軽量化のためのULノウハウ
PEAKS 編集部
- 2020年02月04日
INDEX
アウトドアギアの進化は軽量化と密接であるがゆえ、当然UL(ウルトラライト)ギアも進化し続けている。近年では、ただ軽いだけではなく、そこにプラスアルファの機能を搭載しているものが多い。所有する楽しみもあるが、ULギアをどう解釈してどう使うか。そこが大事であることを忘れずに。
STAY
軽量化をするうえで、総重量にもっとも大きな影響を与えるギアがシェルターである。目安としては1kg以下。近年、素材や技術の進化によって、一般的なドーム型の自立式テントでも1kgを切るものが出てきている。
より軽量化を図るのであれば、フロアレスシェルター、ツエルト、タープなどを選ぶといいだろう。ただ、軽くなれば軽くなるほどテントに比べて機能が省かれていくので、そこだけは注意しよう。
非自立式のテントなら初心者も始めやすい
自立式のテントは、かならず骨組みとなるポールが必要になるため、そのぶん重くなってしまう。「軽量化したいけどいきなりタープやツエルトにするのは不安……」という人には、非自立式のテントがおすすめだ。
自立式のものに比べると設営は簡単ではないが、それはやったことがないからそう思うだけで、手順さえ覚えれば技術的に難しいことはない。居住性は自立式のものと変わらないものが多いので、違和感なく使用できる。
よりULを体感するならタープやツエルトを
王道を行くのであれば、タープかツエルト。大幅な軽量化を図ることができるだけでなく、自然との一体感をより味わえるところが魅力である。とくにタープは開放感と野宿感が体験できるので、通常のテント泊とはまた異なるおもしろさが発見できるはず。
ただ、そのぶん密閉性は低いため、そこが気になる人はツエルトがいいだろう。いずれもトレッキングポールを支柱にして設営するのでコツはいるが、慣れれば設営も撤収もラクチン。
1本数gの軽量化が、大きなインパクトに
もちろん、テント購入時に付属してくるペグを利用するのも悪くはない。ただ、軽量ではないケースが多いので、ULにシフトするのであれば軽くて丈夫なチタン製がおすすめ。
1本あたりたかだか数グラムの軽量化ではあるが、設営時に使用する本数は8本前後。トータルで考えればかなりの軽量化につながる。あわせて細引きも細くて丈夫なものにするといいだろう。ちなみに、ペグは形状によって特徴が変わるので、テント場の環境に合わせて選ぶこと。
SLEEP
このカテゴリーで重要なのは、スリーピングバッグとスリーピングマットである。いずれも、従来よりも軽量なモデルが販売されているのでそれを購入したり、あるいはカスタマイズしたりすれば、ULになるだろう。
しかし、寒さに関しては感じ方が人それぞれであるため、この季節、この気温ならこれがベストといった最適解を提示することは難しい。自分の体質を考えて、無理のない範囲での軽量化をしてほしい。
暖かい季節であればキルトやフードレスに
スリーピングバッグといえばマミー型が一般的。その軽量モデルもあるが、さらなる軽量化を図るのであれば、筆頭はキルトだろう。
登山用として販売されているもののなかには、背中の上部とフード、ジッパーを省いたものも見かける。就寝時に背面上部のロフトは体重でつぶされ、それほど保温力を発揮しないことを考えて生み出された。寝返りが多く背面の寒さが気になる人にはフードレスという選択肢もある。頭や顔が冷える場合はニットキャップかバラクラバを被ろう。
マットはショートサイズか自分でカットする
スリーピングマットは、大きく分けると空気を入れる「エアマット」とそのまま使える「フォームマット」がある。どちらを使うかはその人の好みや考え方にもよるが、軽くするのであればショートサイズを選ぼう。
つい自分の背丈を基準にしがちだが、足元はバックパックもしくはパックの背面パッドで代用すれば問題ない。フォームマットの場合、自らカットすることができるので、さらなる軽量化も図れる。自分のカラダに合わせてカスタマイズしてみよう。
枕は贅沢品。衣類をまとめれば代用できる
アウトドア用の枕は数多く販売されているし、たしかに寝心地は抜群だ。しかしUL的視点から見ればそれは贅沢品である。だからガマンしろ、というわけではない。あるもので代用することができれば、わざわざ持っていく必要がないというだけのことである。
それが衣類の入ったスタッフサックだ。もし衣類を着込んでしまったのであれば、タオルでもソックスでもレインウエアでもなんでもいい。自分好みの高さや硬さが見つかれば問題なく熟睡できる。
PACK
