音楽と本を連想させるおすすめ縦走5ルート
PEAKS 編集部
- 2020年10月21日
INDEX
文・写真◉村石太郎、勝俣 隆、飯坂 大 Text&Photo by Taro Muraishi,Ryu Katsumata,Dai Iizaka
写真◉杉村 航、後藤匡人 Photo by Wataru Sugimura,Msato Goto
イラスト◉タムラフキコ Illustration by Fukiko Tamura
出典◉PEAKS 2020年6月号 No.127
音楽と歩く山の道
山のなかを歩くとき、ふと思い浮かぶメロディってありませんか? 美しいサウンドを連想させる縦走路を音楽と併せて、音楽好きのふたりよりご紹介!
【村石太郎】北アルプス/2泊3日
後立山大縦走で聴くならコレ!
手に汗握る岩場が続く五竜岳から鹿島槍ヶ岳までの稜線では、少しだけアップテンポなソウルミュージックを中心にセレクトした。鹿島槍ヶ岳の山頂を通過すると徐々にアップダウンも少なくなってくるので、ライ(Rhye)やオルダス・ハーディングを頭のなかでめぐらせる。
もう少し長く休日を取ることができるなら、種池山荘からそのまま稜線をたどって針ノ木岳へと向かう。最終日には針ノ木雪渓をたどり、扇沢へと向かうルートもおすすめだ。
[MUSIC]Curtis Mayfield – Superfly Alabama Shakes – Boys & Girls/Rhye – Blood Moon Child – Little Ghost/Aldous Harding – Party
ACCESS
白馬八方尾根スキー場のリフトを乗り継いで、標高1,830mの八方池山荘からスタートする。扇沢で下山したら、バスに乗ってJR大糸線の信濃大町駅などへ向かおう。
ADVICE
五竜岳から鹿島槍ヶ岳までの行程は、北アルプスのなかでも有数の難所として知られる。このルートでは、万が一の事故に備えてヘルメットの装着を強くすすめたい。
アウトドアライター/村石太郎
登山用具について日本随一の知識を有するアウトドアライター。本誌では、長期連載「野外道具探訪記」を担当している。
勝俣 隆【北アルプス/1泊2日】
山を登る心地よさと不安、安堵を感じさせるサウンドとともに。
難易度の高い後立山連峰にあっても比較的ハードルが低いルート。白岳から眺める五竜岳のリッジラインはたまりません。五竜山荘のテント指定地は、斜面を刻んだサイトの高度感がすばらしいです。
下から吹き上げる強風で不安になるくらい。五竜岳とのピストンは空身で安全に行きましょう。そんな稜線から連想させるのが、ジャズピアニスト、ブラッド・メルドーの『ハイウェイ・ライダー』。秋の静けさと旅情を感じさせるアルバムです。
[MUSIC]Brad Mehldau – Highway Rider/The falcon will fly again/Now you must climb alone/Walking the peak
ACCESS
JR大糸線神城駅からテレキャビン山麓とおみ駅まで徒歩20分。ゴンドラに乗り換えてアルプスだいら駅まで約8分。車の場合、白馬五竜スキー場の無料駐車場を利用。
ADVICE
西遠見山からヤセ尾根を抜けると白岳近くで鎖場の難所あり。悪天時は西遠見山で引き返そう。五竜山荘~五竜岳はガレ場があり、ガスが出ているときは注意深く登ろう。
【勝俣 隆】南アルプス/2泊3日
伸びやかな稜線が愛おしくなる曲を想うルート。
初日はのんびり登りを終えたら、小屋まで森歩き。宿泊地の南御室小屋近く、辻山は北岳が眺められる絶好スポット。2日目は軽装で稜線を歩き、薬師岳、観音岳、地蔵岳を満喫します。西を見れば北岳、仙丈ヶ岳がすぐ近くに。
