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ポーラテックパワーエア×フーディニ|マイクロファイバーの削減に貢献する 注目の保温性素材がアップデート

マイクロファイバーによる海洋汚染に対処すべく、ポーラテック社が新たに開発したのが「ポーラテックパワーエア」。この秋冬で2シーズン目を迎えたが、すでに改良を加えられた第二世代が登場している。持続可能な製品づくりを目指すフーディニの新作「モノエアフーディ」を軸に、この新素材にフォーカスする。

フリースから抜け落ちるマイクロファイバー問題

マイクロプラスチックファイバーによる海洋汚染の問題は本当に頭が痛い。私たち登山やアウトドア好きの人間にとって深刻なのは、ナイロンやポリエステルといった化繊ウエアを手放すことはもはや不可能であること。とはいえ、洗濯するたびにミクロ単位のプラスチックファイバーは確実に抜け落ち、それが下水処理施設を通り抜けて海に注がれ、海洋生物の体内に蓄積されていく。

なかでもフリースのような起毛素材からの抜け落ちがもっとも多いという。この問題に真正面から対処すべく、ポーラテック社が新たに開発した保温素材が「パワーエア」である。再生ポリエステルをメインに使いながら、従来の高品質なフリースと比べてマイクロファイバーの抜け落ちを最大80%までに抑えることができるという。

この新素材の開発に際し、ポーラテック社がパートナーに選んだのがスウェーデンのアウトドアブランド、フーディニだった。両社は長くパートナーシップを築いており、大ヒットアイテムである「パワーフーディ」をはじめ、フーディニにはポーラテックのフリース素材を使った製品も数多い。さらにフーディニは環境への負荷を軽減し、持続可能な製品デザインを目指すブランドとしても知られている。

すでにすべての製品がブルーサイン認証(環境、労働者、消費者にとって安全な化学製品の認証)を受け、リサイクル素材の採用や、リサイクル可能な製品づくりに力を入れている。そんな両社が、マイクロファイバー問題にタッグを組んで向き合ったというのは当然の流れだろう。

そうして大人気のフリースに代わる素材「パワーエア」を生み出した。そのあたりの事情をフルマークス社でフーディニを担当する舘下智(たちしたさとる)さんに聞いた。

フーディニのブランドマネージャー、舘下智さん。自身、トレイルランニングやバックカント リースキーのコアなアスリート。年に数回はスウェーデンのフーディニ本社を往復している

「やはり一番は環境問題でした。フーディニとしてもマイクロファイバー問題に真正面から取り組む必要がありました。そうして完成したこのパワーエアは、リサイクルポリエステルをメイン素材にし、従来のフリース製品に比べるとマイクロファイバーの流出が最大80%に抑えられています。もちろんこれは数あるフリース素材のなかでは流出が少ないといわれているポーラテック製高品質フリースでの話です」

いわゆるフリース素材とは、ポリエステルニットを起毛させたもので、表面を滑らかにしてレイヤリングしやすくした片面起毛と、ふわふわと暖かそうな風合いが人気の両面起毛がある。いずれも綿毛のような起毛にデッドエアを溜め込んで保温する素材である。

ところが、この「起毛」が洗濯によって抜け落ちることがわかり、これがマイクロファイバー問題最大の原因だった。そこで、起毛に代わる方法として、生地の裏面にグリッド状に小さなカプセルを並べ、そのなかにコイル状のポリエステル糸を入れてデッドエアスペースをつくった。一見すると化繊中綿素材のように見えるものだったが、これは表地と裏地で挟み込んでつくられたキルトではなく、1本のポリエステル糸を編み立てた3D構造だった。

「そうなんです。だから、あくまでもフリースという位置づけになっています。この素材が最初に発表されたのが2018年の12月。製品化はその翌年、つまり昨年春夏シーズンの『パワーエアフーディ』からでした」と舘下さん。

