクが足りなかったり、途中でギアを変えねばならなかったり。つまりエンジンの都合を考えねばならない。それに対して、クリッピングからコーナーの立ち上がりに至るまで、ずっと望むトラクションを細かく調整し続けられるのだ。これは素晴らしい。異次元の感覚だ。なにしろ助手席に乗るカメラマンが「この曲がり込んで行く感じ、いいね!」と言ったぐらい。

つい走りの話が饒舌になってしまったが、そのぐらいこのトラクション感は良かった。そして、そこから197kmを一気に走って帰ったが、まだ86km走れると表示されていた。時代は変わった。

帰り道はさらに、運転支援を多用して楽々帰れたし、かなり好感度の高いEVだった。ああ、マンション住まいでなければ家に充電器が置けるのに!!

立体的な表示なので、走行時に横から撮影するとズレる。

 

ノーマルモードで約109馬力。 スポーツモードにすれば136馬力だが、印象はそれより俊敏。 回り込んでいるコーナーで、 エンジン車ではできないトラクションをかけられる。
全長4,305mm、全幅1,770mm、全高1,550mm、ホイールベース2,610mmと、コンパクトとは言えないサイズ。EV仕様の車重はなんと1,630kg。
ボディ同色のフロントグリルがEVの証。ヘッドライトはフルLED。
テールランプもヘッドライトと同様に、ライオンの3本のツメをモチーフにしている。
グリップの劣るエコタイヤではなくMICHELIN PRIMACYなのが男らしい。
コンパクトとは思えぬ車格を活かした、広々とした前席。居住性も操作性もいい。小ぶりで丸くないハンドルがプジョーならでは。
トグル式のスイッチパネルがフランス車っぽいお洒落ポイントだ。
フロントシートの居住性も非常に高く、ホールド感も上々。
身長175cmで昭和な座高を持つ筆者が座っても楽々な後席。

PEUGEOT e-2008 GT(プジョー・e-2008 GT)

価格:477万6000円〜(税込)

エンジン仕様の2008だと306万8000円〜(税込)なのだが、e-2008は438万円〜。GTにナビなどを含む試乗車の仕様だと、500万円を軽く超えてしまうなかなかの高級車だ。ただし、国からと地方自治体からの補助を最大117万3000円受けることができる可能性がある(補助を受けるには条件がある)。十分な居住性と積載量、パワー、プジョーならではのハンドリングを満喫できるのだから良しとすべきか。

昭和オヤジレビュー

フランス人が作ると、EVもこんなに楽しい

前回乗った万能かつ超パワフルな3008 GT HYBRID4に対して、小型かつ普通の馬力なのだが、非常に洗練されていて、魅力的なのがe-2008。やはり生活を楽しくするコンパクトカー作りにおいて、フランス人は非凡な才能を発揮する。こうなると、車高が低くコンパクトなe-208も乗ってみたくなる。EVでも十分走るのが楽しい、French Techの活きた素敵な小型車だ。

(フリック!編集部)

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