筆とまなざし#126「❝日本のチロル❞もとい❝下栗の里❞へ出かけてきました」
PEAKS 編集部
- 2019年04月12日
下栗の里
先日、下栗の里を訪れました。下栗の里というのは長野県飯田市の遠山郷にある集落のこと。ここが特徴的なのは最大斜度38度という急勾配の斜面に家や農地が点在することで、その傾斜はほとんど崖に近い。標高800~1000mほどの高地にあり、ある学者は「日本のチロル」と命名しました。調べてみると深田久弥は「下栗ほど美しく平和な山村を私はほかに知らない」と書いているらしく、スタジオジブリのスタッフが制作取材にも訪れたとか。飯田市を訪れる機会があり、ちょっと足を延ばして(飯田市内から1時間くらいかかる)行ってみようということになったのです。
二車線の国道から分かれて車一台が通れるほどのぐねぐね道を登っていきます。下栗の里まではおよそ7km。時間にして15分ほどですが、それよりもずいぶん長いなと思いながら車を走らせると、急斜面に張り付くようにして建つ民家が見えるようになりました。家々の間にはわずかばかりの畑。ずいぶんと山深い場所にあるにも関わらず、日当たりが良いためか、とても明るくて気持ちの良い場所です。それにしても、どうして人はこんなにも傾斜の強い場所に住むようになったのか。近くの地区からは縄文土器も出土しているということで、古くから人が暮らしていることがわかります。車などない時代、この集落だけで生活が完結するのであれば、町との距離はそれほど重要ではなかったのかもしれません。
家々の間を縫う道を進むと、真っ白い山々が目に飛び込んできました。赤石、聖、光・・・南アルプス南部の山々でした。大きく、どっしりとして気高い雪をまとった山々が、春の日差しを受けて輝いています。なるほど、チロルでもグリンデルワルドでも良い。雄大な白い峰と小さな村が織りなすその風景はヨーロッパアルプスを思わせるすばらしい景色でした。
最近はクライミングばかりですっかり山から足が遠ざかっています。けれど、こんな風景を見たら山へ行きたくなってきます。あの山々をスケッチブック片手にのんびり歩いたらどんなだろう。残雪があったほうがよさそうだな。アクセスのしにくい南ア南部。登山口までの林道は通れるのだろうか? 新しい旅の予感を抱きながら下栗の里をあとにしました。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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