「船窪小屋」北アルプスの山小屋完全ガイド
PEAKS 編集部
- 2018年03月06日
INDEX
登山者にとって快適な山歩きを楽しむための心強い味方、山小屋。館内施設や食事、成り立ちや売店メニューなど、山小屋の膨大な情報を集約しているので、山行計画に役立つこと間違いなし!
まごころあふれる温かいお宿
一本南のブナ立尾根よりもきつい急登の七倉尾根を登りきったところにある船窪小屋は、小さいながらも温もりを感じられる小屋として根強いファンが多い。
人気の秘訣は、山で採れた素材をふんだんに使った食事と、先代オーナー夫妻のやさしい人柄。この小屋に泊まることを目当てに、1年に6〜7回も標高差1400mの七倉尾根を登ってくる宿泊者もいるという。連泊を楽しむ人も多い。
七倉尾根をのぞくと、この小屋への道は後立山連峰の終点である針ノ木岳と、裏銀座縦走ルートの基点である烏帽子岳から尾根が延びている。だが、そのルートを歩く人は多くなく、ガレ場や崩壊地があるため避ける人が多い。そこで、先代小屋主の松沢宗洋さんは黒部ダムから船窪岳付近への針ノ木谷の古道を地元の有志の協力を得て復活させた。戦国時代に富山の大名・佐々成政が歩いたというこの古道。徒渉を伴うなど楽な道ではないが、歴史を感じられるルートだ。
登山者に愛された小屋主夫妻は、2017年シーズンで引退。長男の宗志さんが管理を引き継いでいる。
ランプの宿の楽しみ方
船窪小屋での夜の過ごし方は、とってもアットホーム。小さな小屋ならではの、ひとつ屋根の下で和気あいあいとした夜が楽しめる。
地のものをふんだんに使った夕食を楽しんだら、宴のスタート。小屋のスタッフが音頭を取ってネパールの民謡「レッサンピリリ」を歌い、宿泊者も壁に貼られた歌詞カードを見ていっしょに歌い、手拍子をうつ。その後、宿泊者が地元の伝承の歌など、思い思いの歌を披露していく。
そして、最後に歌詞カードが手渡されてみんなで「私の好きな船窪小屋」を歌う。この歌は、小屋づとめをしていた女性の歌詞に小屋のファンの方が曲をつけ、小屋の周辺で撮影した風景とともにDVDになっている。小屋ではその映像も見ることができ、この小屋が宿泊者から愛されていることが伝わってくる。
ほかに、宗洋さんが針ノ木谷の登山道整備を行なう様子をおさめたDVDなどもあり、そうしているうちにあっという間に消灯時間を迎えてしまうだろう。
まずはスタッフが先頭を切ってネパールの民謡を披露する。歌詞が壁にかかっており、みんなで手拍子をうちながらいっしょに歌う。
お客さんも交えて盛り上がる。
「私の好きな船窪小屋」作詞/桐村美千保 作曲/橋本良春
私の好きな 好きな 船窪小屋
優しくて飾らない笑顔が素敵なお父さん
温かくて パワフルで 情緒豊かなお母さん
個性豊かなお客さん
ランプの灯りと囲炉裏の匂い
青い屋根と黒い壁の可愛い山小屋(繰り返し)
※2番あり
小屋にはネパールのタルチョ(仏教の経文が入った5色の祈祷旗)がかけられる。
館内施設
囲炉裏をかこむ居間
食堂にもなる居間には囲炉裏がおかれ、円になって食事ができる。七輪ではお湯が沸き、壁には宿泊者からの写真が一面に飾られている。
奥の寝室へとつづく廊下
奥の寝室へは、居間から階段をあがり客室をひとつ通り抜ける。南側の窓からは槍ヶ岳に向かう裏銀座ルートを一望することができる。
小屋特製のランプ
電気がないので、夜はランプの灯りがたより。手づくり陶器のランプはお客さんからもらったもの。
出発は鐘を鳴らしてお見送り
宿泊者が見えたとき、出発するときには鐘を鳴らして安全を祈願してくれる。遠くまでよく響く音。
食事
朝食
小屋の近くで畑を耕している船窪小屋。食事はなるべくそこで採れたものや、山菜をふんだんに使う。朝食は大きなベーコンと目玉焼き、ふきの煮物に、ごはん、味噌汁などがついた。
夕食
名物となっている夕食。白馬村産の紫米を使用したご飯が大きな特徴。おかずは、天ぷらなどを中心に、煮物や豆腐などとにかく品数が多い。ゼリーのデザートなどもついてくる。
お土産・売店
切り絵のポストカードなど、手づくりのお土産のほか、バンダナやTシャツなども売られている。日本酒は地元の名酒、白馬錦を飲むことができる。水も分けてもらってから出発しよう。
部屋
居間から階段を3段あがると客室。1部屋10畳ほどの部屋がその奥とあわせて2室あり、ともに2段ベッド方式。それぞれに「われもこう」「シラネアオイ」といった小屋周辺で見られる植物の名前がついている。
洗面所・トイレ
トイレはいちど外に出たところにあり、バイオトイレを採用している。
テント場
テント場は小屋から距離がある。水場は足場の悪い急斜面を下るので、暗くなる前に汲んでおこう。
DATA
設営数:10張
利用料:500円/人
水場:徒歩5分
小屋からの時間:30分
地面:土
トイレ:あり
「船窪小屋(ふなくぼごや)」の基本情報
設備
テント場:あり
水場:なし
個室:なし
自炊室:なし
乾燥室:なし
お風呂:なし
生ビール:なし
営業期間
7月1日〜10月上旬
電話・電波
ドコモ:良好
au:良好
ソフトバンク:良好
公衆電話:なし
収容人数
50人
標高
2,450m
宿泊料金
1泊2食:9,500円
素泊まり:6,500円
お弁当:700円
連絡先
080-7893-7518
http://funakubogoya.net
※2018年2月現在の情報です。営業時間や定休日などは変更となる場合がございますので、お出かけ前にご確認ください。
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- PEAKS
- CREDIT :
- テキスト/渡辺幸雄 森山憲一 写真/宮田幸司 仁田慎吾 野口祐一 後藤武久 宮上晃一 渡辺幸雄 杉村 航 新井和也 井上大助 森山憲一 高橋庄太郎 岡野朋之 亀田正人 梶山 正 三宅 岳 内田 修 矢島慎一 加戸昭太郎 星野秀樹 西田省三 太田孝則 中村成勝 泥谷範幸 大森千歳 宇津木昌樹 山小屋提供
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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