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定番化を予感させるダイヤルフィットパック「サマヤ/アルパイン ペース」|これからの山道具図鑑Vol.4

2018年にフランスで誕生した「SAMAYA」という登山用品ブランドがある。「サマヤ」と読むネパール語の意味は、「時の空気」。山名や創業者名、地名、動物名を冠することが多い既存のアウトドアブランドに対して、その名同様に、手掛けるアイテムも独創的で美しい。

今回紹介するのはサマヤの「アルパイン ペース」。atopリールノブレーシングシステムというダイヤルを回転させてフィット感を調節できる機能を装備した小型パック。本体素材にリサイクルナイロンを採用した環境配慮型製品でもある。
まだその数は多くないダイヤルフィットパックのフィット感、背負い心地はどんなものなのか?
期待と興味を持ってテストをしてみた。

編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉長谷川拓司

SAMAYAが注目を集めたのは、防水通気テントから

▲中央上のピンク色六角形のテントがSAMYA2.5(出典◉Samaya)。

サマヤは、フレンチアルプスの中心にあるアヌシーという街に拠点を置き、アルパインクライミングのためのテント製作からスタートした。

日本において、サマヤはまだマイナーだが、しかし欧州では、ブランドロゴと同じ六角形をしたシングルウォールのアルパインテント「SAMAYA2.5」が、アルパインクライマーの間で知られているようだ。

SAMAYA2.5は、独自開発した防水通気素材「ナノベント」を本体に採用している。防水透湿素材ではなく、防水通気素材。つまり外側からの水分の侵入を防ぎ、内側からはムレを排出するだけでなく、空気を通過させるメンブレンだ。これによりシングルウォールテントのデメリットである結露を大幅に軽減、コントロールすることに成功した。

さらに、2人+登山装備を収納できる十分な広さを誇りながら、総重量を1,630gに抑え、1人用テントの重量同等の軽さも実現。創業時に掲げた「4シーズン用テントに革命を起こす」という夢を実現した。ISPOという欧州で開催される世界最大級のスポーツ用品見本市において、秀逸なギアに贈られる最高賞も受賞。高機能さだけでなくデザイン性も評価され、サマヤの名は広まり、SAMAYA2.5テントはブランドアイコンとなったという。

ベスト型を採用した、サマヤのパック

ブランド名の違い以外は同じような形状、機能が多いアルパインテントに、次世代のあり方を感じさせる、まさに「革命」を起こしたサマヤが、2024年に発売したのが「アルパイン ペース」という、容量20+3ℓ、本体重量440gの軽量小型アルパインパックだ。

アルパインパックも軽さとシンプルさを求めることから、似たデザイン、機能が多い。ポケット類や雨蓋を排除。ウエストベルトはバックパッキングモデルのように荷物の重さを分散させる太くしっかりしたものではなく、パックの揺れやブレを抑える必要最低限なもの。ショルダーハーネスも細身で、動きを邪魔しないことを優先。体力と技術、さらには経験を積んだクライマーだからこそ使いこなせる、尖った道具と思えるものだ。

だから、フィット感というぜいたくな機能は、二の次だった。

そうした流れに変化が起きたのは、トレイルランニングパックを、登山やクライミングシーンで使う人が増えてきたここ数年からだろう。アルパインパックのなかに、いわゆるベスト型と呼ぶショルダーハーネスに大小複数のポケットを装備したモデルが登場してきた。

サマヤが手掛けたアルパインペースも、そのベスト型を採用している。

ワイドなショルダーハーネスはパック本体とともに身体をはさみ込んでブレを抑制して運動性をアップ。ショルダーハーネスポケットにはボトルや行動食を収納でき、適宜補給できるので消耗を防げる。さらにそれらは身体の前面に収納されているので、アクセスする際の安全性も高めている。これまでのアルパインパックとは異なる方向での機能性を装備している。

しかし、テントでも素材、形状で独創的な機能を提案したサマヤは、バックパックでも斬新な機能を、さらに追加、提案している。

単なるベスト型ではなく、ダイヤルフィットを搭載

それは、atopリールノブレーシングシステムというダイヤルを回転させることでフィット調節ができる機能の採用だ。ワイドなショルダーハーネス下部とパック本体下部を網目状に配した強度のある化繊製ワイヤーで連結。ダイヤルを身体の前方に回転させると締まり、逆回転させると緩められる。もちろん細かなフィッティング調節が可能だ。

