テントのメンテナンス方法
PEAKS 編集部
- 2019年12月23日
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普通に使っていれば大掛かりなメンテナンスが必要になることはないテント。だが、長く使えるように基本的な手入れは欠かさず行なうようにしたい。
正しい方法で日ごろのケアを行なう
大物なだけに家に帰ってから広げるのも面倒になりがちなテント。ついつい使ったまま放置してしまうことも少なくないが、テントの最大にして唯一ともいえる日常的な手入れは乾燥させること。
「湿ったままにしておくと臭いやカビが発生するだけでなく、生地の劣化にもつながってしまいます。おっくうでも毎回必ず干してください。乾かすときは設営した状態がベストです。
まんべんなく、そしてすぐに乾くので紫外線の影響を受けにくいですし、ある程度テンションが掛かった張りのある状態のほうが、生地やシームテープへのダメージを最小限に抑えられるんです」
そう語るのは、アライテント広報担当の福永さん。自身もリペアを行なう職人であり、数多くの修理事例を目の当たりにしてきた。福永さんは汚れを落とす場合にも注意すべきことがあると、こう教えてくれた。
「毎回でなくていいですが、汚れが目立ってきた場合はしっかり落としておきましょう。たまに浴槽などで水洗いする人がいますが、テントは生地が濡れた際の収縮率が異なる素材の集まりなので、全体を濡らすのはできるだけ避けたほうがいいです。基本的に汚れはボトムに集中するので、そこをブラシや湿らせた布などで落とせば十分ですね」
その他、使っているうちに必要になるケアやリペア方法なども、この機会に覚えておこう。
POINT
①使ったあとは必ず乾かす
②汚れたら早めに落とす
③撥水加工や防水のための処理もたまに行なう
しっかり乾かす
基本にして一番大事なケアがテントを乾燥させること。濡れたままにしておくと臭いやカビが発生してしまうだけでなく、生地の色移りや劣化などが起こることも。
ポールのチェック
強風に煽られた際はもちろん、設営の仕方が悪い場合にもポールが曲がったり、部分的に破損したりすることがある。ときどき不具合がないかチェックしておこう。
ボトムの汚れを落とす
一番汚れやすいのがボトム。土や泥などによるちょっとした汚れも蓄積すると落ちにくくなってしまうので、汚れが目立ってきたら早めに落としておくように。
たまには撥水処理を
購入後すぐは撥水加工によりしっかりと水を弾くが、使っているうちにどうしてもその効果は落ちてきてしまう。気になってきたら自分で撥水加工を行なおう。
テントを乾かす
雨天時はもちろんだが、晴天時でも結露や地面からの湿気などでテントは濡れていることが多い。使用後はそのままにせず、かならず乾燥させよう。
住宅事情により難しい場合もあるが、基本的には設営した状態で乾かすのがベスト。やむを得ず物干し竿などで干す場合もしっかりと広げて湿気が残らないように。
設営して乾かす
庭や近所の公園などテントが広げられる場所で設営して乾燥させる。曇りだと乾きにくいので、なるべく晴天時に干すようにしよう。
フライシートは裏返して
フライシートは表側が乾いていても結露で内側が濡れていることも。裏返して本体に取り付ければしっかり乾かすことができる。
ボトムも忘れずに
地面からの湿気によって濡れやすいボトムはテントを傾けて乾かす。風に煽られやすくなるので、飛ばされないように注意。
物干し竿などで干す場合
設営が難しい場合は物干し竿などで干すのが現実的だが、いくつか注意が必要だ。まず風で飛んでいきやすいのでかならず洗濯バサミなどで固定すること。さらに、鉢植えなどに引っかかる恐れのあるやすい張り綱などは結ぶか、外しておくことも忘れずに。
張り綱をそのままにしておくと、風に煽られ鉢植えや木の枝などに引っかかる恐れがあるので危険だ。
汚れを落とす
毎回でなくてもいいが、汚れが目立ってきたら落としてきれいにしておくことも大切。場合によっては土壌の成分が生地にダメージを与えることもある。ひどい汚れが付くことはほとんどないので、ブラシをかけたり濡らした布で拭くだけで大体はきれいになる。しつこい汚れがある場合には台所用洗剤などでケアを。
