筆とまなざし#152「創立50周年の‟中津川労山”。地元山岳会の熱き活動」
PEAKS 編集部
- 2019年10月30日
かつて所属していた地元の山岳会が今年で創立50周年を迎えました。中津川勤労者山岳会、通称「中津川労山」です。かつてというのは、高校生のときとUターンしてからのしばらくのあいだ所属していたからで、現在は会員ではありません。クライミングがしたい、本格的に登山がしたいという高校生を勤労者でもないのに入会させてくれたことは、その後のぼくの人生に大きな影響を与えたといっても過言ではありません。
50年以上前、登山ブーム真っ盛りの時代に、ここ、岐阜県中津川市には「中津川登行会」という山岳会がありました。「中津川登行会」には若かりしころの親戚のおじさんが所属しており、北アルプスの岩壁に足繁く通っていたといいます。その後、若い会員たちが新しい会を作るに至りました。それが「中津川労山」でした。1980年代から90年代にはヨーロッパアルプス三大北壁の登攀やヒマラヤの未踏峰への遠征など、先鋭的かつ精力的な活動が行なわれており、地方の小さな山岳会でありながら登山界にその名を馳せていました。また、ホームエリアである恵那山の山頂に会員たちの人力で避難小屋を建設したことでも知られており、現在も毎年登山道整備を行なっています。
先週の日曜日、市内で行なわれた創立50周年記念祝賀会に出席しました。もう辞めてしまった会員にも声をかけてくれたことは素直にうれしく、久しぶりに会う方々との再会もうれしいものでした。祝賀会の目玉は記念講演で、講師は小松由佳さん。東海大学山岳部OGでK2を日本人女性で初登頂しておりご存知の方も多いでしょう。現在はフォトグラファーとして、内戦の続くシリアへ赴き、市井の人々のようすを写真や文章で伝える活動をしています。講演はK2登山のことがメインで、その内容がすばらしかった。また、小松さんの興味がヒマラヤ登山から山麓に暮らす人々、砂漠や草原で暮らす人々へと移り、写真を志し、どうしてシリアへ赴いているのかをうかがい知ることができました。小松さんとは同い年。大学時代から現在に至るまで、彼女がどれだけの情熱と行動力で現在の活動を行なっているのか、非常に刺激に満ちた時間でした。
中津川労山を辞めたあとも時々考えることがあります。どうして人口わずかの地方都市の山岳会でありながら、会員が一丸となってヒマラヤへ遠征に行き、恵那山山頂に避難小屋を建てられたのか。その情熱と行動力にはただただ圧倒されるばかりで、そんな仲間が地元に集っていたことにとても羨ましさと温かさを感じずにはいられません。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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