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秋山を登るための基礎レッスン

秋山でよくある失敗やピンチ、予期せぬ事態について、山岳ガイドである笹倉さんが対処法を指南。知ることで避けられることも多々あるので、まずは一読。トレーニング山行で実践しながら技術や経験を身につけよう。

文◉木村和也/wa・nal Text by Kazuya Kimura
イラスト◉善養寺ススム Illustration by Susumu Zenyoji
出典◉PEAKS 2017年10月号 No.95

【準備編】

SCENE:01 入山前の心得を教えてください!

下界の冬が山の秋だと意識して。

秋は紅葉の季節。加えて空気が乾燥して、展望がよいのも魅力です。けれど、忘れがちな心得に「山の秋は下界でいえば冬ということ」があります。たとえば、標高3,000m を超えるところでは、10月になれば降雪は当たり前、と考えておきましょう。

まだ雪や寒さに慣れていない身体で薄く雪や氷がついた岩稜帯を歩くことは、“冬の体”ができて雪や氷に慣れた真冬時期に山を歩くときよりも、ある意味注意が必要ともいえるでしょう。

だから、秋山は夏山のたんなる延長と思わず、秋山は冬山の入口だと考えるのが大切です。そして、装備は防寒と雪対策のふたつを念頭に計画することがポイントとなります。

SCENE:02 秋山の情報収集のポイントは?

紅葉や登山道はもちろん、水場も忘れずに。

その年の気象条件と台風に影響を受けやすい紅葉は、見ごろの最盛期は一週間から10日ほど。紅葉のベスト時期を狙うのなら、意外と期間が短いことに注意が必要です。一般に、早いところで9月半ばから紅葉は始まり、低山であれば11月下旬まで楽しめるので、時期にあわせてエリアや標高に応じて山を選ぶというのもひとつの選択肢です。

紅葉適期は地元観光協会に問い合わせれば例年の傾向を知ることができますが、一番はそこで生活もしている現地山小屋スタッフからの情報です。その年の現況や傾向などの詳細を教えてくれることでしょう。

問い合わせ時には、紅葉や登山道の状況などのほかに、水場についても聞いておくと無難です。年にもよりますが、夏に湧いていた水が秋には涸れる、ということもあるからです。山小屋に宿泊を考え、また、混雑を避けたいのであれば、予約状況なども聞きましょう。

SCENE:03 アクセスで注意することは?

秋はダイヤ変更の季節。事前に確認して。

夏山登山で下見も万全。装備チェックも完了。いざ、秋山へ! そんなはやる気持ちの前に注意したいのが登山口までのアクセスのこと。秋はダイヤ改正の季節です。会社ごとに改正時期は異なりますが、夏のハイシーズンに運行していた公共交通機関でも、秋にはぐっとその運行本数が減っていたり、週末のみの運行になっているなど、運行ダイヤが大きく変更になることがあります。

アテにしていたバス便がなかった、あったけれど週末運行のみだった……なんて、現地で気づいても遅すぎます。また、行きだけでなく、帰りのダイヤの確認をしておくことも、山に向かう前の大切な確認事項です。

SCENE:04 秋は管理人がいない小屋もある?

営業期間はエリアによって大きく異なります。

山小屋の営業期間はエリアによって大きく異なります。営業期間が長い北アルプスは11月頭までやっていたとしても、たとえば上越や東北の山小屋では、8月いっぱいで営業を終了、たとえ10月まで営業していたとしても週末のみ、という山小屋もあります。

目的のルート上にある山小屋の営業期間、営業していない場合の避難小屋利用の方法、水場などについては、最低限調べておきたいポイントです。

 

SCENE:05 注意したい天気図について教えてください。

秋雨前線と台風のふたつがポイントです。

気象庁の今後の長期予報によると、9月は天気が周期的に変わり、10月は平年よりも晴れが多く、11月は平年通り曇り、雨、雪の天気となりやすいそうです。こうした天気概況の上に、とくに秋に注意したい気象条件は秋雨前線と台風のふたつです。秋雨前線が停滞するような場合、長期間にわたって悪天をもたらします。