ブラシなどで全体の汚れを落とす
通常の汚れであればブラッシングなどでほとんど落ちる。ブラシがない場合は濡らしてよく絞った布などで拭くといい。
ひどい汚れには洗剤を
油汚れなどれがある場合は、台所用洗剤などできれいにする。歯ブラシや布で傷つけないようにこすって汚れを落とす。
洗剤洗いをしたら水拭きをして洗剤を落とす。残ってしまうと生地のダメージにつながる。
汚れを広げないテントのたたみ方
テントで汚れるのはほぼボトムのみ。撤収でたたむ際にボトム同士を合わせて他の部分に触れないようにすれば、汚れが広がるのを防ぐことができる。
また空気が抜けにくいボトム同士を内側にすれば、収納時に空気が抜けやすく、コンパクトに収納しやすいというメリットも。ぜひ手順を覚えておこう。
1 角を揃えて持つ
入口を少し開けた状態でボトムの長辺を持って角を合わせ、短辺が内側に入るようにする。
2 アゴを使ってたたむ
さらに半分に折りたたんでいくが、このときあごを使うと重ねた本体同士がズレにくい。
3 半分に折りたたむ
1回折りたたんで長辺が半分に。これをテントの収納袋の深さより少し長くなるまで繰り返す。
4 たたみながら丸める
本体を丸めていくが、空気を抜きながら1/3くらいずつ折って丸めるとコンパクトになる。
5 袋に入れる
収納袋に入れる際はコンプレッションはすべて開放しておく。収納後にコンプレッションすれば終了。
撥水性を高める
フライシートに掛かった水の弾きが悪くなったと思ったら、そのままにしておくとフライシートの防水性に影響が出てくる。撥水性が落ちてきたら撥水加工が必要だ。
撥水剤には液体タイプとスプレータイプがあり、どちらも効果は同じ。スプレーのほうが手軽だが、液体のほうがまんべんなく広げやすい。
1 スポンジに撥水剤をつける
液体タイプの撥水剤の場合、スポンジを使ってフライに塗っていく。まずは適量の撥水剤をスポンジにつける。
2 スポンジで広げる
スポンジで撥水剤をフライ全体に塗り広げる。乾きは早いが完全に乾燥するまでは少し時間が掛かるので、しばらく乾かす。
スプレーの場合
スプレーの場合はそのまま噴射して塗布する。生地からは20cm程度離し、ムラにならないように噴射箇所をずらしていく。
ファスナーの滑りを良くする
テントを長く使っていると、フライシートや本体の入口部分についているファスナーの滑りが悪くなることがある。力を入れて無理に開閉すると、ファスナーが破れる原因にもなるので、そんなときには潤滑剤を使って滑りを良くするのがベター。シリコンスプレーや塗るタイプの潤滑剤を使用する。
1 シリコンスプレーの場合
ノズルを使ってファスナーにシリコンスプレーを塗布する。金属用の潤滑剤はこの用途には向かないので使用はNG。
2 塗るタイプの潤滑剤の場合
ペンタイプの場合はファスナーに直接塗っていく。一度塗ったあとにファスナーを開閉するとまんべんなく広がる。
ペンタイプのファスナー潤滑剤は手芸用品店などで入手できる。
ファスナートラブルで安全ピンが活躍
山中でファスナーが壊れると、雨風にさらされる危険も。安全ピンがあれば万が一ファスナーが閉じられなくなってもテントを閉めておくことができる。
縫い目の防水性を高める
縫い目からの浸水を防いでくれるシームテープだが、経年劣化で剥がれてくることがある。アライテントの場合、メーカー預けで貼り直してもらうこともできるが、部分的な剥がれであればシームコートで修理可能だ。シームコートのほうが耐久性が高いので、防水効果が長持ちするというメリットもある。
シームテープの劣化
経年劣化によってシームコートが剥がれてきた状態。こうなってしまうと縫い目から浸水しやすくなるので補修が必要だ。
1 表側にシームコートを塗る
縫い目の部分に表側からシームコートを塗っていく。多少のはみ出しは気にせず、縫い目を埋めるようにまんべんなく塗る。
2 シームコートを指で広げる