そしてこのダイヤルフィットがもたらすフィット感を最大化しているのが、ショルダーハーネスの形状、配置だ。ダイヤルを回して締め込むと、脇腹の上、肋骨の下部のカーブをショルダーハーネスが包み込むようにしてフィットしてくれる。
肋骨は柔らかい骨なので、ショルダーハーネスと肋骨がフィットすることで、荷物の揺れ、ブレを肋骨がバネとなって吸収してくれていることに気が付いた。

この背負い心地、フィット感は、もしかしたら私の身体、体型だけの体感なのかもしれない。現に、日本の輸入元のSTATICBLOOMのHPにも、SAMAYAの本国サイトにも、肋骨を包み込むことの効能については、どこにも記述がない。

「着るバックパック」をさらに「一体化させるパック」へ

でも、私以外の数人にこのアルパインペースを背負ってもらい肋骨のフィット感を聞くと「まさに、それが背負い心地のよさにつながっている」と回答した。

これまで中型~大型のバックパックはウエストベルトで腰骨を包み込み、荷重を肩、背中、腰に分散させて背負い心地の軽さを機能させてきた。対して近年の小型パック、とくにトレイルランニングやファストパッキング用は、肩甲骨の上にパック本体を乗せ、ショルダーハーネスで身体をはさみ込むことでパックの揺れ、ブレを抑えていた。さらに容量が20~30Lのちょっと大きめのパックでは、ショルダーハーネスを大きくワイドにし、チェストストラップも上下2~3本を配して、本体とともに身体の前後を面のようにしてはさみ込み、揺れを抑制した。

それをアルパインペースは、意図したのか偶然かは不明だが、ショルダーハーネスで肋骨を包み込み、ダイヤルフィットで確実に抑えることで、パックと身体を一体化。揺れとブレを軽減させた。肋骨を単に包む形状のパックはこれまでにもあったが、肋骨をグイッと締め込み、包み込むパックはアルパインペースが初めてだろう。

「パックは背負うのではなく、着るものだ」というコンセプトで知られるのはバックパック界の巨人グレゴリーだが、アルパインペースを背負ってみれば、「着る」という感覚のさらに上の次元、身体との「一体化」がある。

これはダイヤルフィットシステムを採用することで生まれた、新たなバックパックのカタチと機能だと思える。

マルチアクティビティにも対応

さて、一体化という究極のフィット感を装備したアルパインペースは、その商品名が示す高所登山でのスピーディでテクニカルな使用だけを想定しているパックではない。

ファストハイクやトレイルランニング、さらにはバックカントリースキーもその用途に入っているマルチパックでもある。それは、トレッキングポール、ヘルメット、スキー板をパックに装着できるホルダーを標準装備していることからも、わかる。

それを解説している動画が下記だ。

これからの小型パックの方向性を示したパック

ちょっと気になって調べてみたところ、同様のダイヤル操作ができるBOAフィットシステム搭載パックが、アルパインペースよりも先、2023年に発売され現行品としてもラインナップされていた。
それは、「ミレー/トリロジー スカイ 25+」で、アルパインペースとはダイヤル位置、ワイヤーの取り回し方が異なるが、ワイドなショルダーハーネスが肋骨を包むようにも見え、似たような一体感を得られるパックなのかもしれない。

【ミレー】
ミレー/トリロジー スカイ 25+

 

いまから15年ほど前、「これからのバックパック、とくに小型、中型パックは、ブレにくく、身体の前側で給水、給食ができるベスト型が主流になる」と予想した記事を、私は書いたことがある。それは、トレイルランニングの普及の予想ではなく、機能としての必然性を感じたからだった。

そのときと同じように予想すると、今後小型パックを中心にダイヤルフィットシステム採用モデルが増えていくだろう。アウトドア用途としては、2000年代にトレッキングシューズを中心に採用モデルが多く発売されたが、ワイヤーの甲部へのアタリやダイヤルの不具合があって、あまり普及せずに現在に至っている。しかしその後、ダイヤルフィットシステムは進化し、現在ではヘルメットのフィット調節ではクライミング、サイクリング用ともに定番化、シューズもゴルフやサイクリング用は人気モデルとなっている。

今回サマヤのアルパインペースでいくつかの山を登ってみた私は、単にダイヤルフィットシステム採用モデルではなく、肋骨を包み込む構造のパックが多く開発されることも予想したい。いや、予想というよりも願望かもしれない。

そう思えるほど、アルパインペースは機能としての必然性を装備している道具だった。

【サマヤ】
アルパインペース

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PONCHO

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登山、ランニング、旅、島、料理、道具をテーマに執筆、撮影。低山ハイクとヨガをMixしたイベント『ちょい山CLUB』を主催する。

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