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隠れ3000m峰と公認3000m峰。その境界を決めるもの

日本の山岳世界にあって3,000m峰は最上級のステータス。ところが3,000m超との数値が地形図上に記載されていながら、リストから漏れてしまう山もある。いわば隠れ3,000m峰。その理由を検証してみたい。

隠れ3,000m峰と公認3,000m峰。

3000m峰のリストに入った、ある意味公認の山々を見てみると、北岳、奥穂高岳、槍ヶ岳といった百名山クラスの名峰のほかに、前穂高岳、涸沢岳、大喰岳、荒川中岳など、近隣著名峰の属峰ともみなせる山が含まれている。

一方、同じ属峰格でも不遇な(?)隠れ3000m峰がある。白山岳、ジャンダルム、荒川前岳、小赤石岳、中白根山、農鳥岳、雄山などがそれである。
なぜ公認3000m峰と明暗を分けたのか。隠れ3000m峰は、「一人前の山として認められなかった」ことにほかならない。

これは「山の独立性」、つまりはほかの山と明瞭に区別できるかどうかの視認性によるものといえる。

奥穂高岳山頂からのジャンダルム。山頂との間には馬の背などの難所もある。間近で見るとかくも立派な岩峰だが、遠目には稜線上の小さなコブにすぎない。

具体的には、①隣の峰との距離、②山そのものの突起の程度、この2点を考察してみる。
①隣峰との距離:近隣の山とある程度の距離を置いていないと独立した山とは認めがたい。これは地図上での相互の直線距離を計測すればよい。

②突起の程度:たとえ距離があっても、その山自身にある程度の突出性がないと、独立した山とは認めがたい。その指標として、隣峰との最低鞍部からの標高差を求める。

③独立度係数:①と②の2条件を統合的に検証するために、「標高差+距離の10分の1」を算出する。むろんこれは学問的裏づけがあるものではなく、この場での筆者の思いつきである。

国土地理院発行「日本の山岳標高一覧」による

表は、上半分が隠れ3000m峰、下半分が公認3000m峰である。いずれも近隣の山を計測対象としての数値だ。ただし距離や高度差は正確なものではなく概数である。

③の独立度係数で比較してみると、概ね隠れ峰のほうが下位に位置している。中白根山はやや数値が高いが、さすがに②の標高差が50m未満では独立峰として認定しづらいのではないか。白山岳や雄山もその例に当たり、これらは係数算出以前に除外していいのかも。

公認山では、中岳が独立峰と認めるにはいささか厳しい数値だが、計測対象を北側の大喰岳ではなく南側の南岳とした場合はまずまずの数値が出る。大喰岳とセットでひと山とみなせば充分に独立峰の資格があるということだ。

その他の公認クラスの山は、それなりの数字が出ている。さらに主峰格の北岳や悪沢岳になると、がぜん数値が高くなる。やはり単独で百名山に選ばれるような山は、大いに独立性に富んでいるというわけだ。

ひとつの山を独立した主峰と見るか、属峰と見るか、その判断は個々人の見た目による勘の集積によって決まってくるのだろう。それが数値的に裏を取ってみると、なかなかいい線をいっていることがわかった。

隠れ3000m峰は、その検証に格好の素材となってくれたわけである。もちろん、隠れ峰であってもコアなファンはどこかにいるはず。公認から漏れた不遇さゆえに贔屓に思う人がいてもいい。山の好みに境界はないのだから。

Profile

樋口一郎

1960年生まれ。山の些事を関連付けて体系化する「山岳学」を提唱する「山岳学思索の虫」。「葉月山の会」にて名岳研究班を主宰。著書に『ニッポンの山 解体新書』『湘南・三浦半島 山から海へ半日ハイク』『新釈日本百名山』(すべて東京新聞刊)、『安全登山の基礎知識』(共著・スキージャーナル社)などがある。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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