行きも帰りも稜線歩きが楽しめるピストンルート。選んだアルバムはパットメセニーグループの『スティル・ライフ・トーキング』。鳳凰三山の優しく穏やかな雰囲気にぴったり。3曲目の『ラスト・トレイン・ホーム』は伸びやかな稜線が愛おしくなります。
[MUSIC]Pat Metheny Group – Still Life(Talking)Last Train Home/Third Wind
ACCESS
JR中央線甲府駅から広河原行きのバスに乗り、夜叉神峠登山口で下車。車の場合は夜叉神峠登山口の駐車場を利用。
ADVICE
登山口から少し急な斜面を登って一時間。汗をかかないくらいゆっくり登ろう。2日目は荷を置いて軽やかに。青木鉱泉や御座石温泉に抜け、帰りに汗を流してもいい。
ハイカーズデポ・スタッフ/勝俣 隆
音楽を聴きながら本を読んですごすために山に行くこともある文系ULハイカー。森のハンモック読書もお気に入り。八ヶ岳南麓在住。
文学と歩く山の道
文学作品に由来する場所を訪れたり、本の世界に浸りに山を歩くのもいいだろう。文学と歩きたくなる登山ルート2本を、リコメンダーよりご紹介。
【飯坂 大】北アルプス/2泊3日
『黒部の山賊』の時代に、想いを馳せる旅。
北アルプスの最奥に位置する、三俣山荘を目指す。三俣蓮華岳と鷲羽岳の鞍部に立つこの小屋は、『黒部の山賊』の著者である伊藤正一さんが開拓した。山賊やマタギたちが行き来していた時代から、厳しい冬を何度も乗り越えて受け継がれてきた場所。
テント泊の登山者にも開かれた山小屋で、夜には、写真家でもあった正一さんが撮られた黒部源流の記録がスライドショーで鑑賞できる。
『黒部の山賊』伊藤正一著
ACCESS
上高地の西に位置する新穂高温泉は、駐車場も広く車でのアクセスが可能。松本からバスで2時間40分。新宿からの高速バスも出ている。下山後の温泉には困らない。
ADVICE
できるだけ早朝に出発したい。1日目で三俣を目指すのは健脚の方向け。順調にたどり着けば、2日目の雲丿平へはテントを置いて身軽に行けるが、無理はせずに。
【飯坂 大】北アルプス/1泊2日
瞑想の丘で『街と山のあいだ』を読みにいく。
日々を振り返ったり、ほかの山々を眺めてのんびりとしたい。そう感じる山行には、若菜さんのエッセイ『街と山のあいだ』を持っていきたくなる。北アルプスのなかでも穏やかな山容の蝶ヶ岳の稜線に出て瞑想の丘へと向かう。
山頂に行くのを忘れて本を開く。すぐ目の前に見渡せる穂高連峰をときどき思いついたように眺め、目を閉じる。ここはだれかの山の物語といまが交差する展望台。夜がはじまると朝歩き出した街の灯りが明るく映った。
『街と山のあいだ』若菜晃子著
ACCESS
登山口には駐車スペースが70台ほどでトイレもある。日帰り登山者もちらほら。連休や土日は混雑するので注意が必要。JR安曇野駅からタクシーも手配できる。
ADVICE
北アルプスの入門コースである蝶ヶ岳への登りは水場もあり歩きやすい。常念岳へ向かう稜線は展望が広がる。常念岳から三股への下りは急坂が続くため難易度は高め。
フォトグラファー/飯坂 大
国内外を多く歩き、最近ではバリの山を撮影。ネパールを横断する「グレートヒマラヤトレイル」を踏査するプロジェクトを推進中。
※新型コロナウイルスの影響により、最新情報に関しては山小屋・観光協会等、各所にお問い合わせください。
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文・写真◉村石太郎、勝俣 隆、飯坂 大 Text&Photo by Taro Muraishi,Ryu Katsumata,Dai Iizaka
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。