沢沿いの登山道では鉄砲水などに注意が必要です。また、台風の進路にも留意が必要です。一般に台風の中心に対し、右側半円では風が強まりやすく、その風向によって山間地の天気は大きく左右されます。また、台風一過は好天といわれますが、台風の進行速度が遅かったり、気圧の谷の影響を受けると、通過後の好天が望めないことがあります。

加えて留意したいのが、台風と秋雨前線の併合です。この現象が発生すると長期間の悪天が続いたり、局地的な豪雨が発生したりすることがあります。シビアな気象条件を生み出しやすいので、とくに注意してください。

SCENE:06 秋山装備で注意すべきことは?

「 冬を想定」した考え方で!

秋山は夏山の延長ではなく、秋山装備は「冬を想定」して装備計画を立ててください。とくに穂高連峰や剱岳などの標高3,000m 級の岩稜帯に入山する場合は、クランポンやアイスアックスは必携装備です。

冬を想定しますので、当然グローブや帽子も冬のものを用意してください。さらに秋に必携すべきアイテムとしては、防寒対策としてのインシュレーションジャケット、照度200 ルーメン以上のヘッドランプ。

頭部だけでなく、頸部からの放熱も意外と多いので、インシュレーションジャケットはフード付きのもののほうが、山では汎用性が高くなります。また、夕暮れが夏に比べて早くなる秋は、とくにヘッドランプにはご注意を。

SCENE:07 秋山のレイヤリングについて教えてください!

同じく「冬を想定」してください!

こちらも「冬」で考えてください。冬のレイヤリングとは、「吸湿性、吸水性、蒸散性に加えて保温性の高いベースレイヤー・断熱性の高いミッドレイヤー・防風かつ防水透湿性を実現するシェルレイヤー」の3層構造でウエアを構成することです。ベースレイヤーはウールやポリエステル素材を使ったものを選びます。

その保温力でアイテムを選べますが、もっとも薄手のもの、厚手のものの2種類を選んでおけば、条件にあわせて使い分けられるので便利です。秋のミッドレイヤーは、薄手の断熱材を使ったインシュレーションジャケットがおすすめです。

とくにダウンジャケットは軽く、かさばらないうえに優れた断熱性能を持っています。最近でてきた化学繊維とのハイブリッドモデルは、コストパフォーマンスに優れています。こちらもまた、条件にあわせて使い分けるのがベストです。

シェルレイヤーはとくに防風に注意してください。夏専用の薄手の雨具はシビアな天気には対応できません。フードや手首周りなども確認し、しっかりと防風できる冬対応のジャケットを選ぶのがポイントです。

【行動編】

SCENE:01 思っていたより早く日没が……

15時には行動終了! のつもりで計画を。

秋の日は釣瓶落とし……といわれるほど、秋の夕暮れは日に日に早まっていきます。たとえば長野県の9月の日没が18時半ごろだとしても、10月になれば17時半ごろ、11月になれば17時ごろになってしまいます。

また、日の出も冬に向かって遅くなり、そのため11月は9月に比べ、行動時間が約30% も短くなるのです。加えて南中高度が低くなるため、日差しによる加温量が低く、早い時間から気温が下がってしまいます。だから、行動は15時に切り上げる計画を立てるのが基本なのです。

同時に行動中はコースタイムと自分のペースを常に把握し、目的地への到着時間が遅れそうならムリせず早めに引き返すのも大切な行動指針のひとつです。

SCENE:02 スマホ起動中に電池が切れた!!

アプリは使い方に注意!