劇的に小さくなった肌面の突起。規則正しく並んだこの突起内カプセルにデッドエアを溜め込む。デッドエアごと編み込むという発想で「パワーエア」と名付けられた

実際、昨春の新登場以前から、舘下さん自身、昨年はこの新素材パワーエアを使ったサンプルウエアを日常使いでよく着用したという。

「昨年は春から冬まで、かなりの頻度で着ていたのですが、最初に感じられるのは保温力です。ハイロフトフリースのようなロフト感はないのに、同じくらいか、それ以上に暖かい。ロフトのあるフリースのように、袖を通した瞬間からふわっとした暖かさを感じるのではなく、徐々に暖かくなってくるイメージです。

ただ、ネックだったのは見た目と重さ。小さなキルトが並んでいるようなルックスは好みがはっきりと分かれましたね。重さについては、いったん着てしまえばまったく気にならないのですが、手に持ったときにどうしてもフリースに比べて重さを感じてしまう。そこに抵抗を覚える人がいたのは事実。今年はそこが一新されています」

より軽量に仕上がった第二世代の「パワーエア」

マイクロファイバー問題に対処する新素材「パワーエア」は、2年目を迎えた今季、素材自体が大幅にアップデートされている。

まずは、肌面にグリッド状に並んだ小さなカプセルの一つひとつが格段に小型化され、特徴的だった見た目のカプセル感、キルト感のイメージはない。また表面の凹凸もすっかり解消された結果、見た目には従来の片面起毛のフリースのようである。もちろんレイヤリングもよりスムーズだ。さらには、やや問題だった重量も大幅に削減されている。

「今年の新製品は素材が大幅にアップデートされたこともあって、名称も『モノエアフーディ』として新登場しています。昨年のモデルに比べると重量は約25%軽量化されています。実際、手に持ったときのズシリとした重さ感はすっかり解消されています。そしてこの新製品は、今年1月に発表されたのですが、イスポアワードの金賞を受賞しています」

実際にこのモノエアフーディを着用した福島格(いたる)さんに話を聞いた。白馬のガイドサービス「マウカアウトドア」の代表を務める福島さんは、実際のフィールドから日常生活にまで、長くフーディニの各製品を使い込んでいる。また、フリースの着用期間が長く、真夏以外の3シーズンは家でもフィールドでも、ほぼ毎日のように使っているという。

長年フーディニを愛用しているガイドの福島格さん。白馬のアウトドアガイドサービス「マウカアウトドア」代表、JMGA認定登山ガイドステージⅡ、スキーガイドステージⅠ

「『モノエアフーディ』を受け取ったときの第一印象は、フリースなのにわりと薄手な感じがしました。フリースって片面起毛のモデルでも、それなりのロフト感があるじゃないですか。それに比べると薄い印象。この薄さで大丈夫なのかなと思いました。ところが、実際にフィールドで着てみると、寒くはない。

意外だったのは、風に強かったことです。もちろん、ハードシェルのような防風性ではないのですが、フリースのような風通し感がない。目が詰まっている感じの生地だからか、わりと風が強いときも風を止めてくれるのかもしれませんね。風が通らないぶん、暖かい。生地が薄いという第一印象からしてみたら、ちょっと感動したレベルです。けっこういいじゃんって。これ1枚あればけっこう使えるなと」

「いままでのフリースよりは薄手なのに、同じくらいの保温力があり、強風下でも風を止めてくれる」とは、福島さんによるモノエアフーディの第一印象

この「モノエアフーディ」は、「パワーフーディ」と「アウトライドフーディ」というフーディニの2大人気フリースのデザインが踏襲されている。いずれも、シンプルななかにも洗練されたパターンニングによって、テクニカルウエアながらもストリートシーンでも違和感のないカラーとルックスが人気の秘訣だった。

