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山酒の魅力を語り合う featuring東北

アウトドアの愛好家に知られている名山が多い東北には、山にゆかりのある日本酒が沢山あるのをご存知ですか? アウトドアと日本酒のプロが、山と酒の話題を交えながら美味しい話をご紹介します。

文◉山内聖子 Text by Kiyoko Yamauchi
写真◉廣瀬友春 Photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2017年10月号 No.95

山好きと酒好きが語る。

涼しい風が吹いて、ようやく秋めいてきた某日。山や野外での楽しみを提案するアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんと、唎き酒師で呑むライターの筆者が、山がつく日本酒〝山酒〞の魅力を語り合いました。

<山内> 長谷部さんは全国の山に行かれる機会が多いと思いますが、現地で日本酒は飲みますか?
<長谷部> ええ、もちろん飲みますよ。蔵王や会津磐梯山に登ったときは、麓で同じ銘柄のお酒を味わいました。僕も山内さんと同じく、日本酒をぐびぐび飲むのが好きです(笑)。

<山内> あぁ、それは良かった(笑)。私はほとんど山に登る機会がないのですが、〝山〞がつく日本酒を見ると、しみじみと故郷を思い出すように、山の風景を想像しながら飲みたくなります。

<長谷部> うん、わかります。お酒を調達するときは、できれば山に行く途中の道の駅やお土産店で買うようにしていて。せっかく山を眺めながら飲むので、地元で買えるお酒を飲んだ方が格別に旨いですよ。同じ山の銘柄なら、なおさらです。あとは、お酒といっしょにつまみも買えばもっと最高です。地元の漬物や珍味なんて日本酒にぴったりですよ。

<山内> うわ~、いい! 絶対に美味しいですよ。妄想だけで、私は日本酒が飲めそうです(笑)。アウトドアが素人の私ですが、もし、山や野外で飲むとしたら、お勧めの道具はありますか?

<長谷部> まず、ぐい呑みや盃などの酒器は持って行きたいですよね。
<山内> え、それは意外な答えです。

<長谷部> 野外というとよくプラスチックのカップやグラスを持って行きがちですが、やっぱり本物の酒器で飲んだ方が美味しいですよ。山という景色があって旨い日本酒がある。そこにお気に入りの酒器があれば気分がぐっと上がります。

<山内> たしかに、いいなぁ。日本酒は飲む器によって味わいが変わるので、なにで飲むかが大切なんです。
<長谷部> なるほど。東北の日本酒ってどんな特徴がありますか?

<山内> 最近はいろんなタイプの味があるので一概にはいえないのですが、東北は日本のなかでも水が柔らかい地域なので、ソフトな甘みがあって透明感がある日本酒が多いですね。漬物や珍味にも合いますし、干物もいいですよ。

<長谷部> おお! 僕は、山で炙りものをするのが好きなので、必ずシングルバーナーを持って行きます。イカの一夜干しやビーフジャーキーを炙って燃やしながら香ばしい匂いでも飲む(笑)。コッヘルで熱燗することもあります。

<山内> それ、たまらない! 私だったらガブ飲みしちゃいそうです(笑)。
<長谷部> ははは。でも、ガブ飲みするときはちゃんと山に泊まらないと帰りが危ないですよ。次回は、山で飲みながら対談したいですね。

<山内> ほんとですね。思わず一升瓶を担いで山に行きたくなりました、ぜひ〝山酒〞のご指南をお願いします!

山で日本酒を飲むときに、持参したい必需品

山酒では、お気に入りの酒器を持って行き、気分を盛り上げたい。大ぶり厚手のぐい呑みや猪口など、豪快に飲めるタイプがお勧め。写真はスノーピーク/酒筒Titanium&お猪口Titanium。肌寒くなる季節は、徳利やチロリで熱燗するのも格別だ。

山酒の気持ちを上げる、割れやすい酒器や徳利などの小道具は、ぜひコンパクトなグラナイトギア/エアセルブロックに入れて持ち歩きたい。クッション性があって、大切な器を衝撃から守ってくれる。「自宅で使っている酒器ならば、ゆるゆると家呑み気分も味わえそう」(筆者)

東北には、名山の名前がついた日本酒が数多くある。山の麓の伏流水を仕込みに使っていたり、酒蔵から山が見えるということが由来で銘柄に名付けたというところや、ゆかりのある山の絵を描いたラベルも。

東北は全国的にみて軟水のためソフトなタッチの味わいが多く、華美ではないがしみじみと美味しい日本酒ばかりだ。山の風景とともにいただくお酒は、格別に旨いはず。ぜひ、山に登る時に持参してはいかが。

