筆とまなざし#129「雪解けと新緑の季節を迎えた羽黒山麓での山菜取り」
PEAKS 編集部
- 2019年05月09日
エクストリーム山菜採り
ゴールデンウィークは山形に住む兄を訪ねました。2ヶ月ほど前に兄の車を譲ってもらったのですが、ノーマルタイヤが鶴岡にあるというのでタイヤをもらいに行きがてら山形へ出かけたのです。長野から妙高を経由して、新潟を北上。途中で西会津に立ち寄ったりしながら鶴岡に着いたのは日もとっぷり暮れてからでした。
翌日は兄が山菜採りに連れて行ってくれるとのことで、出羽三山のひとつ羽黒山の麓に向かいました。すばらしく晴れた日で、残雪の輝く月山と鳥海山が相対するように青空の下にそびえています。車は牧場の横を通って林道の脇で停まりました。あたりにはまだ雪が残っていました。
豊富な雪が土を削り深い谷を作るのでしょう。溶岩質の土の崖があちこちにあり、その崖にくるくると首を丸めた植物が生えていました。
「あれはゼンマイ、こっちがジョナ、フキノトウもこのくらいなら食べられるよ」
ジョナあるいはジョンナという山菜は聞くのも見るのも初めて。そしてこんなにすぐに、しかもたくさんの山菜が見つかることにただ驚くばかりでした。場所を変えるとタラの芽がたくさん。そして、潅木を頼りに崖を下るとイヌドウナ、ウルイがぬかるむ斜面に生えていました。雪の重みで崖に這うように伸びる潅木が良い手がかり、足がかりとなってくれます。イヌドウナというのも初めて目にする山菜で、そのまま食べるととても濃くて爽やかな、山菜らしい味がしました。ウルイもそのまま食べられるらしく、かじってみるとこちらはマイルド。しかし、こんな崖を登り降りしながら山菜を採るとは大変です。山菜採りといえばお年寄りが道端で……というイメージでしたが、これはなんともエクストリームな山菜採りです。
山菜は土を落としがてら雪解け水で締めておくと鮮度が長持ちするという。半日ほど歩くと晩御飯のおかずには事欠かないほどたくさんの山菜を収穫でき、その夜は天ぷらやナムルとしてたっぷり堪能しました。
山形を訪れて思うのは、雪解けと新緑がいっしょにやってくるということ。雪の少ないぼくの田舎とはまったく違う光景です。そしてブナを主体とした明るい森が広がっていること。豊富な雪解け水が、これだけ豊かな山菜を育んでいるのでしょう。この土地の食文化の豊かさを垣間見、山菜採りのおもしろさを実感した1日でした。ちなみに岐阜に帰ってからも山菜三昧の日々を送っています。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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