電池が必要な登山アイテムの代表に、携帯電話があります。とくに携帯電話は万が一の遭難時の最後の通信手段です。安全地帯に下山するまでにバッテリー残量ゼロ、なんてことにならないよう注意することが必要です。

写真や動画撮影もさることながら、ナビゲーションアプリなども電池を大きく消耗する要因です。使用時は電池の消耗にも留意しながらアプリを使うことが大切です。また、モバイルチャージャーも必携アイテムです。

仮に山小屋から電源をとる場合、必ず許可をとりましょう。小屋によっては有料の場合もあるので、電気泥棒は厳禁です。とくに気温が低い条件などのときには、電話自体を肌身に密着させ温度を下げないことも、バッテリー消耗を軽減させる工夫です。

SCENE:03 なんだか、足下が滑って滑落しそうな場所があります……。

歩行技術が第一。普段の山行でトレーニングを。

秋に限らず、遭難の主因のひとつは転滑落。普段の山行や夏山で、登り・下りともしっかり地面に接地して歩く基本の歩き方をマスターするのが第一段階。次に大切なのが地面をよく見て歩くこと。

秋は落ち葉などで登山道の凹凸がわかりにくいだけでなく、場所によっては積雪があったり、氷結したりもしています。登山道の状況を確認しながら歩きましょう。最後のポイントはトレッキングブーツで山に登ることです。

ハイキングシューズやアプローチシューズ、トレランシューズなどは濡れに対して弱いだけでなく、クランポンに対応していないので、万が一の雪や氷に対応できません。登る前に自分のトレッキングブーツにクランポンを装着し、ブーツとの相性を確認しておくことも忘れずに。

SCENE:04 岩場、クサリ場に長蛇の列が……。こんなときに注意することは?

落石には厳重注意!

紅葉時期はとても短い。人気エリアに人が集中、悪場の通過時等、登山者待ちで動きがとれなくなるようなことがあります。その際注意したいのが落石です。下に人がいる場合、とくに注意が必要です。

また、登山者が集中するような場合、いつまでたっても下りることができなくなることもあります。おたがいに声をかけ、登り・下りの流れがよくなるよう配慮しましょう。また、岩の上にうっすらと雪が積もっていたり、薄い氷が岩に張り付き黒光りしているような場所は注意してください。

こんな景観は登山道が「非常に危険」な状態に陥っているサイン。こんなときは行動せず、その場で引き返すのが安全です。

SCENE:05 登山中に気をつけるべき体のトラブルを教えてください!

低体温症にご注意を。

人はもともと寒さへの適応能力が高くないため、寒冷にさらされると脳や内臓の温度(深部体温)が下がります。この深部体温が35℃以下になった状態を低体温症と呼びます。低体温症は風や濡れによって引き起こされ、適切な対応をしないと死に至ることもある危険な状態です。

一方で低体温症は知識で防ぐことができます。低体温症の初期症状は震えです。活発な震えが始まり、意識が正常であれば軽度の証拠。この段階で「食べる」、「風雨を避ける」、「保温する」、「体を温める」の4つの処置をするのが大切です。

なお、低体温症が山中で発症した際、死亡に至る可能性がとても高くなります。低体温症になってからの処置を知っておくことも大切ですが、そうならないように防風・濡れ対策をするなど、行動自体を管理することがそれ以上に重要です。

SCENE:06 もしかして、あれは森の住人?

相手を刺激しないことが第一!

とくに秋には、たがいに予期せぬクマとの遭遇がないわけではありません。距離が離れていたり、相手が気づいていない場合には、相手の視界から消えればよいでしょう。けれどもし、クマなどに登山道でばったり遭遇したら……。

まずは落ち着くことです。一般的には次の対応をとるのがよいといわれています。まずは相手を刺激しないようようやさしく話しかけ、クマとの間に障害物(立木など)ができるよう距離をおきます。ここで立ち去ってくれればベスト。

もしここで威嚇してくるようなことがあっても背中をみせず、落ち着いて相対します。もしあれば、このタイミングでクマ撃退スプレーを噴射。さらに襲ってくるようなことがあれば、気合い一発闘うか、防御するには頭部と頸部を守りながら背を上にしてダンゴムシのように丸まるのが得策です。

一般にクマの攻撃は1分以内といわれているので、防御態勢に入ったらひたすら耐えます。その先は……状況に応じてその場で考えてください、とお伝えすることしか私にはできません。幸運を祈ります!

山岳ガイド・笹倉孝昭さん

1966 年生まれ。公益社団法人日本山岳ガイド協会山岳ガイドステージⅡ。クライミング講習や岩稜ガイドを中心に活動。著書に『高みへ大人の山岳部』(東京新聞出版部)がある。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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