指で延ばしてさらに均一に広げる。このあとしばらく放置して乾燥させる(指についたシームコートは簡単に剥がれる)
穴や破れの補修をする
フライシートを枝に引っ掛けたり、ボトムが岩に擦れたりして、気づかぬうちに穴や破れが発生していることがある。ここから浸水してしまうので、気がついたらリペアシートで補修しよう。
リペアシートはカラーがあるので、テントの生地の色に合ったものを購入し、写真の手順で補修していく。意外と簡単にリペアできるが、貼った箇所が剥がれてこないようにポイントをしっかり押さえておこう。
1 修理箇所を特定
穴や破れを見つけたら、その箇所以外にもダメージがないか確認。修理箇所とサイズをしっかりと確認しておく。
2 大きめにシートをカット
修理箇所よりも大きめにリペアシートをカット。シートが小さいと生地が引っ張られたときに剥がれやすいためだ。
3 シートを丸く切る
シートに角があるとそこから剥がれてきやすい。角を落としてシートを丸くしておくことで剥がれにくくなる。
4 剥離紙を剥がす
シートに付いている剥離紙を剥がす。このとき接着面を指でベタベタ触ると粘着力が落ちるので注意。
5 穴や破れにシートを貼る
補修箇所が中央にくるようにシートを貼る。貼るときはシワが寄らないように端のほうからゆっくり貼っていく。
6 圧を掛けてより強固に
ドライバーのハンドルなど、丸みがあるもので上から圧を掛ける。こうすることでさらに剥がれにくくなる。
7 裏面も補修
裏面は穴や破れがむき出しの状態。ここから水が入るなどすると剥がれる原因になるので裏面にもシートを貼る。
8 シートを貼って終了
表面と同様の手順で裏面にもシートを貼ったら修理は終了。簡単に剥がれてこないか、最後にチェックしておこう。
ポールのパーツを交換する
ポールは折れていなくても、使っているうちに曲がってくることもある。曲がったまま使い続けると折れやすいので、全体をチェックして曲がりが強かったり、破損箇所があるような場合は早急にポールのパーツ交換をしよう。
メーカーにもよるがアライテントであればひとつの節単位でパーツ購入が可能。交換のみであれば自分でも簡単にできるので、方法をしっかり覚えておきたい。
1 曲がった状態
写真の下のように明らかに曲がっている場合は交換を。逆側に曲げて戻そうとすると折れる危険もある。
2 エンドチップを外す
エンドチップを外してショックコードの結び目を切る。ネジ式になっている場合は反時計方向に回して外す。
3 曲がったポールを抜く
曲がったポールまでショックコードを外していく。曲がったポールは混ざらないように別にしておく。
4 交換パーツを入れる
外したパーツの代わりに新しいパーツを入れ、外した手順とは逆にポールにショックコードを通していく。
5 最後のパーツはコードを引っ張りながら
最後はショックコードが足りなくなるので、コードを引っ張り、それを維持したままポールに通す。
6 エンドチップを戻す
エンドチップにコードを通して結び目を作り、ポールにはめたら終了。ネジ式の場合は時計回りに入れる。
使用&保管時の注意
ポールはしっかりはめる
ポールを組み立てる際に最後までしっかりとはまっていないと、設営時に割れてしまうことがある。
スリーブの途中で押し込まない
スリーブの途中でポールが引っかかることがあるが、途中で押し込むと破損の原因に。端まで入れよう。
荷物を入れたまま引きずらない
バックパックなど重たい荷物を入れたまま引きずるとボトムが傷む。荷物を出してから移動するように。
車中に放置しない
車の中に入れておくと、車内が高温になり劣化しやすい。使用後は車に置きっぱなしにしないこと。
教えてくれた人 アライテント 福永克夫さん
アライテントの広報担当であり、全国から集まってくる修理も行なうマルチプレイヤー。プライベートではテントだけでなく、山行によってはツエルトも積極的に使う。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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