福島さんは言う。「フーディニの製品はほとんどがそうなんですが、細部の造りがいいんです。モノエアフーディもポケットがいい感じで付いていますね。ポケットに手を入れたり、モノを出し入れするときも高すぎず、低すぎず、しっくり来る位置関係なんです。あまり表に出ない地味な部分かもしれませんが、自然な感覚で使えるというのは大事なことで、僕はそのあたりも気に入っていますし、長く使うほどに愛着を覚えます」

目に見えないし、ピンと来ないかもしれないが

これから秋のシーズンが深まるにつれ、ますますフリースの出番が増えてくるはずだ。その際、やはり気になるのはマイクロファイバーの流出。フィールドの最前線で活動するガイドの福島さんにとっても、当然ながら目をそらすことのできない問題だという。

「洗濯するごとにウエアからマイクロプラスチックが流れ出ているというのは、目に見えないし、なかなかピンとこないですよね。でも、いまの世の中の流れのなかで、環境のことを意識して行動するのは、もう当たり前の習慣なわけです。ペットボトルを買うのではなくマイボトルを用意し、ゴミはなるべく出さないように。それはフィールドではもちろん、日常生活でもそうですよね。ならば、着るものに対しても普段から同じような考えでありたいと思います」

白馬でガイドを続ける福島さん。グリーンシーズンはトレッキングに青木湖でのSUPツアーや川下り、冬はスノーボードレッスンやバックカントリースノーボードと守備範囲は広い。真夏以外の秋から初夏までフリースは手放せないという

福島さんにとって、環境への取り組みもフーディニ製品を愛用している大きな理由だという。「フィールドで着るウエアは、着やすさ、素材の機能性、環境への配慮と、3つすべてにバランスが取れているほうがいい。すごく着やすいけど環境にめちゃくちゃ悪いものとか、逆に環境によくても素材の機能性が低いものは着づらいんですよ。そうしたバランスが取れているアイテムを使いたいし、愛着が湧きますね」

ポーラテックパワーエアは、見た目も着用感も従来のフリース素材というイメージからは遠い。しかし、フィールドから日常着まで幅広く使える保温素材という、フリースに求められる機能はほぼ完璧に満たされている。おそらく、将来的には起毛フリースにとって代わる素材になるのではないだろうか。ポーラテック社の技術革新力を考えれば、それはごく近い未来なのかもしれない。

ポーラテックパワーエア

フリースなどの化学繊維から抜け落ちるマイクロファイバーによる深刻な海洋汚染問題に対処すべく、ポーラテック社が新たに開発した保温性素材。肌面に並んだカプセルにコイル状ポリエステル糸を封入してデッドエアスペースを生み出している。この特殊な立体構造が1本のフィラメント糸で編まれている点がポイント。73%再生ポリエステル製で、マイクロファイバーの抜け落ちを最大80%まで抑えられている

フーディニ/ モノエアフーディ

ポーラテックパワーエアを素材に使った新作フーディ。人気の定番フーディニ/パワーフーディのデザインを踏襲し、山でのミドルレイヤーから日常使いまで、肌寒い季節に手放せない一着

  • 価格:¥26,000
  • サイズ:XS ~ XXL
  • カラー:ウィローグリーン、 ストームブルー、サンドストーム、 ブルーイリュージョン、トゥルーブラック
  • 重量:580g(L)
長めのカフとサムホールは、フーディニのミドルレイヤーの定番的仕様。手の甲をすっぽりと保温してくれる。
見かけによらず、非常にストレッチ性は高い

掲載アイテムを中心にポーラテック素材使用のウエアを特別展示!

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さかいやスポーツウエア館

  • 東京都千代田区神保町2-48
  • 営業時間:11:00~20:00 (元旦を除き年中無休)
  • TEL.03-3626-0432

問:エスシーティージャパン(素材) TEL.03-5436-6380 www.challenge-21c.co.jp
問:フルマークス カスタマーセンター(商品) TEL.0120-724-764 www.full-marks.com

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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