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【月】なぜ山に登るのか|タキザーさんちの親子登山《やまいく》

おもいきり子どもを自然のなかで遊ばせたい。 と子育てにいそしむタキザーさんが、せっせと親子で山に行くうちに、 子どもから教えられた新たな登山の楽しみ。 そんな経験や発見を通し、親子登山の魅力を伝えます

文・写真◉滝沢守生 Text&Photo by Morio Takizawa
出典◉PEAKS 2012年10月号 No.35

「なぜ山に登るのか」

昔からこの問いが繰り返されているのは、山登りをしたことがない人にとって、登山という行為が、とても奇異なものに映っているからにほかなりません。昨今の登山ブームのおかげで、いまではずいぶんと日本でも市民権も得てきましたが、今も昔も、山登りの魅力は、一般の人にはなかなか伝わりにくいものなのかもしれません。

ましてや、幼い子どもにとっては、なぜあんなにお父さんは山に登りに行きたがるのか、なぜ自分を山に連れて行きたがるのか、不思議でならないようです。「なんで山に行くの?」子どもを山に誘うと、思いがけず胸元に直球が投げ返されてきました。

「うーん、そこに山があるからだよ」とは言えず、お父さんとしては、ちょっと考えてしまいました。たしかに、子どもにとっては、お休みともなれば、山よりも、遊園地であったり、暑ければ海やプールであったり、見るからに楽しそうなところに行きたいに決まっています。

わが家でもこれまで、いろいろといっしょに山登りに行きましたが「まあ、お父さんがそこまで言うのなら、行ってあげてもいいよ」的なところで付き合ってくれていたにすぎなかったのです。あらためて、本質的なところを問われると、なぜ親子登山なのかをいま一度ここではっきりとさせておいた方がいいのかもしれません。

この連載のタイトルを「やまいく」としたのは、もちろん「山に行く」という意味もありますが、山での子育て「山育」という意味にほかなりません。子育てというと、普段はなにもしていないクセにと母親に怒られてしまいそうですが、親として自分にできることはなになのかと真剣に考えたとき、自分にはそれが山登りだったのです。だれでも、初めて自分が親となったとき、生まれたばかりの子を前に、うれしさと同時に、本当にこの子を育てていくことができるのだろうかという、漠然とした不安と責任が両肩にのしかかります。

山では突然こんな恐ろしい野生動物も出てきますが、ときには姉弟が力を合わせて勇敢に戦うことも必要です

それでも、親は毎日を必死に生きて、子どもを育てていかなければならないのです。そうして、子どもはなんとか成長し、独り立ちをして、また自らが親となり、新たな命を育んでいくのです。そのような成長の過程で、親としてなにをしてあげられるのか、裕福な家庭ならまだしも、子どもに残せるものなどなにひとつありません。

ひとつあるとすれば、教育です。最近では教育にもお金がかかるようですが、それは本当の教育ではありません。教育というのは、すなわち「生きる力」をつけることなのです。どんな生き物でも、外敵から身を守り、エサを探し、自らで生きていく術を子どもは親から学びます。それが本来でいう教育の本質です。塾に行って、いい学校に入って、いい会社に入ったからといっても、それは生きていくためのひとつの手段でしかありません。

話がそれてきましたが、山登りというのは、「生きる力」が身につく、とてもいい学びの場だと思っています。ほかのスポーツと違って、山登りには生活力をはじめとした生きるための総合力が要求されます。抗いようのない自然環境にさらされ、食べて、寝て、また登る……。絶えず自分の位置を地図上で俯瞰しながら、置かれた状況を把握し、自らの足と頭で考え、判断して行動する。

そこには、観客もレフリーもいなければ、得点も順位もありません。そんな掛け値のない無償の行為だからこそ、自らの生きる力が試されるのです……。とここまで書いていたら、ちょっと自分でも親子登山が恐ろしくなってきました。

これじゃ、やっぱり、なかなか子どもには理解できませんね。楽しく子どもといっしょに「山に行く」ことで、自然とそんな力が身に付けば、たのもしい限りで、それが「山育」ということになるのかもしれません。

山で俯瞰力を養う

社会で生きていくうえでとても必要な力が俯瞰力です。自分の置かれた状況を客観視し、物事を大局から見通すことで、利己にとらわれない、的確な判断をする。登山では絶えず地図を見ながら行動することで培われる力でもあり、頂上から見わたす世界を「下界」などと言ってしまうのも、まさに世の中を俯瞰しているからにほかなりません。

今回の子どもと行くおすすめ山ルート

長野県・乗鞍岳

手軽にアルプスの3,000mの高峰へと登ることができる乗鞍岳は、休日ともなれば数多くの登山客を迎えている。登山口となる標高2,700mの畳平までは、マイカー規制がされているが、長野県側からも、岐阜県側からも、それぞれアクセスバスが出ているのでアプローチも楽チン。

頂上となる剣ヶ峰までの登山道は整備され、危険個所もほとんどなく、往復で約4時間。しかし3,000mの高峰であることを忘れてはならない。ひとたび荒れれば、厳しい気象条件となるので注意しよう。装備はもとより、天候が悪ければ登山は中止しよう。無理をして頂上をめざさなくとも、山麓の一の瀬園地周辺には数多くのハイキングコースも整備され、これからの季節は、白樺の森に映えるナナカマドに彩られた紅葉が美しい。

畳平駐車場〜(45分)〜肩ノ小屋〜(70分)〜乗鞍岳剣ヶ峰〜(50分)〜肩の小屋〜(45分)〜畳平駐車場  *登山道は整備されているが、登山客が多いので、剣ケ峰付近の落石などには充分注意が必要。また、標高が高いので、高山病にも注意したい。

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PROFILE

滝沢守生

PEAKS / ヨンロクニ代表

滝沢守生

ウラヤマからヒマラヤまで、長年にわたり国内外で登山活動を展開。山岳専門出版社勤務を経て独立。現在はアウトドアや登山の雑誌・書籍の編集、野外イベントの企画制作を行う。 

滝沢守生の記事一覧

ウラヤマからヒマラヤまで、長年にわたり国内外で登山活動を展開。山岳専門出版社勤務を経て独立。現在はアウトドアや登山の雑誌・書籍の編集、野外イベントの企画制作を行う。 

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