青森

八甲田おろし 純米大吟醸 華想い40

冬には八甲田山から冷たい風が吹いてくる厳寒の地にある酒蔵の酒。八甲田山の伏流水と、青森の酒米「夢想い」を使った。キュートな吟醸香となめらかな口当たりが特徴で、やわらかい余韻が静かに続いていく。少し冷やすか常温までの温度帯をおすすめしたい。
問:鳩正宗 TEL.0176-23-0221

青森

白神 山廃純米酒

白神山地の麓にある酒蔵で造る酒。山廃という自然の微生物を生かした酒造りから生まれた味は、ふくよかな米の旨味があり適度な酸が全体を引き締めている。白神山地から流れてくる水を思わせる、優しい透明感もある。常温からお燗にしてじっくりと味わいたい。
問:白神酒造 TEL.0172-86-2106

秋田

純米大吟醸 鳥海山

ブナの豊かな森から浄化された鳥海山の清らかな水と地元で育てた美山錦をもとに誕生した日本酒。ハッと目が覚めるような華やかな香りと、繊細なタッチの旨味が特徴。山に行った際は、沢の水でほどよく冷やしてどうぞ。気分が華やぐ味わい。一杯目にどうぞ。
問:天寿酒造 TEL.0184-55-3165

秋田

太平山 純米大吟醸 天巧

地元の人たちに親しまれている太平山に由来した日本酒。手間暇も技術も必要な自然の微生物を生かした、生酛造りで醸した。麹も掛け米もすべて山田錦を使用。青リンゴのような爽やかな香りがあり、ぜひ冷やして飲みたい。喉越しもよく、米の穏やかな旨味もあり。
問:小玉酒造 TEL.018-877-2100

岩手

あづまみね 純米吟醸 美山錦

蔵の近くにある東根(あづまね)山から流れる伏流水を仕込み水のベースにしているため、「あづまみね」と名付けた。ふくらみのある優しい旨味があり、穏やかで飲めばホッとする味がする。ぽちゃっとした甘みも愛らしい。常温でゆるゆると飲んでいたくなる。
問:我妻嶺酒造 TEL.019-673-7221

宮城

純米大吟醸 蔵王昇り龍

こっくりとした米の旨味があり、ゆっくり味わっているとやわらかい甘みが口のなかで広がってくる。蔵王連峰の伏流水と冬に吹きすさぶ寒風を生かした酒造りを行っている酒蔵の酒。少し冷やした状態からの常温がおすすめ。蔵王連峰を思いながら盃を傾けたい。
問:蔵王酒蔵 TEL.0224-25-3355

山形

銀嶺月山 純米大吟醸 山田錦・出羽燦々

名水百選に選ばれた月山の麓に酒蔵はある。月山の雪解け水を使い、山田錦や出羽燦々をていねいに磨いた米を使用して造られた酒。上品な吟醸香と優しい感触の旨味があり、雪解け水のように、儚く消える余韻は口惜しくなるほど。ゆったりとした気持ちで味わいたい。
問:月山酒造 TEL.0237-87-1114

山形

純米大吟醸 羽黒山 美山錦

水のやわらかさと透明感が伝わってくる味わい。最初は優しいタッチだが、徐々に米の旨味が広がるとろりとした口当たりの酒。やや冷やして味噌や乾き物を肴にちびりと舐めるように飲みたい。月山の伏流水、羽黒の宮水を使っているために「羽黒山」と名付けた。
問:竹の露酒造 TEL.0235-62-2209

福島

吟醸 磐梯山

嘉永3年創業の酒蔵で、上流には那須連峰が近い自然豊かな場所に位置する。阿武隈川流域の伏流水を使用し、地元の人々に愛される会津を代表する名山、「会津磐梯山」をストレートに名付けた銘柄。なめらかな旨味が特徴で、常温や熱燗でだらだら飲みたくなる。
問:白河銘醸 TEL.0248-25-1121

福島

純米酒 燧ケ岳 雪室熟成

東北の名峰と呼ばれている、燧ケ岳が見える雪室で熟成させた純米酒。酒米は福島の夢の香を使用。ピュアな甘みとクリアな透明感があり、余韻はスッとキレていく。水の美味しさも生きている。美しく凛としたハリのある酸味も感じられ、やや冷やしていただきたい。
問:会津酒造 TEL.0241-32-0012

山内聖子

呑みますライター・唎き酒師。“夜ごはんは米の酒”をモットーに全国の酒蔵をめぐりながら執筆中。著書に『蔵を継ぐ』(双葉社)、日本酒にまつわる連載も多数。プロに向けた日本酒の講演活動も行なう。

長谷部雅一

アウトドアプロデューサー、ビーネイチャー取締役。登山からキャンプまで、あらゆる野外での楽しみ方を幅広い地域で提案し続ける。自然をテーマにした、教室、講演活動も積極的に行なう。

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PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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