「槍平小屋」北アルプスの山小屋完全ガイド
PEAKS 編集部
- 2018年03月23日
INDEX
登山者にとって快適な山歩きを楽しむための心強い味方、山小屋。館内施設や食事、成り立ちや売店メニューなど、山小屋の膨大な情報を集約しているので、山行計画に役立つこと間違いなし!
槍へ向かう最短ルートの玄関口
新穂高温泉からコースタイムで約5時間、緑に覆われた沢沿いの登山道を抜けると見えてくる赤い屋根の小屋が槍平小屋。もともとは、新穂高温泉から槍ヶ岳への荷継場所として使われていた歴史を持つ山小屋だ。
この小屋の特筆すべきポイントのひとつは、北アルプスの山々から流れ込む沢沿いに建つため水が美味いこと。この水を使った食事やコーヒーを味わうためだけでも、足を運ぶ価値があるという常連も多い。
もうひとつは、槍ヶ岳への中間点に位置するため、歩行時間がほどよく、初日の宿泊地として大変便利な立地にあること。健脚の人であれば、小屋やキャンプ場に余分な荷物をデポしたまま、軽装で槍ヶ岳山頂までいっきに往復してくるなんて利用方法も可能だ。
おすすめの時期は、10月初旬から始まる紅葉シーズン。部屋の窓からは穂高連峰を望むことができ、真っ赤に燃える木々に囲まれて過ごす時間は格別だ。
稜線上や山頂近くに建つ小屋とはひと味違う、贅沢な山時間を提供してくれる小屋である。
新穂高温泉から槍ヶ岳に向かう玄関口
新穂高温泉から沢沿いを経由して登れるさまざまな山のちょうど中間地点にあるため、どこの山に登るにもなにかと便利な立地にあるのが槍平小屋の特徴だ。一番人気のあるルートは、やはりここからさらに沢沿いを歩いて槍ヶ岳に向かうルート。槍ヶ岳に登頂するルートとしては、このルートがどこのルートよりも歩行距離が短い。上高地から槍沢経由で向かうルートに比べると5km以上も違うのだ。キャンプ場でテントを張り、軽装で槍ヶ岳までピストンするのもおすすめ。
さらには、急な登りを南岳方面の稜線に向かうチャレンジングなルートもあり。4時間近い登りを強いられるものの、稜線に出てしまえば、右手に穂高連峰、左手に槍ヶ岳、正面には常念岳、そして背後に笠ヶ岳と、なんともいえない絶景のご褒美があなたを待っている。
あまり知られていないが、奥丸山に登るルートもある。奥丸山の向こう側の沢沿いにあるわさび平へと抜けることもできるため、槍平小屋を拠点に歩けるルートのバリエーションはとても豊富。どのようなルートを組み立てるかはまさにあなた次第。季節と目的、体力と相談して北アルプスを楽しみ尽くしたい。
小屋の裏手にあるテント場の手前にあるのは冬季小屋。冬場の槍ヶ岳に向かう登山者たちが重宝しているこの小屋、じつはあの加藤文太郎も泊まったのだとか。
館内施設
談話室
談話室は和室なので、のんびりと足を伸ばしてくつろげる。よく見ると、そこかしこに支配人の好きなチベットを思わせる装飾が飾られている。
乾燥室は薪ストーブ
乾燥室に使われているのは、クラシックな薪ストーブ。薪を使うのも沢に位置する小屋ならでは。
穂・穂高のふもと
窓の外には雄大な穂高連峰が連なる。電気は発電機、ソーラー、水力のミックス。充電できるコンセントもあり。
沢沿いに建つ小屋なので水が豊富。キンキンに冷やされた飲み物でノドを潤したい。コーヒーも絶品だ。
お土産・売店
登山口が比較的近いからか、飲み物、菓子類の種類が非常に多い。槍ヶ岳や南岳へ向かう際の行動食、おやつの補充に利用したい。
食事
写真は広々とした食堂スペース。食事の具材は山のものが中心。標高がそれほど高くなく、北アルプスの山々から雪解け水が流れ込む沢の水を使うため、とにかくご飯がおいしい。同じく沢の水を使ったコーヒーも名物のひとつ。
部屋
涸沢岳から西穂高岳まで一望できる部屋は個室とカイコ部屋の2種類。平日に限り、先着3組まで追加料金なしで個室を利用可能。60歳以上や小学生以下、連泊の宿泊者には割引もあり。
洗面所・トイレ
水が豊富なため、トイレは簡易水洗式を採用。白と木目を基調にした清潔なスペースだ。水道の水は飲用可能。槍ヶ岳登頂に備えて、美味い水を汲んでおこう。
テント場
小屋の裏手にあるテント場までは徒歩1分。敷地内にトイレと水道もあるので使い勝手がいい。
DATA
設営数:50張
利用料:1,000円/人
水場:あり
小屋からの時間:徒歩1分
「槍平小屋(やりだいらごや)」の基本情報
設備
テン場:あり
水場:あり
個室:あり
自炊室:あり
乾燥室:あり
お風呂:なし
生ビール:なし
営業期間
7月1日~10月初旬
電話・電波
ドコモ:不安定
au:不安定
ソフトバンク:不安定
公衆電話:なし
収容人数
80人
標高
1,985m
宿泊料金
1泊2食:9,300円
素泊まり:5,800円
お弁当:1,200円
連絡先
090-8863-3021
http://yaridairagoya.sakura.ne.jp/
※2018年2月現在の情報です。営業時間や定休日などは変更となる場合がございますので、お出かけ前にご確認ください。
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- PEAKS
- CREDIT :
- テキスト/渡辺幸雄 森山憲一 写真/宮田幸司 仁田慎吾 野口祐一 後藤武久 宮上晃一 渡辺幸雄 杉村 航 新井和也 井上大助 森山憲一 高橋庄太郎 岡野朋之 亀田正人 梶山 正 三宅 岳 内田 修 矢島慎一 加戸昭太郎 星野秀樹 西田省三 太田孝則 中村成勝 泥谷範幸 大森千歳 宇津木昌樹 山小屋提供
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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