ULハイキングを象徴するギアといっても過言ではない。雨蓋、フレーム、背面パッドを省いたモデルが多く、生地も極薄。パッキングしないと自立せず、ペラペラでクシャクシャ。
代表格は無駄を削ぎ落としたシンプルなパックだが、近年では、軽量でありながらもさまざまな機能やギミックを搭載したものが増えてきている。なにがあると便利なのかは人によって異なるので、まずは店頭などで実際に試してみよう。
腰荷重が必要なければウエストベルトはなくてもいい
バックパックの重心は上部にあったほうが重さを感じにくい。ショルダーハーネスを絞って背中の上部で背負うイメージである。重い荷物を担ぐ際には、荷重を分散させる上でウエストベルトが重要になってくるが、ULの場合はそうではない。軽量がゆえに腰荷重の必要性がないのである。
だから多くのULバックパックにはウエストベルトがない。簡易的なベルトが付属しているものもあるが、使用しないのであれば外してしまっても問題はない。
スリーピングマットをフレーム&背面パッドの代わりにする
フレームや背面パッドのないULバックパックを、そのまま使ってもとくに問題はない。ただ、より背負い心地をよくし、行動中のブレをなくすのであれば、スリーピングマットを活用するといいだろう。
具体的には、マットを筒状にしてバックパックに挿入して、フレーム&背面パッドの代わりにするのである。あるのとないのでは雲泥の差があるのでぜひお試しを。しかもこうすると、ペラペラのパックが自立するので荷物の出し入れもしやすくなる。
荷物が軽いのであれば頑丈なものでなくてもいい
一般的なバックパックは1㎏オーバーのものが多いが、ULバックパックは数百g程度。それは、フレームや背面パッドをはじめ、さまざまなものを省いているから。
なぜそこまで簡素化できるのかというと、荷物が軽いからに尽きる。ULにおけるベースウェイト(水・食料・燃料などの消費材を省いた重量)の目安は4.5㎏。消費材を入れても10㎏を超えないことが多いため、問題なく背負うことができるのだ。
COOK
荷物で一番重いのは、水と食料。これを減らせば大幅な軽量化になるのだが、命に関わるだけにそう安易には実行できない。食料に関してはフリーズドライ中心にするのがもっとも有効だろう。そうすればお湯を沸かす道具さえあればいい。
結果、ガスストーブである必然性はなく、より軽量なアルコールストーブや固形燃料ストーブをチョイスできる。さらにクッカーも小さくすれば(チタンマグでもOK)かなりの軽量化になる。
お湯を沸かすだけであれば軽量&コンパクトなものを
夕食が手の込んだ料理ではなくフリーズドライ食品の場合、クッカーの役割はお湯を沸かすことである。大抵のフリーズドライ食品に必要な湯量は200㎖程度。さらに温かい飲み物を作るとしても、こちらも200㎖で充分だろう。
そう考えると、クッカーの容量は400㎖もあれば充分なのである。600〜900㎖のソロクッカーが数多く市販されているが、まずは目的を考えてから、最適な容量のクッカーをチョイスしよう。
ストーブの風防やクッカーの蓋をアルミホイルに
アルコールストーブおよび固形燃料ストーブは、ガスストーブと異なり風に弱いというウィークポイントがある。そのため風防の使用がマスト。これは風除けとしてだけではなく、熱効率の向上においても有効である。
チタン製の軽量な風防も市販されているが、クッカーのサイズにピッタリなアルミホイル製の風防を自作すると、より軽量化を図ることができる。自作といっても切って折るだけなので簡単だ。ついでにクッカーの蓋も自作すると、さらなる軽量化になる。
燃料はガスではなく液体もしくは固形を
ストーブを利便性で選ぶのであれば、間違いなくガスストーブになるだろう。しかし、ULを考えたときに軍配が上がるのは、アルコールストーブと固形燃料ストーブである。ストーブ自体が軽いというのもあるが、それ以上に燃料がポイント。
ガスの場合は、必ずガス缶を携行しなくてはいけないが、1泊2泊レベルであれば使い切れずに余ってしまう。でもアルコールおよび固形燃料の場合は、必要な分だけ持っていける。
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文◉根津貴央 Text by Takahisa Nezu
写真◉猪俣健一、廣瀬友春 Photo by Kennichi Inomata, Tomoharu Hirose
イラスト◉大川久志 Illustration by Hisashi Okawa
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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